★17.《ネタバレ》 前情報がない状態で見たのですが、白黒映画で、かつ、フィルムの痛みが激しいことから、1930~40 年代の作品と思いこんで見ていました。後で調べたところ、1989年と比較的新しい作品でした。作者(1935年生まれ)の幼少時の風景や空気を再現するために、その時代に入り込んで撮影したかのように仕立てる。トリッキーとも取れますが、それを凌駕する、映像の凄みを感じました。主人公の少年が住むのは、炭坑と収容所の村。地面はぬかるんで、泥の上に人が集まり暮らしていて、舗装された道はなく、自動車もなく、辛うじて他の町に通じる鉄道があるだけです。住人は、汚れた長屋に、寄り集まって暮らしており、人は多く、叫び声や喧噪はあれど、活気がまるでない。この「不毛」感は、凄いです。主人公も通っている学校は意外と立派でした。公権力の出先として力を入れた結果でしょうか。村の外れでは、抑留された日本兵が強制労働をさせられていて、よさこい節や、炭坑節が聞こえてきます。おそらく作者の望郷には欠かせないものなのでしょう。よどんだ世界の中で、どこか優雅で達観した響きを感じました。そんな中、主人公の少年は、鬱屈感からか、学校のトイレの汚物槽にイースト菌を入れて溢れさせたり、列車を脱線させたりの問題を起こします。その都度、一緒の長屋に住む少女に助けられます。この少女は、非常に賢く、したたかに生活に順応していて、なかなかの人物だなあと感心してしまいました。この作品の中では、唯一の光と言える存在です。時代の停滞した陰鬱な空気を再現して、フィルムに封じ込めたことは評価できるのですが、娯楽としてみると、正直、それほど面白くはないです。娯楽性の高いロシア映画も見てみたくなりました。 【camuson】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-12-04 20:16:00) ★《新規》★ |
16.《ネタバレ》 パワフルに振り切った「大人は判ってくれない」。社会の不条理や濃厚な死の香りが漂う画面に釘付けになりました。ラストシーンの「勝手にしやがれ」や「気狂いピエロ」レベルのメタ演出は不思議と印象に残ります。 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 6点(2017-01-17 04:20:46) |
15.《ネタバレ》 映画の終盤近く、強盗団から逃れた少年と少女が束の間の休息をとっている。 そのままクレーンのカメラが昇っていくと、 晴天なのか曇天なのか白い空に黒々とした木の枝が映し出される。 この後、二人は機関車に乗って晴れて故郷へと向かうのだが、 その長閑で爽快なはずの空と木の図象は、白地に黒い亀裂が入っていくような、 何やら不穏で禍々しいものとしても迫ってくる。 果たしてその予兆通り、乾いた悲劇が二人を待ち受けるのだが、 それが暗示を意図したショットであるのかどうかは定かでない。 ともあれ、こうしたモノクロの優位を活かした画面造形の妙は全編に見られる。 雪や吐息・湯気・子豚の白、機関車や泥土の黒。 手持ちとロケーションを主体としながら、計算されたかのように それら白と黒が絶妙に配置されており、 さらにその中に様々なアクションと音楽性が組み込まれる様は何度みても驚異だ。 【ユーカラ】さん [DVD(字幕)] 9点(2015-06-23 00:54:17) |
14.《ネタバレ》 ソ連時代に生きるイタズラ好きの少年と賢明な立ち振る舞いを見せる少女の物語。すごい盛り上がりがあるという感じではなく、日常の中に凄まじさを描き出すような構成になっている。電車の脱線も、強制収容所の女も淡々と描き出される。 ■問題のラスト。監督の指示の音声がそのまま入るというなかなかな「脱構築」ぶり。しかしラストは一体何なのだろうか。発狂した女、唯一少年の視点がどこにも存在しない、すさまじく非現実的で浮いたシーン。分からない。ラストはとにかくどんよりと歯切れ悪く終わった。全体を振り返ってもやはりよくわからない作品。 【θ】さん [映画館(字幕)] 5点(2013-01-29 22:55:36) |
13.《ネタバレ》 ソ連(ロシア)映画らしいというか、ソ連にしか作ることのできない、細やかな人間描写の優れた人間ドラマ。 ただし、子供が主役なので、個人的には少し乗り切れず。 少女の死という幕切れは、あまりに哀しく衝撃的。 思わず「甦れ!」と叫びたくなった。 主人公の男のコは、とにかく悪がき。 ちょこまか動いて仕方ない。 こういう悪がきこそ、「動くな、死ね!」という感じだ。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2011-05-07 17:36:46) |
12.地にはぬかるみ、空には曇天。そのなかの上下から圧迫されているような世界、あるいは廊下の左右から圧迫されている気分。ソ連映画でよく味わう気分、これはロシア人の心象に深く刻まれている気分なのか、単にあちらの気候のリアリズム的反映なのか。近くに収容所があり、やがて主人公も、拘束から何度も逃れていく。よっぱらいの歌・よさこい節・スターリン賛歌・ダンスパーティと歌が多い。この天候と歌とが互いを嘲笑しているようで、そこから滲み出した狂気もあちこちに潜んでいる。みんなここ以外の場所へ行きたい。生活する楽しみが何一つ見いだせない町。しかし外には悪の世界がある。この少年と少女、弟的なものと姉的なものに、男女の原型が感じられた。後半、ガリーヤが「姉」のなかから「女」の気配をのぞかせる。ストーリーとして・あるいは道徳的教訓として要約される前に、このようにしてあった少年と少女の存在感のほうがグーッときて、それに圧倒される。こういう世界がたしかに地球上のある時期に存在した、って。長回し・手持ちカメラのドキュメントタッチの力。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-06-25 11:56:16) |
