トウキョウソナタのシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。

Menu
 > 映画作品情報
 > 映画作品情報 ト行
 > トウキョウソナタの口コミ・評価
 > (レビュー・クチコミ)

トウキョウソナタ

[トウキョウソナタ]
TOKYO SONATA
2008年オランダ上映時間:119分
平均点:6.55 / 10(Review 60人) (点数分布表示)
公開開始日(2008-09-27)
ドラマ
新規登録(2008-10-07)【すぺるま】さん
タイトル情報更新(2017-12-25)【イニシャルK】さん
Amazonにて検索Googleにて検索Yahooにて検索
Twitterにて検索
ブログに映画情報を貼り付け
監督黒沢清
キャスト香川照之(男優)佐々木竜平
小泉今日子(女優)佐々木恵
小柳友(男優)佐々木貴
井之脇海(男優)佐々木健二
井川遥(女優)金子先生
津田寛治(男優)黒須
児嶋一哉(男優)小林先生
役所広司(男優)泥棒
土屋太鳳(女優)黒須美佳
黒田大輔(男優)
脚本マックス・マニックス
黒沢清
田中幸子
音楽橋本和昌
和田亨(音楽プロデューサー)
作曲クロード・ドビュッシー"Clair de Lune" - ベルガマスク組曲「月の光」
撮影芦澤明子
製作博報堂DYメディアパートナーズ(「TOKYO SONATA」製作委員会)
配給エイベックス・ピクチャーズ
特撮浅野秀二(VFXスーパーバイザー)
美術丸尾知行
松本知恵
衣装宮本まさ江
編集高橋幸一
録音岩倉雅之
渡部健一(音響効果)
照明市川徳充
その他メディアファクトリー(協力)
あらすじ
リストラされたサラリーマンが家族に失職を言い出せず、毎日スーツを着てハローワークへ通ったり公園で時間をつぶす。それでも家長である威厳を保とうとするが、やがて一家の崩壊が始まる…。
ネタバレは禁止していませんので
未見の方は注意願います!
(ネタバレを非表示にする)

【クチコミ・感想】

別のページへ
新規登録順】 / 【変更順】 / 【投票順】
123
>> お気に入りレビュワーのみ表示
>> 全レビュー表示

>> 改行なし表示
※ 「改行」や「ネタバレ」のデフォルト表示のカスタマイズは「カスタマイズ画面」でどうぞ
60.《ネタバレ》 母親はオープンカーを「屋根がなくなっちゃった車」と称しました。それはこの家族の状態に似ている気がする。父親はリストラで職を失った。家計を支える収入が途絶えるのは、家屋で言えば屋根が無いのと同じ。雨ざらし、風さらし。大切な家財を守れない。でもそんな事実に家族はみな目を背けてしまう。屋根が無いのを認識するのは怖いから。でも容赦ない風雨に心と体は荒んでいく。限界を迎えた黒須家は悲惨な最期を遂げました。佐々木家も危うく同じ轍を踏むところ。でも彼らはその前に逃げた。散り散りになって。母が漆黒の海の彼方に見つけた光は何だったのでしょう。この先にある希望の象徴?でも目を離した隙に消えてしまう。何とあやふやなものを頼りに、私たちは今まで生きてきたのか。全てを諦めた彼女が口にしたのは「今までの人生が全て夢だったらそんなにいいだろう」。期せずして同じ頃、夫も同じく「やり直したい」と。長い歳月と、膨大な労力を払ってきた大人にとっては、これまでの生き方を否定するのは耐え難いこと。絶対に口にしたくない“本心”を吐露したとき、2人の心は一度死んだのだと思う。黒須よりも彼らは弱かったのかもしれない。でも弱さを認めたからこそ再生できた。バラバラになったから、また集うことが出来た。生き様を肯定したまま命を絶った黒須、人生を否定して生き延びた佐々木。その差は僅か。もし強盗が入らなかったら、大金を手にしなかったら、彼らは走り出していただろうか。この物語は少しも他人事とは思えませんでした。父に自身を重ね、体を硬くして観入りました。もちろん自分もかつての子供。息子たちの戸惑いも判ったし、母の想いも想像できました。痛くて、苦しくて、ずっと泣きそうでした。終始この調子だったら、最後まで観られなかったかもしれない。ですから、役所教官の運転教習に笑わせてもらったのが救い。重苦しい物語ほどユーモアが欠かせません。ソナタは、2つの主題を対比的に用い、主題の提示・展開・再現の3部で構成される器楽形式。コンダクター黒沢清の、家族再生のソナタが心に響きました。
目隠シストさん [DVD(邦画)] 9点(2010-01-25 20:56:58)(良:4票)
59.《ネタバレ》 映画で人が走っている瞬間は素晴らしい。
この映画の主人公三人は、もう一度やり直したい、どうすればこの柵から抜け出せるかということをきっかけに、唐突に走り出す。
オープンカーの屋根を開けることで女の決意となった瞬間の美しさや、妻に見つかったことでの後ろめたさで狼狽する醜さや、大人に対する嫌悪感や子供であることの無力感、それらが一気に膨れ上がり映画そのものも走り出す。

