2.《ネタバレ》 この映画はギリシャの現代史を抜きには語れないと他のサイトの感想文で知ったが、
僕はそんなことを知らずにこの映画に10点もつけてしまった。
それは浅はかだったと思う。
ただ僕はこの映画がとても深遠で美しい映画だと思ったし、
全く知識がなければ「郷に従え」というのもあって10点を付けた。
今だってギリシャの現代史に関する知識はとくにないですが、今回再見してこの映画は
ただただ凄い映画であると感じた。
なんていうか観客に全くこびない姿勢に惹かれる。
それは尺の長さであったりだ。
しかしそこで語っている。
静寂の中でも語っている。
つまらない映画には尺の長いところには何もないのだ。
この映画はあまりに大きい。
知識で語られること以外は神の領域が入ってると思う。
映画の中で起こっていることのスケール感が今まで自分が見た映画とはまったく違った。
テオの作品は結構全部そうなのかもしれないが。
人間よりも高い視点でみつめ、人間を突き放して冷静にとらえてるかもしれない。
観客は次元を超え、歴史的に起こっていることの目撃者となる。思想の体験者となる。
それは寓意を含んでいる。
この映画は次元を超えているようなところがあって驚異的なスケールを感じる。
アレクサンダー大王を歌った声楽の凄さに圧倒される。
アレクサンダー大王というと戦っているイメージがあった。
この映画のアレクサンダー大王はほとんど戦っていない。
その存在は孤独と愁いを帯びている。
しかしその存在感は非人間的でいて、まるで幻想であるか幽霊であるかのようだ。
その不思議な存在感に惹かれる。
英雄なのか独裁者なのか分からない。しかし英雄の側面をこれほど巧みに描いた映画はないかもしれない。
リアリズムの中に芸術的な美しさがある。
囚人の脱走にしても、集団リンチにしても、大王の最期にしても、
芸術的な表現に圧倒される。
10点を付けたのはこの映画が僕の知っている映画の中では一番大きいと感じるからだ。
しかしこの「完全な映画」に対して観賞者である僕の知識段階が未熟な為そこにいたらなかったので、今は1点引いておく。