38.単純な面白さで言うと山下監督のデビュー作『どんてん生活』のほうが面白かったんですが、こちらの作品のほうがさらに共感できるものになってます。知ってるだけで友達まではいかない関係の二人が距離を置いたまま、ぎこちない空気の中でそれでもぎこちなくないようなフリをしながら、でもやっぱりぎこちない関係をうまく見せていて、その行動や言葉や表情や静かな間にいちいち共感する。山下映画の間は独特であってもけして不自然ではなく日常の間なのです。で、一人の謎めいた女が加わることで二人の間にあった空気が飛躍的に動き出す。ここでもドラマチックな演出はせず微妙な空気の変化を映像で見せる。笑いのとりかたも自然でいい。最後の宿は一歩間違えばホラーです。箱根広記さんのレビューにある布団の中での会話は誰もが笑うことを保証します。それほどに面白いんだけど、けして作られた笑いじゃなくてあくまで日常で経験する笑いです。それを映画でやっちゃうから凄いんです、この監督は。 【R&A】さん 7点(2005-03-24 14:58:31) (良:2票) |
37.ジャガーさんのいない『ピュ~と吹く!ジャガー』。もしくはピヨ彦とハマーさんだけの『ピューと吹く!ジャガー』。そんな感じ。ツボだったのは「うどん屋」と「貧乏民宿」でのシーン。あの2つは反則。 【魚】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-11-04 16:48:50) (笑:1票) |
36.話の内容が最初から解りやすくて、おもしろかったです。「間」については後半飽きてきましたが全体的には良作だと思いました。ラスト間際、布団内での二人の会話には一緒になって笑ってしまいました。「くりいむレモン」再見する価値ありそうです。 |
35.山下監督という人は、アキ・カウリスマキやジム・ジャームッシュと比べて語られる事が多いようですが、僕からすると、例えば本格的なインドカレーやタイのカレーも美味しいけど、やっぱしハ○スバーモンドカレーとかが口に合うよねえってな感じで、あと歳が近い事もあるのか、結構親しみを感じます。【シネフィルと愉快な仲間たち】さんのおっしゃるように、相手が年上か年下か気にする風潮とか(学校を卒業してからも「同い年だけど学年は一個上」とか言いますもんね)、脱いだかどうかの基準は乳首が見えてるかどうか、とか、いわゆる外国人が日本に求めるのとは違う日本の文化というか風土が描かれてて面白い(個人的に、こっそり女性下着のカタログを見てる男の子がツボ)。ただ残念なのが話の構成というか尾野真千子の使い方。中盤せっかく彼女が出てきて画面が「絵的に」華やかになるのに(彼女が雪の上を歩くシーンは凄く素敵)、またどっかへ消えてしまって、話がどんどんショボくなってしまうのは、ちょっと盛り上がりに欠けるような・・・。勿論そういう「しょぼさ」とか「やるせなさ」が山下監督の持ち味ではあるのだろうけど、そろそろ違う一面も見せて(=魅せて)欲しいなあ 、と思います。 【ぐるぐる】さん 7点(2004-12-24 18:41:15) (良:1票) |
34.映画館でこんなに笑ったのは久しぶりというか、ないかもしれない。あと、鉛色の空が印象的。つげ義春から逸脱して青春映画に変えた監督さんは見事だと思う。さてところで、カウリスマキの映画ってとても面白いのだけど、フィンランド人が見たらもっと濃い密度で楽しむことができるのだと思う。と、このように国で映画を区切るのは映画のあり方からしてナンセンスな気がするが、それでも反対にこの日本映画である「リアリズムの宿」の笑いをフィンランドの人が日本人が笑うように笑うのは不可能な気がする。私たちは助詞助動詞を自然に使いこなす(自分はそんな自信はまったくないけど)ものだが、だからといって英語の前置詞は簡単にはマスターできないように、言語にはなかなか超えられない見えない壁がある。だからこそ映画という存在があるのだが。遠くの国で小津映画が賞賛されている現実がまさにそう。そしてこういった言語の壁を埋めるのは戸田奈津子のような人たちなわけだが、フィンランドの翻訳者はこの映画をどう翻訳するのだろう。ま、どうでもいいか。言いたかったのは、日本にもカウリスマキがいたということです【追記】カウリスマキはさすがに言い過ぎたか・・・ 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 7点(2004-12-10 18:07:10) (良:1票) |
