15.《ネタバレ》 満員電車に乗っていると、サイコになってしまいそうな時がありませんか。私はしばしばあります。すべて動物には、適正な分布密度というものがあるのでしょう。それでこの映画の冒頭。雪原をゆく隊列。6つの人影と赤いボート。彼らのほかには何も無い。これだけで、か弱き人間の姿が愛しく見えてくる。彼らとて、同じはず。他に何もないからこそ、本来はお互いを愛しく思うはずなのだ。そこに異変が起こり、状況はしだいに「イベントホライゾン」と化す。しかしここでは、化け物が直接的な危害をおよぼすことはなく、すべて「何か」を見たり聞いたりした人間の成せる行動によって破滅が進んでいく。古い日誌が見つかったとて、小屋に死体があったとて、それらが直接襲ってきたわけではない。すると、「すべては妄想幻覚」という見方もできることになる。一方で日誌が見つかる以前の平和な状況下でも「異物」の描写場面が挿入されており、「南極には何か(魔物)がいる」という見方を完全に消せるわけでもない。観客に委ねている部分も多いといえる。 隊長の最後の謎の言葉、「お前が俺を止めるべきだったんだ」とは何を意味しているのか。隊長以外の5人のうち、それぞれの役目を考えると、副隊長は補佐、救助のプロ、食料担当、町役場勤務はビデオと機械担当、下っ端のミンジェには定かな役割が設定されていない。つまりミンジェに振られた役割は「息子」の代わりということであろう(隊長にとって)。自分のヘタレさに負けて自殺した(と隊長は思っている)息子を許せず、息子を鍛える代わりに隊員たちに異常なまでのマッチョを求める隊長。その隊長を止めることができるのは、「死んだ息子」の代わりであるミンジェしか居なかった。 ラスト到達不能地点(なのか本当に?)での日没シーンの恐怖といったら、ここの場面を撮るために作った映画といってもよい。圧倒的な「無」、あるのは雪だけで、生き物は自分一人。しかももうすぐ真っ暗になって当分(自分が生きている間中)日は昇らない。なんという「無」の恐怖。「孤独」を「恐怖」と感じさせる描き方は秀逸であった。 「遊星からの物体X」のラストはまだしも「2人」であったので、ここまでの恐怖感は描かれていなかった。ホラー要素は不要という見方もあろうが、「謎」を盛り込んだ内容は私的には好感がもてる。日本人による音楽も秀逸。それにしても韓国映画は資金力があるなあ。 【パブロン中毒】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-03-04 13:13:12) (良:3票) |
14.何の予備知識もなかった事で邦題から浮かんだイメージから、てっきり「運命を分けたザイル」のようなセミドキュメンタリー・タッチの再現ドラマとばかり思っていたのだが、まったく私の予想を大きく覆す作品であった。ここに登場するのは、南極を探検する者が未だ成し得ないと伝えられる「到達不能点」を目指す韓国クルーたち。その彼らの身に起きる不思議な体験を描いた本作は、韓国映画お得意のホラー的要素を取り入れたミステリアスな冒険譚である。碧空に眩しく光り輝く太陽の下、真っ白な氷原を突き進むクルーたちの姿は、南極探検としては極めて常識的な光景である。このゆったりとした日常的な描写のオープニングから、天候の変化と歩調を合わせるかのように、ドラマは次々とその様相を変えていく。太陽が沈むことのない世界では昼夜の区別もつかず、不眠に悩まされる隊員たち。来る日も来る日も真っ白い氷に閉ざされた自然を前にして、徐々に彼らの精神状態に狂いが生じていく。映画はそういった隊員たちの様子を、真実味をもって丁寧に描いていく。目的地へ向かう極限状況の中、疲労で脱落していく者。或いは方向感覚を失って幻覚を見る者。救助を求める者に対し頑なに拒否し、何かに取り憑かれたように歩みを止めないリーダー。それには理由があるのだが・・・。しかしホラー色が強まる後半の作劇はむしろ余計であり、それまでの濃密な描写までもが薄っぺらなものに感じてしまう。ここはやはりギリギリにまで追い詰められた男たちの緊迫のドラマを、あくまでも正攻法で最後まで描ききって欲しかった。ただ、大自然を捉えた撮影の素晴らしさは言わずもがな、朽ち果てた小屋の幻怪的な効果などは美術力の賜物であり、どんなジャンルの作品を撮っても韓国映画の本気度が伝わってくる。どこかの国のユルさ加減とは大違いだ。それにしてもソン・ガンホの狂いっぷりは見事で、彼独特の目の演技はここでも遺憾なく発揮されたと言える。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-09-15 01:04:41) (良:2票) |
