12.《ネタバレ》 「ウディ・アレンの重罪と軽罪」が好きなので、この手の作品は嫌いではない。
しかし、正面から“罪の意識”を捉え過ぎてしまった感が強く、ストレートに描き過ぎてしまったような気もする。
“悲劇”にも面白いものはあるが、遊びも捻りもなく、本作はあまりにも現実的に描き過ぎてしまったようであり、疲労感が残る映画ともいえる。
罪を犯す前から“罪の意識”に苦しむ弟が、犯罪後にも“罪の意識”に苦しむのは、かなり重過ぎる。
逆に、ラストはアレンらしいといえばアレンらしいが、あっさりとし過ぎている。
“兄弟”という設定が上手く噛み合っていかなかったようにも思える。
犯罪前には、一方は“罪の意識”に苦しみ、他方は“罪の意識”を感じないが、犯罪後には、それが逆転するような仕掛けもあってもよかったのではないか。
また、同じような道を歩いていた兄弟が一つの事件をきっかけに、光と影という全く異なる道を歩み始めるような展開や、光と影という全く異なる道を歩んでいた兄弟が一つの事件をきっかけに光と影が逆転するという展開の方が、映画らしい気がした。
しかし、本作は延々と弟が罪の意識にさいなまれて不眠症に陥り、兄がその弟に悩まされるだけだ。
ユニークさや不条理さもなく、現実的な苦悩を見せ付けられても、重々しさは堪能できるものの、面白みはさすがに感じにくい。
さらに、二人の“夢”であったような「カサンドラズ・ドリーム」号の取扱もやや微妙。
この小さな“夢”を得ようとした結果、どんどんと欲求がエスカレートしていくにしたがって、どんどんと落ちて破滅していく姿も見たかったところ。
小さな欲求によって小さな代償を払い、次第に戻ることの出来ない大きな代償へと上手く繋がっていくようなところはなかった。
また、調べてみるとカサンドラは、100%当たるのに誰も信じないという呪いが掛けられた予言者であるらしい。
トロイの木馬も予言したらしいが、誰も信じずにトロイの民は破滅したらしい。
そういう意味をタイトルに込めたのだから、兄の恋人の舞台の設定や彼らの父親にそういう予言者の役割を担わせるべきだろう。
父親は意味深なセリフを発していたが、あれでは弱いのではないか。