そして彼らは「どこか」に向かう。家族という社会での最小単位のコミニュティから、救いがあるかもしれない「どこか」に辿り着くために外へ出る。しかし小泉今日子演じる佐々木恵が目にしたものは、海であり、海の向こうには陸だか船だかそれがあるのかもわからないくらいにまだ海が広がり続ける。
結局、三者とも、どこかに辿り着けそうで、どこにも辿り着けないのだ。
実際に存在したかもわからない橙色の光を見つめ涙したり、一度は死んでみたり、子供ながらに大人と同じ扱いを受けてみたり、果たしてそれが何か救いになるのか。
そして彼らは結局もとの位置に戻るしかないのだ。

恵は、自身を傷つけようとしている役所広司演じる泥棒に、最後に信じられるのは自分自身でしかないと言う。
井川遥が演じるピアノの金子先生は離婚するのだが、もともと他人だったのがまた他人同士に戻ったと言う。
所詮、個人は個人、他人は他人に過ぎない。自分ですらもうひとりの他人である。しかし一番信じられるのは自分でしかない。
この三人は静かに自分を信じ始めたからこそ家に帰り、お母さん役が作った朝食を食べたのだ。

確かに個人は個人で、自分の悩みなど自分で解決するしかないのだし、家族と言っても所詮は他人同士のコミュニティだ、でも違うんだよ、そうなんだけど違うじゃん、それだけであって欲しくないじゃんという、前向きな希望があの象徴的なラストシーンにはある。
それこそが救いだろう。許しや救いというのは愛の中にしかない。あの愛情に溢れた(ように見える)家族は陽の当たる中を、カーテンがたゆたうほどのそよ風に乗りながら、そうだけどもそうだけであって欲しくないじゃんというアカルイミライへ歩んでいくのかもしれないし、あるいはそうじゃないのかもしれない。

しかしながら、すべてはあの海だ。あの横一直線に光る白波と小泉今日子、そして朝日を目一杯浴びる。まるで生き返っていくようだ。
すぺるまさん [映画館(邦画)] 9点(2008-12-31 23:59:22)(良:3票)
58.リストラ・プライド・ファミリーと、決して他人事では済ます事が出来ない緊迫感が続く中で投じられた黒須(津田寛治)の存在にクスッとさせられる。
そこに油断が生じ、この先、彼を交えてどんだけ楽しませてもらえるんだろうかと思っていたのは ほんの束の間で、
唐突に消えてしまった黒須家の存在にコトの深刻さに引き戻されハッとする。すごく重苦しくなってしまった ダークです。 
しかし、後半、二の矢の如く投じられたヘタレな強盗(誰とは言わない) がまた変な笑いを持ち込み笑いを誘う。なんか意表を突かれたところで嬉しいスパイスだった。

