12.《ネタバレ》 「あの血に汚れたシャツを見ろ。いいか、前の兄が流したあの赤い血が乾くとき、弟であるお前が兄の名誉を守るために復讐を果たすのだ」――。1910年、古くからの因習と旧態依然とした家父長制に囚われたブラジルのとある田舎町。貧しいサトウキビ農家の次男トーニォは、隣家の男に兄を殺されるという哀しい過去を抱えながらも必死に生きていた。何よりも名誉と外聞を重んじる彼の父親は、トーニォに殺した張本人である男に復讐を果たすように命じる。言われるがまま、男を殺すトーニォ。だが、殺された男の家族もまた彼に復讐を誓うのだった。幼い弟も抱え、生活のために同じところをぐるぐる廻り続けるような日々と、そんなふって湧いたような暴力の連鎖に心底嫌気が差していたトーニォは、ある日、全国を転々と移動興行しながら悠々自適の生活を送る美しい女芸人クララと出逢う。閉塞感の最果てを生きるような自分の人生から、何もかも捨てて逃げ出したい。トーニォは、いつしか彼女に惹かれてゆき、自分も一緒に旅立ちたいと願うようになるのだが……。監督は、南米映画界の俊英ウォルター・サレス。その後、若き日のチェ・ゲバラの南米各国を巡るバイク旅を乾いた映像と繊細な音楽とで瑞々しく描いた青春ロード・ムービーの佳品「モーターサイクル・ダイアリーズ」を撮ることになる彼の出世作は、南米版「ギルバート・グレイプ」と言った趣きの鬱屈した青春ドラマでありました。もう、見ているだけでこちらも全身から汗が噴き出しそうになる暖色系の乾いた映像で描かれた、この家族という牢獄から必死に抜け出そうともがく青年のドラマはなかなか見応えありましたね~。この監督の、社会の不条理に怒りを燃やす若者の心情を南米のからりと乾いた映像の中に繊細に描き出す手腕は、もうこのころから確立してたんですね。特に、トーニォとクララが次第に惹かれあってゆく初々しい恋愛描写は美しい音楽の力も相俟って出色の出来でした。そして一転して訪れるラストの悲劇……。家族とは人を縛り付ける牢獄にすぎないのではないか?ときに家族という社会的システムは弱き者の犠牲の上に成り立っているのではないか?そんな答えのない疑問を抱きながら、それでも人は家族を作る。そう、今より少しでも幸せになるために……。人間の生きることの悲しみと切なさを冷徹に見つめながらも、最後、広い大海原へと歩き出すトーニォの姿に、そんな苦しみを乗り越えうる微かな希望を見出したような気がします。マイナーながら、なかなかの良品でありました。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-07-11 21:29:30) |
11.何とも辛辣な設定ながらも、淡々としたストーリー、 厳かとさえ感じる静かな雰囲気が、叙情的という印象を与えてくれる作品。 その中に、兄弟愛、争うことの虚しさ、兄の人間的成長といった テーマをそこはかとなく織り込んでおり、「映画してるなぁ」という満足感は抱かせてくれた。 監督さんは、「セントラル・ステーション」を撮った人ですか。 あの作品も良かったけど、本作は演出と映像が秀でていて、改めて実力のある人なんだと実感。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 5点(2011-08-05 09:31:39) |
10.《ネタバレ》 不毛な報復を繰り返す2つの家族。笑い声もなく灼熱の下で延々砂糖を作る日常。そして鞭で打たれながら機械を廻すために同じところを延々回り続ける牛の姿。 「人生なんて同じ所をぐるぐる回ってるだけなんだぜ」っていう閉塞感が半端じゃないです。 最後まで重苦しい話だったけどだからこそなのかな、映像の美しさが際立ってました。 【Trunk】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-10-14 19:33:43) |
9.《ネタバレ》 いいところが沢山ある作品。映像が幻想的で、光の使い方がとても美しい。テンポも悪くない。子役の演技は光っているし、主演のロドリゴ・サントロはどこから見てもいい男。でも何だか「馬鹿馬鹿しい」感じがするんだよね。一人づつ殺していくなんて「きりがないじゃん」そんなこと、いい大人があれだけいて、わかりきっているだろうに・・・・「どうしても殺さないといけない」という理由が薄くて、演じるひとたちはすごく切迫した表情なんだけど、何だかな・・・・と思ってしまう。そこを差し引いてもブランコのシーン一枚でも、あの映像の独特な美しさは見る価値ありです。 【ともとも】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-04-12 20:51:12) |
8.《ネタバレ》 映像の美しさとストーリーの残酷さが妙にマッチしていて、非常に不快でした。生きていくために滅亡の方向へ進んでいかなければならない理不尽さがとてもやるせなかったです・・・・・。 【TM】さん [DVD(吹替)] 6点(2007-03-12 18:38:08) |
7.子役の演技が素晴らしい 主役のロドリゴサントロが凄くカッコよくて、元ブラジル代表のレオナルドに似ている 【マーガレット81】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-01-21 17:07:04) |
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6.血で血を償わせる不毛な報復の応酬。こうなっては争いの「発端」がどこにあったのか全く判らず、当事者達にとっても、そんなことは既にどうでも良くなってる。誰が言い始めたかもはっきりしない「血が変色するまで待つ」「殺した相手を殺す」といった無意味な掟に縛られ、殺されたから殺す、殺すから殺されるを繰り返すだけ。美しい映像が周囲に広がる「自由」を示しながら、彼らは自ら進んでちっぽけな世界に閉じ篭る。2001年時点でこの物語を映画化しようと考えたウォルター・サレスは、やはり只者じゃない。真の自由は自らの心から開放されてこそ得られるのです、7点献上。 【sayzin】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-10-22 00:03:40) |
5.ところどころ強引だなぁと、思っちゃうんですが・・・サーカスの娘の映像が幻想的で、かなり痺れました。 【ジマイマ】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-07-14 22:58:45) |
4.《ネタバレ》 一人ずつ殺しあうなんてあほとしか思えない。どうせなら全面戦争したらいいのに。 空がきれいだった。ヒロイン役が色っぽい。それだけの映画。 |
3.人間らしい愚かな「プライド」や「名誉」などの感情に縛られた かわいそうな家族の話。 純粋で逞しい兄弟は儚くて切ない。 痛々しく続いていくがラストでは救われたよう・・・な・・・・? 映像は綺麗で驚きました。 殺伐とした荒野の風景の色合いがとても雰囲気がでていて素敵。 【05】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-11-23 21:41:23) |
2.この殺伐とした雰囲気がたまらない。 復讐が復讐を呼ぶ絶望的な世界観。 その運命に翻弄される兄と弟…渋い。渋すぎる。 ラストの悲惨さもまたそれに拍車をかける。いい映画。 【ふくちゃん】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-09-21 06:45:45) |
1.素晴らしい映像美を堪能させて頂きました。高く伸びたサトウキビ畑を殺す相手を追って延々と走っているシーン。本当に長い間二人が走っているのに映像が全くぶれず二人共明確に写している。またブランコがあるところなど惚れ惚れするほど美しい。ただ一つ欠点をいうのならばサーカスの二人の関係が分かり難かったところ。でも、そんなことは小さな事と思えるくらい良い映画だった。最後の海のシーンも海の広がりとか深みとか哀しみとかが全部こもっていて胸に染みた。 【さら】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-08-31 09:38:55) |