11.《ネタバレ》 なんだか凄まじいタイトルですが、内容は案外穏やか。どんよりした社会の中でのいたずら小僧のほのぼの成長記…などでは到底ありません。あまりにも唐突なラストに何を思えば良いのかわかりませんでした。 【すべから】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2010-01-10 14:41:04) |
10.《ネタバレ》 第2次世界大戦直後のスターリン独裁政権下、日本にも近い極東シベリアの町の出来事をまるでロベルト・ロッセリーニのネオリアリズモ映画を思い起こさせるような手法で描いていて、何というか、1989年の映画ではありますが、当時の映像そのものを見ているような錯覚に陥りましたね(良く言えばリアル、悪く言えば古臭いです)。ただ、音の使い方については非常に巧さを感じました。 日本人捕虜の姿や、よさこい節や炭鉱節も出てくるのも非常に興味深かったです。 【TM】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2009-05-28 16:29:19) |
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9.《ネタバレ》 凄い作品…何年に作られたのかなと思ったら、1989年?ビックリしました。製作年を全く感じない、モノクロで語られるストーリーの鮮烈さ。収容所と陰鬱な天気と未整備の泥道、貧しさに囲まれた極東ロシアに生きる、一人の少年。戦後・スターリン政権下のため、より一層寒々しい空の下、大人も子供も自分のことで精一杯。そんなまるで見えない状況の中での、唯一の救いのような少女も奪われてしまう。そして強烈なラストシーン。徹底したリアリズムの描き方に、“ドイツ零年”を思い出しつつ。しかし生き残ってしまう分、その後果たして少年はどうするのだろう?と考えてしまうと、本作の方が少し残酷なようにも感じました。しかし日本捕虜の歌う歌や少年の歌う歌が、妙にもの悲しくて印象的。非常に暗いけど、何かが胸に刺さって癒えない作品でした。 【泳ぐたい焼き】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2009-01-18 15:55:45) |
8.うわー凄い。タイトルもそうだけど精神的エグさも内包した内容にも見事にやられました。まるでドキュメンタリーを見ているかのように市井の人々の生活臭がぷんぷんとする89年作品とは思えないモノクロの映像美。人々の演技も完璧。主役の少年は更生していくのかなという期待をどんどん裏切ってく。幼馴染の少女は愛くるしい。少年を更正させようと努力するのに逆にどんどんアウトローな方向に巻き込まれてく。内容は多分にスターリン主義批判(場合によっては共産主義体制そのものへの批判)までいってしまっている。ペレストロイカ以降じゃなければまず撮影できなかった映画だろう。 【こまごま】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2007-03-26 19:56:52) |
7.主人公のワレルカと魅力的なガリーヤの無垢な姿に感動。 戦争が題材と言うこともあり、ショッキングなシーンの連続でした。 ドキュメンタリーかと思わせるあっという間の展開が印象的です。 重たいけれど目が離せない傑作。 【たんぽぽ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2007-02-10 21:54:54) |
6.《ネタバレ》 たしかにギャーギャーとまくしたてている。でもアレクセイ・ゲルマンの『フルスタリョフ、車を!』(こっちはさらに喧しい)でも思いましたがこの喧騒こそが当時の旧ソ連の社会情勢を表しているようでもあります。この喧騒に自然の音が重なり、音楽が重なり、さらに喧騒が重なり、強烈な印象を伴いながら当時の「生活」と「社会」を露にしてゆく。子供も大人も本気でたたきまくるわ、好き勝手にしゃべるわで、まるでドキュメンタリーさながらのリアル感で覆われており、一方でその中で生まれる少年と少女の幼い恋愛模様や劇的な逃走劇といういわゆる劇映画らしい劇映画が展開される。カメラがどこを映そうと、一見リアル、それでいて美しい画面を構築している。すさんだ社会になんとか適応する強い人間たちが映され、それでも限界があるという悲劇が飛び込んでくる。参りました。完璧にやられました。 【R&A】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2006-09-21 11:08:50) (良:1票) |