香川照之については、もう何も言うまい。
小泉今日子については、もはや安心して見ていられるというか 
歳はとっても ずーーーっとそのお顔を眺めているだけで平和な気分にさせてくれるお人だ。ずっと彼女の表情だけを追って2時間観ている事も出来る。自分にとっては全く時間を感じさせない不思議なお人なんです キョンキョンて。しかし、縛られる小泉今日子を見たのは初めてだった なんてことをするんだ ちょっと衝撃的だった。
3737さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-07-01 17:30:10)(良:2票)
57.《ネタバレ》 最近観た映画の中では、最も考えさせられる映画でした。今作の夫婦と兄弟の4人は、家族の体裁はあるものの、各自の考えや悩みを共有していない。それぞれが誰にも相談せず、それなりに自分で答を出している。だから独奏曲なのだと解釈しました。この4人の人生がそれぞれの「ソナタ」です。では、家族とは必要のない単位なのかというと、そんなこともない。三者が別々の事件を過ごした翌朝に食卓を囲むシーンや、両親が次男の演奏を見守るシーンには、家族の繋がりを感じます。でも、コミュニケーションの頻度とそれぞれが抱える問題の解決は別次元の話だと思いました。音楽に喩えるなら、時には和音を重ねたり、セッションを演じるようなタイミングがあったとしても、基本はカルテットではなく「ソナタ」なのだと…。この映画には、さらに「トウキョウ」が加わります。人口密度が高いと、他者との精神的距離はかえって広がるように思える。そんな場所で生き残るために、神経を擦り減らし続けるような圧迫感。それが「トウキョウ」の意味合いだろう。父の同級生や役所広司のように、適応できなかった人はバッサリと切り捨てられる。オーソドックスな流れだと、ここで家族の絆が登場するのだけど、今作は逆説的です。ここで、それぞれの「ソナタ」を強調している。長男は強い意志を持って自分の道を拓こうとした。米軍入りは突飛な選択に思えたけど、なんとか踏みとどまっていました。次男も、まさに「ソナタ」を演じることで、自分自身の人生の入り口に立ちました。気になるのは夫婦です。長男が勧めたように離婚という選択もあるでしょう。でも、この後の彼らの生き方を考えたとき、結婚生活を続けるかどうかは問題の本質ではない。一度は虚無的になりかけた個々の人生を、新しい価値観で捉え直すこと。その為であれば、離婚でさえ前向きな決断になることもある。「ソナタ」とは孤独になることではなく、単独の演奏でも豊かな音色を奏でることです。
アンドレ・タカシさん [CS・衛星(邦画)] 8点(2010-04-05 22:08:53)(良:2票)
56.《ネタバレ》 黒沢清は目に見えぬものを見えたかもしれないと思わせてしまう。それはホラーというジャンルにおいてじゅうぶん発揮されてきた。しかし『アカルイミライ』という傑作がホラー以外でもその力を発揮できることを証明してみせた。だから黒沢清の非ホラー映画を心待ちにしていた。この待ちに待った黒沢清の新作が傑作であることは当然なのだという、作品にとっては非常に酷な期待を持って観たのだが、全く期待は裏切られることなく、そして期待を裏切られないということがこんなにも幸せなことなのかと感動した。『トウキョウソナタ』に登場する家族のそれぞれは、これまでの黒沢映画が描いてきた人物同様に、自らの存在価値を見出せずにもがいている。この世界に自分は必要なのか。この家族に自分は必要なのか。「お母さん役もそんなにいやな事ばかりじゃないよ」と小泉今日子が演じる佐々木恵が言う。そこに「お母さん役の人」はいるが「佐々木恵」という個人はいない。お母さんでいることから外に出て何かを見る。真っ暗な夜の海辺にオレンジの薄明かりに照らされる小泉今日子の顔が映し出された瞬間に、あぁ黒沢清の映画だぁと何かがこみ上げてくる。圧巻はラストにも訪れる。希望という目に見えないものが間違いなく映されるのだ。ドビュッシーの「月の光」を主人公である少年が奏でる。その美しく優しい音色と少年を照らす光と決定的なカーテンのゆれ。このカーテンのゆれはゾクゾクっとした。神懸かっている。神懸かっているにもかかわらず、それはやっぱり当然なのだ。なぜならこれは黒沢清の映画なんだから。
R&Aさん [映画館(邦画)] 9点(2008-10-20 18:28:56)(良:2票)
55.《ネタバレ》 父と次男のエピソードはまあ良かったけど、母と長男のが現実離れしすぎ、特に母の強盗のくだりは別の映画が割り込んできたみたいで白けた。
紫電さん [DVD(邦画)] 4点(2016-10-16 21:16:44)(良:1票)
54.色んなところで、高評価の本作..期待ハズレだった..なぜ評価が高いのか、分からない..ちょっと、斬新な切り口で、シュールな創りにしたら、映画として、高く評価するのか?..いや、そんなもんじゃない、映画はちゃんと中身で評価しないといけない..小泉今日子、その長男、言動が薄っぺらで、リアルさが足りない..二男のピアノのくだり、ピアノの先生(井川遥)、これも中身の薄~い ペラペラの取って付けたようなエピソード、そして安易な展開..さらに、終盤の 役所広司、何のために出て来たんだ?いらんだろう! ..物語そのものが、ダメダメ..メッセージ性も無ければ、共感も感動も無い..創り手が何か勘違いしている、勘違い映画..残念...