33.なんともいえない“間”、いやいや笑いました。顔ぐらいは知っていた男2人がやむなく旅をすることになって、生み出される空気。そこに加わる女1人。その3人が、低温で微妙な関係を保ちながら、日常の延長のようなだらだらとした旅を続けます。長回しの会話で生み出される独特の間、長塚圭司と山本浩司の会話の間は、監督と2人の役者とが入念に築きあげた信頼関係から生まれる、即興的な部分もかなりあるような印象です。「異邦人」のタイミングにも笑いました。3人そのものがその宿では異邦人的なのですが、歌う山本浩司を異邦人でも見るかのように見つめる2人がまたおかしいですね。また彼らが泊まる宿が、風変わりな宿ばかり。笑わしてくれます。なんともけだるくアンニュイで、見る者を心地いいまどろみに引き込む、鳥取ロードムーヴィーです。 【彦馬】さん 8点(2004-07-05 22:29:06) (良:1票) |
32.この映画、好きか嫌いかと問われれば、おそらく好きと答えます。いや、相当好きかも。ただ「こんな映画金払ってまで観る価値ない」というご意見も、わからなくもありません。観る側に矛盾と葛藤を押し付ける、哲学的な作品だと思います。 【la_spagna】さん [DVD(邦画)] 8点(2024-05-10 23:53:23) |
31.つげ義春の「リアリズムの宿」とはなーんにも関係ない作品なんだろう、と思ってたら、最後にリアリズムの宿が登場します。ダメ押し、といった感じですね。すでにこの映画ならではの世界、というか空気を、堪能。アホらしく、マッタリとして、にも関わらず唐突さが意表を突いたりも。 主人公のひとり旅ではなく、冴えない男ふたりの旅を描いたことで、原作とは違った「映画らしさ」が出ています。 男女3人が、ボケーッとゲーム機の画面を眺めていて(類似のシーンは他にも登場するけど)、しかし実際はそこにゲーム機があるわけではなく、撮影のカメラが置かれているもんで、3人と我々が向かい合う形になる。カメラを通じて意味も無く登場人物と我々とが向かい合うこの時間帯、一体なんなんだ、と思いつつ、野郎2人の顔を見てもしょうがないので、ついつい視線が尾野真千子の方に向かってしまう。いかん、映画なんだから、やはり画面の一点ではなく、隅々まで視線をはしらせるべきだ、という思いとの葛藤。煩悩というべきか。 それがまたアホらしくて。 そういう煩悩を余所に、たとえ誰も見ていなくても、荒波は今日も海岸に押し寄せ、雄大な光景を人知れず繰り広げる。 【鱗歌】さん [インターネット(邦画)] 7点(2022-03-23 22:39:21) |
30.悪ふざけしたり、おちゃらけたところのないコメディでした。上質です。 【紫電】さん [DVD(邦画)] 9点(2021-10-11 16:35:07) |
29.こんなことを言うと、日本海側にお住まいの方に怒られてしまうかもしれませんが、「波が荒くて黒い海と、どんより曇り空」という漠然とした日本海のイメージは出ていたと思います。でもお金を払って観る価値があるとはとても思えません。そういえば、この頃って邦画が迷走していた時期だったんじゃないかな。 【マー君】さん [DVD(邦画)] 4点(2017-05-21 11:25:56) |
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28.《ネタバレ》 世界観がたまらなく好き。会話や編集の間がツボにズバズバハマったし、無言の力を思い知らされました。けだるい音楽もよし。二人の間の不協和音をぶち壊したリアリズムの宿、布団で交わした会話、ラストシーンの味わい。この映画を見終えた時の快感が未だに心に住み着いています。 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 9点(2016-02-11 03:07:01) |
27.《ネタバレ》 「微妙」な距離感の「微妙」な感じの二人が、「微妙」な町を旅し、「微妙」な宿に泊まり・・・という「微妙」尽くしの内容を山下敦弘監督のセンスと 尾野真千子の存在で「微妙」でない映画に昇華させています。 あの旅館の宿泊代はいったいいくらだったんでしょうか・・・・ 【TM】さん [地上波(邦画)] 8点(2015-07-11 10:23:45) |
