1.レトロ感覚の人。ときどき挿入される大衆読み物の挿絵ふうの画像に対する愛着。子どもたちが猛獣に襲われているかも知れない、という場面で何枚かパラパラと綴られるやつ。そして銅版画ふうの線描世界。きっとこの人は、こういう時代に暮らしたかったという憧れを持ってたんだろうなあ。なんか寺山修司と共通した嗜好があるみたい。過去へ引きずられがちな傾向。プラハのほうの話でのいちいちのセット・建造物もいいし、少年たちのほうでは洞窟の中の入り江ね(これ『悪魔の発明』のときにも使った図柄じゃないか?)。とにかくとても面倒なことやって、自分の世界にしちゃってる。その特別なシーンだけが浮いてしまうことなく、一編の映画そのものがトリップしてしまう。新聞記者に発砲する家族がおかしかった。ただ筋立てが二つに分かれたぶん、『悪魔の発明』よりはいくぶん物足りない。