コナンが一番さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2015-12-26 19:17:45)(良:1票)
53.家族の崩壊と再生の物語。それぞれの演技はとても良かったです。でも個人的には90分くらいにまとめてくれた方が観疲れしなかったかなぁ。長さで緊張感が途切れたせいかキョンキョンと役所さんのシーンではお二人の頭の大きさの対比ばかりに目が行ってしまいました…。ストーリーも映画だから仕方ないですが、現実離れの仕方が中途半端で逆に現実に引き戻されて。キョンキョンが長男と"お母さん役"の話をするシーンが印象深かった。両親が新たに固執する目標が産まれたラストは私にはバッドエンディングに感じられた。パパの仕事の選べなさは唯一リアルかも。
movie海馬さん [地上波(邦画)] 4点(2012-06-09 00:02:08)(良:1票)
52.《ネタバレ》 自分なりの希望を胸に米軍に入隊し、颯爽と家を出て行く長男。残された母親はある日、そんな彼が帰宅する夢を見る。憔悴し這々の体で帰還した息子は、この手で敵を何人も殺してしまったと、沈痛な面持ちで母に告げる。魘され、居眠りから飛び起きる母親。だがその夢は彼女にとって、いわゆる悪夢ではない。自分の忠告に耳を貸さず家から去った我が子が、自身の選択を悔い尻尾を巻いて逃げ帰ることを、彼女は願っているからだ。その願いが実現するためには、家を捨てた息子が家の外=戦場の悲惨さによりひどく打ちのめされなくてはならない。そうして彼女は心のどこかで息子の不幸を望み、その後ろめたさに魘されるのだ。父親にしてもそうだ。父としてふりかざす威厳をもってしても長男を家に繋ぎ止めることに失敗した彼は、幼さゆえ逃げ場所を持たない小学生の次男に対し支配的な暴君となることで、再び威厳を取り戻そうとする。そして自らが理想とする父親役を躍起になって演じる。リストラの不名誉を必死で隠しつづけることと同様に、たとえそれが如何に不毛な行為であったとしてもだ。そうすることで「家」を守れると彼は頑なに信じる。そして妻には良き妻良き母の役を、次男には従順な子どもの役を、それぞれ上手に演じるよう要求する。従順でありさえすればいい息子にピアノの才能があることなど、彼にとっては理想のマイホームを脅かす不吉な白蟻のようなものだ。私はここで、まさに白蟻を発端に崩壊する家族を描いた石井聰互監督『逆噴射家族』を思い出す。だが、エゴむきだしな壮絶なバトルの末に食卓を囲んだ『逆噴射』の家族に対し、こちらの家族は向き合うのでなく離散する。それぞれの闘いはそれぞれに家の外=戦場で行われ、それぞれの出来事は共有されることなく、それぞれの秘密となる。それでも、留守となり一旦機能を停止したその「家」に、秘密を抱えた彼らは再び帰ってくる。そしてやはり何事もなかったかのように朝食を囲む。たとえ本末転倒であっても、彼らはそうして家族に戻るのだ。続いて描かれる幕切れの強烈な鋭さは、黒沢清監督真骨頂だ。音楽学校の実技試験で桁外れの見事なピアノを披露する次男。演奏を終えた息子を迎えフレームアウトしていく彼らを、他の受験生の父母たちが振り返り、羨望の眼差しで見つめる。なんて理想的な家族だろう、と。
BOWWOWさん [DVD(邦画)] 8点(2010-12-04 16:19:04)(良:1票)
51.《ネタバレ》 キョンキョン(←いまだにこう呼んでしまう)が先年主演した「空中庭園」(5点)は、何でも隠し事なしのオープンマインドがモットーの家庭が崩壊していくおハナシ。こちらは誰もが皆隠し事をしている家族の家庭崩壊のおハナシ。それほど「家庭生活的」なイメージではない彼女が、この手の家庭劇に二本続けて主演してるっていうのはなんだか面白い。自分は「空中庭園」より、こちらの方がより現実味と切実感があって面白かったですね。「ゆっくりと沈んでいく船に乗っているようなもの」っていう心境の中年男二人の台詞にはかなり身につまされたというか。ごくフツーの、ちょっとだけ壊れた家族が奏でる「不協和音状態」っぷりは良かったのに、突然の闖入者役所広司によって映画そのものまで後半「この3時間前」テロップ以降、かなり「乱弾気味」になってしまったのが残念。結局、ラストも何も解決されないままだし。ピアノに天才的才能を持つ次男は、特待生扱いであの学校に学費免除で合格できたって事なんでしょうか?それにしても小泉今日子の女優としての、一人の女性としての「賞味期限」の長さには本当に舌を巻きますね。そもそもの素材の良さに加え、ご本人のよほどの努力と精進の賜物なのか。何やってるのを見ても、いまだに新鮮さを失わないのは凄い事だと思います。
放浪紳士チャーリーさん [DVD(邦画)] 6点(2009-09-11 11:12:52)(良:1票)
50.《ネタバレ》 現代版『東京物語』を目指したのだろうか。とてもよく練られた脚本だと感じた。かなり突飛な展開もあるが、それも込みですべてが明確に家族の破綻へと収束していく。映像は常に被写体と一定の距離をとり、情緒的なべたつきを許さない。一家団欒のシーンでは小津ばりにカメラを固定しているが、おそらくかなりこだわったのだろう、これほどまずそうな食事の場面も珍しい(あ、でも朝ごはんのところはちょっとおいしそうかも)。

