1.第一話『ボニート』、第二話『カーニバル』は断片のみだが、
羊の群れや人々を小さく捉えた教会の鐘楼からの俯瞰ショットや
子牛と戯れる少年の表情が瑞々しい。
サンバに興じる群衆の熱狂が力強い。
そして主体となる第三話『4人のいかだ乗り』。
材木運びから、魚籠つくり、カンナ掛けと
、筏作りのプロセスが丹念なショット
の積み重ねによって描写される。
RKOの制作中止決定、予算不足によって白黒35mmフィルム撮りであり、
肝心な航海シーンもわずかだが、画像はシャープで鮮やかだ。
幾多の筏が水面を滑るように出帆するシーンも躍動感は満点、海は眩しく輝いている。
カメラに撮されるのは初めてだろう浜辺の女性たちの笑顔も初々しい。
結婚・事故・葬儀・船出のドラマが現地の人々によって演じられるのだが、
台詞は一切なく佇まいと表情と身振り、構図と陰影、若干の効果音と音楽によって
紡がれていく。
それらの映像による語りがことごとく素晴らしい。
とりわけ人々のクロースアップは、芝居を超えて味わい深い。
ウェルズが彼の地と人々とに如何に接し、密な関係作りをしたかの証左である。
ラストは撮影初期に撮られた『カーニバル』のカラー映像だ。
現地ロケ及びセット再現によって撮られたサンバの熱狂は、
色彩の鮮やかさと人々の陽気な笑顔が相乗し、ひたすら美しい。