13.《ネタバレ》 サスペンス部門での韓国映画というのは、やはり凄い。画面に引き込まれる感覚を覚得ます。本作の場合一面氷の世界。画面が代わり映えしないため密室劇のような印象を持ちました。徐々に追い詰められていく隊員たち。壊れていく自我。見応え十分です。ただ、状況が追い詰められていく後半は、この探検隊同様に観客も迷走します。キーアイテムの「南極日誌」にしても、隊長のトラウマにしても活かされているとは言い難い。というのも全部が壊れすぎていて、何がどうなったのか非常に分かりづらいから。人物の見分けが難しいこともその一因です。みな同じような風貌。同じアジア人の自分でさえ判別し難いのですから、欧米人が見たら全く区別がつかないのではないかと思います。不到達地点は、人の欲望の到達点。当然満たされる場所などあろうはずも無い。そのメッセージは伝わってきました。 【目隠シスト】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-09-30 17:27:07) (良:1票) |
12.《ネタバレ》 真っ白な無の世界が広がり逃げ場の無い極限状態において、一人また一人と狂気に取り憑かれていく人間心理の攻めぎ合いが見事に描出されている。冒頭から隊長は異様な雰囲気を醸し出し既に異常をきたしているように見え不安感が募る。南極という得体の知れない場所が魔物が潜む効果を高め幻覚も加わり疑心暗鬼を増長させる。小道具の使い方なども巧みで不可思議さを保ちつつ隊員たちと共に観客も到達不能点までの道のりを体感させられる。それでもホラーとしての要素は確かに弱い。だがその分ソン・ガンホが狂気の演技で凄みを見せる。憎悪に呑み込まれ我が身を滅ぼしていく様は、まるでメルヴィルの『白鯨』の船長を想起させる。強過ぎる偏愛は表裏一体の憎悪へと変わってしまう。人間の狂気に改めて恐さを覚える。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-08-23 18:57:56) (良:1票) |
11.《ネタバレ》 全体的な雰囲気は悪くないんですけどね。真面目に作ってるし、演技も迫真だし。だけど、どうにもついていけない、、、。南極は太陽が昇ったままで、一面真っ白のいわば別の惑星のような世界。そこで過酷な冒険を続けていると、だんだんと精神が病んでいくというのもわからなくはないんだけど、例えば最初にイギリス探検隊の日誌を見つけて、その日誌がなにか意味を持っているかというとそうでもなく、単におかしくなる発端にすぎないわけです。アイテムとして全くの無意味なんですよ。「南極に潜む得体の知れないなにか」のような映像もあるんだけど、それもまた思わせぶりにすぎない。どれもこれも思わせぶりなだけで、そういう要素を一つ一つ剥がしていったら残ったのは独りよがりなおっさんの暴走。隊長の過去のトラウマが、南極と言う極限状態で増幅されて変になったんだと思うけど、正直見ているこっちとしては、こんな意志薄弱な奴らが到達不能点を目指そうとするなよ、て思っちゃった。 【あろえりーな】さん [DVD(字幕)] 4点(2012-06-03 00:02:33) |
10.《ネタバレ》 ソン・ガンホの熱演以外には観るべきところが無かったなー。南極の閉鎖空間が人間の心に魔物を産み落としたってことなのか?わざわざ6人の名前や担当などをメモしながら観ていたけれど、結果的にそこまでする価値は無かったのでちょっと残念。思わせぶりな演出ばかりで眠くなったし、結局クライマックスもなんだか微妙だった。で?と思ったところで終わる映画ってのはやっぱり苦手だ。 【枕流】さん [DVD(字幕)] 3点(2011-12-11 18:56:52) |
9.《ネタバレ》 最初は南極横断か何かのドキュメンタリーかと思ってたんですが、これ、ホラーですよね…?防寒具を着ているせいか誰が誰だか非常にわかりにくかったです。氷の下からの目線とか、雪にサクッと穴ができるとことか、隊長が機械の部品を食べたり、落ちそうな人をロープで支えているときに鼻血が出たりで、未知の生物がいてそれに寄生されてるのかと推測してました。そして到達不可能地点(そこに未知の仲間がたくさんいる)まで人間をつれていき、そこで寄生するとか食べるとか。でも違いましたね。ところで、氷の底に落ちた人(現実にあんな風に穴があくことがあるのでしょうか…怖い!!)がまだ生きていて、氷の空洞に向かってたたずむシーンありませんでしたか?うーん、やっぱり何かがいたとしか思えない…。狂気かホラーかのどちらかに絞ったらもっとよかったのかなぁ。音楽がホラーっぽくてよかったです。 【旅する仔猫】さん [地上波(吹替)] 6点(2008-02-10 14:22:28) |