26.ここまでクオリティの低い作品にこの評価はどうかと思うけど、面白かったので仕方ない。 序盤、2人だけの気まずさも良かったけど、尾野真千子が登場してからの不思議な空気感が面白かった。 微妙に華の無い尾野真千子の特性が上手く活かされてたと思う。 尾野真千子が退場して寂しくなっちゃうかと思ったら、そこから一気に開き直っちゃったね。 面白過ぎてお腹が痛くなるくらい笑わせてもらったけど、風呂の汚さが突き抜け過ぎてて逆に引いた。 あと、ラストのオチの手の振り方が良かったね。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 8点(2015-01-06 13:00:04) |
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24.同じ監督の天然コケッコーが傑作だったのでレンタルしたけど、つまらなかった。細部はリアルで笑えもするけど、全体を貫くものが何もない。だから後に何も残らない。失敗作だ。 【柚】さん [DVD(邦画)] 5点(2014-08-01 17:36:23) |
23.これがリアルかどうかはともかく、表情や間の使い方、エピソードがよかった。こんな旅したら忘れられないだろうな。 【noji】さん [地上波(邦画)] 6点(2014-05-05 23:53:02) |
22.ダルイ感じは悪くはないんだけど、設定にリアリズムがないかな。ちょっとあざといと言うか。オノマチは可愛くていいんだけど。 |
21.《ネタバレ》 予想を大きく上回るクオリティの高さに驚きました。映画やドラマの「作り物」的な要素を排除して、演出と役者の演技力で日常の中の可笑しさ・滑稽さを表現する山下監督、やっぱりすごいです!セリフやアクションではなく、沈黙とか、バツの悪さで笑わせるのってそう簡単ではないはず。それをさりげなくやってしまうセンスはさすがとしか言いようがありません。特に、あのタイミングでの「異邦人」、あれこそが「リアルな笑い」ですよね? 【ramo】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-08-18 19:44:15) |
20.はたしてこれはリアルなのだろうか、その間やぎこちなさ、その状況。リアルにもみえるし、すごく嘘っぽくもみえる。そのどっちとも取れる狭間の面白さというのもみつけられなくはないのですが・・・。リアルリアルリアルリアルリアリズムリアルリアル←この文字列、一語一語は意味を成すのに、うそ臭い意味のわからないものに見えます。そんでもって何だか気持ち悪いでしょ?これと同じ感想です。 |
19.冬風が吹きつける日本の寂れた裏通りを歩いていく冴えない男二人。 “顔見知り”程度の二人の絶妙な関係性が、妙な間と可笑しみを生んでいく。 そこには希望もなければ、絶望もない。“美しくないもの”をきっちり美しくなく描き出す辛辣さと、可笑しさ、それらに裏打ちされたリアリズム。 山下敦弘監督(「リンダ リンダ リンダ」)のこの映画をずうっと観たいと思っていたけれど、地元のレンタル店ではなかなか見つけることが出来ずにいた。 最近になって特に観たくなっていた最大の理由は、尾野真千子が出演しているからだった。 ふと訪れた自宅から遠いレンタル店でようやく今作のパッケージを見つけ、やっと鑑賞に至った。 つげ義春の原作らしく、創造以上に“つかみきれない”感覚は、エンドクレジットが映し出された瞬間に覚えた。 良い映画とも悪い映画とも大別できない浮遊感みたいなものを、観終わってしばらく感じていた。 その浮遊感こそ、この映画が描こうとしたことだと思う。 人の世は、楽しいものなのか、美しいものなのか、素晴らしいものなのか。 大概の場合、その答えは「ノー」と言わざる得ないけれど、それでもふいに訪れるわずかな“光”の“ようなもの”を求めて、ふらふら、ふわふわと多くの人間は生きている。 人も、物も、風景も尽くうらびれているこの映画は、その突き詰められた“うらびれ感”の中で、「それでももうちょっと生きてみるのも悪くない」ということを呟くように伝えてくる。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-01-16 22:42:37) |