しかし筋書きがしっかりし過ぎているせいで、香川照之や小泉今日子の演じる人物が平板であるようにも思えた。今どき珍しいほど家父長的に振る舞う夫と従順な妻、という家族モデルは90年代の社会学研究から引っ張り出してきたようで、正直ちょっと古いんじゃないかと思う。俳優の力で救われているものの、率直過ぎる台詞もいくつかある(そうした台詞は一歩間違えるとまるで自分の不幸に酔っているようにも聞こえる)。

とはいえさすがは黒沢清だなと思わされたのは、単純に家族の再生を暗示して終わるのではなく、家族の変容を受け入れるという答えを提示して見せたことだ。初めは単純に反発していただけの長男はやがて精神的にも自立していくし、次男がピアノの才能を開花させたことも将来の独立を予想させる。そして無闇に威張りくさっていただけの父親は、次男が弾くソナタに黙って耳を傾ける。

無理に古い家族の形式を守るのではなく、それぞれが精神的に独立した個人であることを認めて、かつ家族であり続けようと努力する。題名が『ソナタ(=独奏曲)』である理由はここだろう。これはソナタが合奏になるのではなく、ソナタがソナタとして完成されるまでの物語なのだ。核家族のその先、という新たな時代と家族の変遷を描くことで、明確に『東京物語』“以降”であろうとする意欲が見て取れる。

ただ単純に楽しめたかどうかというと、この点数になる。人物の平板さもあるが、強盗のエピソードの唐突さに引いてしまったというのが一番の理由かもしれない。なぜもっとリアリティに徹しなかったのか、理解できない。
no oneさん [DVD(邦画)] 6点(2009-07-14 08:17:37)(良:1票)
49.《ネタバレ》 重い・・・。重すぎる。見ている間中、重しを上から乗っけられているようなしんどい気分でした。ここまで現代的で普遍的で平凡な不幸って一番観ていてきつい。こういうのって一番映画で観たくないものかもしれない。後半からは雰囲気が変わり、ちょっとだけ非日常な展開を見せ、妙に綺麗なラストに落ち着きますが、その嘘臭さが美味いのか不味いのか僕にはわからないです。どんなホラー映画の化け物や悪霊より、ずっとリストラや家族崩壊の方が怖いですよ、監督。
すべからさん [DVD(邦画)] 6点(2009-05-13 12:19:53)(良:1票)
48.すごい映画です。放心状態・・。本当にリアルですよね。転職の相談員さんが「マクドナルドでは40代・50代の女性も働いているけど、男性の40代・50代がいないのはなぜ?それは人間として無駄なものを抱えてしまって、そこから動けないからです。」と言っていたことを思い出した。でも最近は深夜に40代・50代がバイトしているのも見かけるよなぁ・・。現実、なんだと思う。この映画。最後のピアノの演奏に救われた。
グレースさん [DVD(邦画)] 9点(2009-04-24 00:37:20)(良:1票)
47.《ネタバレ》 廃墟の光景。
その昔、世界を失った者は、生活という場所に帰った。或いは、自己観念に囚われ否応なく破滅を志向した。今やそのような行き方というか逃げ場自体が失われてしまったようだ。それが『トウキョウソナタ』で描かれた現代的な喪失感なのだと思った。
役割を失えば、信じるべき自分という存在すら信じられない。役所広司演じる全てを失った泥棒に小泉今日子演じる「お母さん役」の佐々木恵が言う。「最後に信じられるのは自分自身でしかないと」 その言葉は空虚に響き、結局のところ、彼は自らの命を絶つに至る。
自己という観念が崩壊した世界で、彼らは帰るべき自分という場所すら見出せず、ただ孤立したまま、家族の食卓に戻る。そこで大切なのは、失った者同士が改めて集い、新たな役割を再構築することなのだと僕は思う。
最後の「月の光」とは、一体何だったのだろうか? 夜の海辺に瞬く光の波。カーテンに差し込む穏やかな光の漣。ピアノ曲。このとってつけたご褒美のような「希望」と「救い」は何だったのだろうか?
そうか、それが「アカルイミライ」なのか。行き場のない現代人にとってのフラットで等価交換的なアカルイミライなのか。そもそもそこには深みや影がないという、表層の瞬きという発見なのだろうか。
onomichiさん [映画館(邦画)] 10点(2009-03-29 20:40:05)(良:1票)
46.《ネタバレ》 前半は家族一人一人の悩みや関係が良く描かれており、映像や音楽もホラーっぽくてグイグイ引っ張られていきましたが、泥棒が登場するところからいきなり非現実的になってしまい興ざめしてしまいました。小泉今日子は誘拐されましたが、逃げる機会は山ほどあったのに逃げないし、、、。それに最後の次男のピアノ演奏、家にピアノもないのになんで短期間であんな天才的な演奏ができるようになったのでしょうか。下手でもいいから両親の前で一生懸命に演奏する姿の方が現実的で良かったと思います。
みるちゃんさん [DVD(邦画)] 5点(2019-03-25 11:15:05)
45.役所広司が要らなかった!

