6.《ネタバレ》 原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。
ストーリーはほとんど理解できるが、全体的に漠然としており、言いたいことが分かるようで分からないメッセージで構成されている。しかし、駄作なのかと問われれば、そうでもないように思われた。完全に頭で理解できるメッセージではないが、心の中に何かが残るように感じられる。ぼんやりとはぐらかすような描き方であり、核心部分に触れてなさそうに思われるが、実は静かに鋭く核心に迫っているのではないか。
子どもに対する接し方については、明確な答えは存在しないのであり、本作のようなぼやっとした描き方は実は正解に近いのではないかと思う。
真似することは難しいが、大森の役柄のように子ども目線で接するのも一つの方法だろう。坂口の役柄のようにストレートにマジメに向き合うのもまた一つの方法だろう。國村の役柄のような方法で子どもと心を通わせるような“奇跡”もあり得る。「ダメな奴はいつまでもダメだ」と諦めて突き放すことは簡単かもしれないが、それでは子どもの心に傷が残り、大人になってもその傷は癒えない。難しいかもしれないが、手を差し伸べないと何も始まらない。本屋のオヤジのアプローチも好ましいものだ。万引きしたからといって「謝りなさい」と言って謝らせることには意味がなく、少年の存在を認めてやることであの少年も変わることができたのではないか。
小西の役柄については結局スルーするのかと思ったが、ラストであれほどコンパクトにまとめるのはなかなか上手いことをすると思われた。印象深くまとめられており、冗長に説明するよりも多くの想いを語っている。
坂口の役柄についても子ども時代については何も語られていない。もちろん非行をするような子ども時代ではなかったと想像できるが、悪いことをしていないにも関わらずすぐに謝る姿勢、日焼けサロンに篭り外界との遮断を試みている姿、料理にこだわる姿、週末に一人で過ごす姿をみると、彼も心に何かを抱えているものがあるのかと想像できる。
もちろん大森の役柄についても同様なことを感じさせる。
原作に何かが書かれているのか、それとも何も書かれていないのは分からないが、そのように感じさせることが演出家・脚本家としては必要なことだろう。
映像に描かれていることだけではなくて、それだけではない+α的な要素が加味されていることは評価したい。