5.1989年ソ連製作の映画に対して見当違いなことを言うようだが、これは紛れもなくネオ・レアリスモの傑作。いや、まぁそんな必死になって説明する気もないし別に何でもいいんやけどさ。題材としては“大人は判ってくれない”を想起させる。“他人は構ってくれない”のほうがしっくり来るけど。ワレルカ少年は下水にイースト菌入れたり、電車脱線させたりするけど、社会に反抗したかったわけでもないし、迷惑かけたかったわけでもない。ただ無邪気に、この陰鬱とした気持ちを、鬱憤を晴らしたかっただけ。お母さんのことも好きやし、愛されていることも分かっている。戦争も起こっている、銃殺刑も当たり前のように簡単に行われる社会で自分のした事がそんなにも咎められることとは思わなかっただけ。確固とした流れに沿わず、展開の組み合わせでここまで感じさせる手腕は大したもの。特にワレルカとガリーヤの“幼いけれど真実の愛”の芽生え方、描き方はただただ素晴らしい。人々がぎゃーぎゃーまくし立てるのは卑俗で好きになれない演出なのでそこだけマイナス。 【stroheim】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-04-16 01:05:33) (良:1票) |
4.物語の時代背景がよく分からないのでちょっと理解し難いところもあったけど、このまるで歯車のネジが吹っ飛んだような異様な雰囲気には終始目が釘付けでした。1989年に撮られたというにも関わらず、まるでこの映画自体が何十年か前にタイムスリップしてしまったような錆び付いた映像にも圧巻。更に監督が八年もの間、無実の罪で投獄されていたという凄まじい経歴の持ち主であることにも妙に納得。ラストシーンから観ても分かるように完全に狂っている映画です。正直「狂っている」の一言で片付けるには勿体無い作品だけど、尋常でないことだけは確かです。恐れ多くも6点。 【かんたーた】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2005-08-22 18:47:01) (良:1票) |
3.スターリン政権時代の一人の少年の青春が描かれているのだが、あまりにも救いがない。『大人は判ってくれない』にも似ているけれど、さらに重く、ハードな物語。画面から受ける印象は常に暗く、厚い雲が張った空の下の凍えるような寒さが伝わってくる。少年は一人を除いて誰からも受け入れてもらえず、自分の居場所を見つけることができない。胸を打つのは、それでも彼が健気に現実と戦い、生きていこうとするところだ。神経質な母親は彼を泥棒扱いして殴ったのに、「あんたのママはあんたを愛してるわ」と友達に言われ、「わかってるよ」と答える。スケート靴を盗まれても、取り返してはしゃぎ、笑い転げる。強盗殺人の片棒を担いで顔に返り血を浴びた横顔を見せたときは、さすがにもうだめかと思った。それでも、絶対にへこたれない。その点『大人は…』の主人公よりもずっと強く、頼もしい少年に見えた。ところが、そう思えたのも束の間、唯一の理解者であった少女が殺される。少年はいちおう生きていることが示唆されるが、もう画面に映されることもない。辛い出来事にも負けずに明るく生きようとしていた人間から、最後の希望まで奪いとる現実。たぶん彼は肉体的には生きていても、もうそれまでの彼ではいられないだろう。彼が子供でいられた時代は、銃声で終わった。一人の少年の心が殺されるまでを描いた、悲痛な作品。 また、主人公が強制収容所送りから逃がれようとする女を助けようともせずに見つめている場面も印象的だった。人が人として生きていけなかった時代の、暗鬱な空気。重く哀しく、恐ろしい映画だった。 【no one】さん 8点(2005-02-06 02:37:05) (良:1票) |
2.社会情勢があまりにも悲惨。こんなところで育った子供はどんなになるんのか無用な心配をしてしまった。なんでよさこいがソ連に伝わるのかも謎。 【ぷりんぐるしゅ】さん 3点(2003-12-05 20:47:24) |
1.《ネタバレ》 何と言ったらいいのか…とにかく、とてもひと言ではコメントしようのない映画です。どうやら第2次大戦後間もない、シベリアに近いド田舎の小さな町に生きる悪ガキと、そのガールフレンドが主人公。ふたりの生きる日常が、リアルに、時にはシュールに、脈絡もなく描かれる。特に男の子の、鬱屈した心情や突拍子もない悪戯(便所をあふれさせたり、果ては機関車を脱線させてしまう!)は、実に生々しく、見ているぼくたちもいつしか彼と一緒になって「日常という名の冒険」を続けているよう(どこかの評論家が「まるでトリュフォー監督の『大人は判ってくれない』のアントワーヌ・ドワメルのようだ」と、言ってたっけ。ほんと、そんな感じです)。劇中、おそらくシベリア抑留中の日本兵が歌う”民謡”が突然聴こえてきたり、とにかくハッとしたり、おおっと唸らされたりする瞬間の連続なんです。その最たるものが、ラストシーンでしょう。まんまと大人たちを出し抜いてカネをせしめたふたりが、残忍な仕打ちを受ける。そしてその変わり果てた姿に気がふれた母親は、全裸になってほうきに跨がり、往来を駆け巡り続ける…。このあまりに残酷で、痛ましい結末は、正直トラウマになります。もう、記憶に焼き付いて消えてくれない。しかし、それ以上に、あらゆるシーンが驚くほどの詩情、「苛酷な詩(=死)の気配」に満ち満ちている。おそろしく口当たりの悪い作品であることは確かだけど、覚悟(?)してでも見る価値があると断言しておきましょう。 【やましんの巻】さん 9点(2003-11-14 13:28:40) (良:1票) |