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8.《ネタバレ》 名前だけで、ホラーの要素があるとは思わないで見たのでちょっとショックだった。 それと韓国語の名前にはあまり馴染みがないので名前がなかなか覚えられなかった。 南極で、何者かわからない力、何かがあるという設定、隊長の狂気じみた行動もゾクゾクした。 また真っ白な世界でボートを一列に引いてるところ、印象深い。 【kayori】さん [DVD(字幕)] 4点(2007-02-05 12:58:16) |
7.韓国映画の制作・俳優陣のやる気が、感じられる作品でした。本編の内容ですが、訳のわからないホラー設定などが、有り韓国映画独自の雰囲気が出ていたと思います。 【SAT】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-11-26 10:31:58) |
6.《ネタバレ》 ハズレでした。んー、ロケーションの風景が素晴らしくて、だけどそれゆえに後半になると怒涛のように現われる「合成です」ってハッキリしてしまう画面に冷めます。登場人物全員がキャラ的に面白くもなんともなくて、ずっとむすっとしていて全編陰鬱。ひとりひとり消えてゆく事になっても、思い入れが全然ないので恐怖感が湧いてきません。ホラーなんだかサイコサスペンスなんだか半端な状態でずっと物語が続くし、捜索隊は一度ヘリが出てくるだけで、あと何やってたんだか判らないし。ソン・ガンホはキューブリック版「シャイニング」のジャック・ニコルソンの如く、最初からおかしいんじゃないの?って感じにしか見えませんでしたし。太陽がずっと空にあって、風景がずっと白くて、その中で狂気に駆られてゆくっていうのが主題ならば、なんだか思わせぶりなイメージショットが多すぎですね。結構贅沢な環境で作られた映画だとは思うんですけど、私としてはこんな退屈な映画にしちゃって勿体ないなぁ、としか思えませんでした。 【あにやん🌈】さん [DVD(字幕)] 3点(2006-11-05 01:17:13) |
【のりまき】さん [DVD(字幕)] 4点(2006-09-24 17:09:54) |
4.《ネタバレ》 役者さんの演技はかなりすごいです。特に隊長はもう、、、ボリボリ通信機の部品を食う姿はまじで背筋にくるものがありました。。。が、これじゃ隊長の虐殺旅行って感じで最後もなにがなんだか、、映像は素晴らしかった。ただ後半が退屈極まりない、オチなんかもういいよって感じだし…期待しすぎました 【マキーナ】さん [DVD(字幕)] 4点(2006-07-10 23:40:11) |
3.私も、登山をしたことがあるので、あの状況で極限状態になるのは容易に想像できる。あんな問題のある人間をリーダーとして南極を冒険すること事態が問題だ。役者陣の迫真の演技に6点。 【T橋.COM】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-05-21 13:37:55) |
2.極限状態の中で、そこにいる一人一人が次第に内面を曝け出していく。これは大自然を背景にしたアドベンチャーものの王道を行く展開。実にオーソドックスな物語ですね。ただし、俳優さんたちの白熱の演技が作品全体の質を高めていると思います。ホラー的演出も、隊長の心の葛藤を表わしていると思えば過剰とは言えないでしょう。見応えのある作品と思います。ただ、あまりにお約束どおりのストーリーが残念。もう少し、オリジナリティを感じさせて欲しかった。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-05-08 00:43:44) |
1.南極で到達不能点を目指して、ひたすら遭難しまくるという映画。ソン・ガンホやユ・ジテなど演技派俳優達の演技が凄くて迫力ありました。↓のドラえもんさんも書かれていますが、余計なホラー要素はいらなかったと思いました。タイトルからしてドキュメンタリータッチの作品かと思っていたので、いきなりのB級映画的な展開にビックリでした。それにしても、ソン・ガンホ演じる隊長がなんであそこまで狂ってしまったのか謎でした。どうせB級にするんなら、ソン・ガンホにイギリス隊の霊が乗り移ったという設定にするとか、実はエイリアンに乗っ取られていたとかいう設定にすれば面白くなったのに・・・ってそれじゃ「遊星からの物体X」になっちゃいますね(笑) 【ヴレア】さん [DVD(字幕)] 4点(2006-02-26 13:45:30) |