20.《ネタバレ》 舞台となる家の造形が良いですね。
(こんなところに住んでみたいなぁ……)と、羨望の溜息が漏れちゃいます。
そんな家の内装と、ヒロインを眺めているだけでも楽しい映画……と言いたいところなのですが、そういった気分も、中盤に差し掛かる頃には流石に醒めてしまいました。
その理由としては、まず、犯人が出てくるまでが異様に長い。
勿体ぶって、これでもかこれでもかと引き延ばした割りに、その正体は意外な人物でも何でもなく、初対面のオジサンだったりするのだから、大いに肩透かしです。
喧嘩中の彼氏と、女友達だけでなく、ベビーシッターとして派遣された先の家庭にもメイドやら大学生の息子やらを思わせぶりに配置していたのは、全てミスリードを誘う為だったのでしょうか。
子供達の姿が全く見えないから「実は既に殺されている」「実は最初から存在しなくて夫婦の妄想の産物」なんて展開も予想されるのですが、これまた全部外れ。
もしかして、退屈な留守番を任されるベビーシッターの心境を観客にも理解してもらう為に、意図的に冗長な演出にしたのではあるまいか……とも考えられますが、きっとこの推理も外れなのでしょうね。
何よりもキツかったのは、この映画において最大の衝撃を受けるであろう「実は犯人が屋内にいる」という部分。
これって有名な都市伝説が元ネタなので、観客である自分もとっくに知っていた事なんですよね。
仮に知らなかったとしても、序盤のアラームが鳴った件やガレージが開きっぱなしだった描写やらで「犯人が潜入している」というのは、すぐに気が付いたと思います。
だから当該のシーンで衝撃を受けるヒロインに対しても(えっ? 今更?)という印象を受けてしまい、どうしても感情移入出来ません。
せめて守るべき対象となる子供達との間に絆があれば応援出来たのでしょうが、それも無し。
そもそも子供達の台詞が極端に少なく「守りたい」「この子達には何とか生き延びて欲しい」と思わせるような描写すらも乏しいものだから、困ってしまいます。
ヒロインが恐怖のあまり精神を病んでしまったかのような、後味の悪いバッドエンドなのも、好みとは言えません。
何だか不満点ばかりを並べる形となりましたが、犯人を撃退する「暖炉の装置」に関しては、完全に忘れていたので意表を突かれたし、良かったと思います。
パトカーの中からヒロインを見つめる犯人の眼光にも、ゾクっとさせられるものがあって、印象的。
恐らくは意図的に血を映さず、適度な「怖すぎない怖さ」を提供してくれた事にも、好感が持てます。
それでも「ここを、もっとこうすれば面白くなったんじゃないかな?」という思いが頭を離れない……そんな映画でありました。