前半は家族の崩壊を描いた、なかなか見応えのあるドラマだなぁと引き込まれていたのだが、役所広司が登場してから急にコントになっていた。もうその存在そのものがギャグでしかない。なんかニヤついてるし‥。そんな得体の知れない男に付いていくお母さんもあり得なさすぎでしょ。児嶋一哉も基本的にふざけてた。

この時期の黒沢作品は後半急に迷走しがち!
ヴレアさん [DVD(邦画)] 4点(2018-03-22 18:11:15)
44.《ネタバレ》 ラスト、ピアノを弾く息子の姿を見守る香川照之が薄っすらと涙を浮かべる表情にはいたく感動しました。父として、サラリーマンとして、必死に背負い込んでいた体裁という肩の荷が降り、身も心も開放した男が、不意に幻想的で神々しいまでの美に邂逅した時、これ程美しく、生に執着した表情をするものなのかと。窓を閉めることから始まる映画であり、次男は窓が開いた開放的なピアノ教室に憧れ、母は屋根が開く車に心奪われ、父は窓から家にこっそり入る。ラスト、見事に窓が開け放たれて、カーテンがゆらゆら揺れている。窓の映画といっても差し支えないでしょうか。
うーさん [DVD(邦画)] 9点(2015-10-20 21:07:15)
43.香川照之が好きだから期待して見てしまう。
面白い。
aimihcimuimさん [DVD(邦画)] 7点(2014-08-13 23:01:43)
42.もう少しリアリティを追求してほしかったです。欠けていると感じた分可もなく不可もなくでした。
ProPaceさん [CS・衛星(邦画)] 5点(2014-08-06 17:39:42)
41.決して詰まらなくはないんですが、図式化されすぎた登場人物ばかりで正直言って食傷気味です(日本のホームドラマってこういうの多いなあ)。小泉今日子は「空中庭園」でもなかなか凄いお母さん役をやっていたので、いつ爆発するかハラハラしながら見てしまいました。
ゆうろうさん [DVD(邦画)] 6点(2013-07-14 12:26:46)
別のページへ
新規登録順】 / 【変更順】 / 【投票順】
123
マーク説明
★《新規》★:2日以内に新規投稿
《新規》:7日以内に新規投稿
★《更新》★:2日以内に更新
《更新》:7日以内に更新

【点数情報】

Review人数 60人
平均点数 6.55点
000.00%
100.00%
200.00%
311.67%
4915.00%
5813.33%
61525.00%
7711.67%
8813.33%
9915.00%
1035.00%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 7.50点 Review2人
2 ストーリー評価 3.00点 Review1人
3 鑑賞後の後味 3.00点 Review1人
4 音楽評価 Review0人
5 感泣評価 9.00点 Review1人
chart

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS