13.《ネタバレ》 こういった映画を鑑賞する際には、主人公の子供側ではなく、保護者である大人側に感情移入する事が多くなったなぁ……などと、しみじみ実感。
とにかくもう、マシューとマリラの老兄妹が素晴らしかったですね。
主人公のアンが、子守の仕事をサボって読書に熱中したり、自分をやたらと「悲劇のヒロイン」アピールしたりする姿に、少々ゲンナリしていたところで、この二人が登場し、大いに和ませてもらったという形。
作中の大人達が、次々にアンを叱ったり、厳しく接したりする中で、マシューおじさんだけが彼女を気に入り、優しく接してくれるのだから、アンだけでなく観客の自分にとっても、彼は本当に癒しの存在という感じなのです。
妹のマリラおばさんのキャラクター性も抜群で「なるほど。ツンデレとは、こういう女性を指すのか」と、思わず感心してしまったくらい。
当初はアンを嫌っていたはずの彼女が、段々と愛情を抱くようになっていく姿が、本当に丁寧に描かれているのですよね。
それだけに、駅でアンの旅立ちを見送る二人の姿と
「あの時(孤児院には男の子を頼んだのに)女の子に間違えてくれて良かったな」
「あれは神の思し召しですよ。ウチには、あの子が必要だった」
という台詞のやり取りには、じんわりと感動。
気が付けば、マシュー以上にマリラの方がアンを可愛がっていて、そんな妹にマシューが少し呆れているような様子も、実にチャーミグでした。
終盤、アンが帰郷した際に、農作業中のマシューが心臓の発作で倒れてしまうのですが、その時の会話も、素晴らしいの一言。
「私が男の子だったら、畑の仕事を手伝えたのに」
「そう思った事は無いよ」「女の子で良かった」「自慢の娘だ」
と、幸せそうに語りながら息を引き取る姿には、思わず落涙。
父娘の絆に、大いに心を揺さ振られました。
そんな具合に、自分としてはマシュー視点の映画として、娘を見守るような気持ちで観賞した本作。
でも、全体の主人公としては、間違いなくアンである訳で、その少女漫画的なストーリー展開には、多少の違和感を覚えたりもしましたね。
ギルバートとの恋愛模様に関しては、特にそれが顕著であり、彼がやたらと都合良くアンの前に現れる事なんて、もしかしてギャグでやっているのだろうかと疑ってしまったくらいです。
ボートが壊れて溺れそうになったアンを助ける姿や、ラストシーンで馬に乗って現れる姿なんて、典型的な「王子様」キャラといった感じ。
この辺りは、やはり女性向けの作品なのかな、と思わされました。
とはいえ、そんな具合に「女性向け」の内容が苦手であるはずの自分さえ、これだけ感動させられたのだから、凄い映画である事は、疑う余地が無いかと。
また何年か経った後に、今度は懐かしさと共に観賞して、穏やかな世界に再び浸ってみたくなる……
そんな一品でありました。