1.1960年当時、全国52箇所に存在した“部落”を取り上げた貴重なドキュメンタリー・フィルム。
太くて舗装された住宅街の路地が終り、そこから先は細くて未舗装な道がある。
つまり、それが被差別部落とそれ以外との境界線である。
何たる露骨な差別だろうか。
江戸時代の「士・農・工・商・えた・ひにん」の差別制度に端を発し、高度成長の始まった昭和の時代においてもなお存在した被差別部落。
彼らの住む場所は、およそ人間が住むには適さない一つ以上の条件を満たした場所であったらしい。
こういったナレーションがとても印象に残っており、白黒ドキュメンタリーを観る興奮を高めてくれた。
現代において、被差別部落の話題は、テレビで真っ向から取り上げられる機会はほとんど無い。
それだけに、こういった上映の機会は、貴重極まりないのではなかろうか。
少なくとも、こういった差別が日本人によって日本人に行われていたという事実は、厳然として認めなければならないだろう。
それにしても、当時、被差別部落の人々が、スト妨害などの反社会的な暴力運動にお金によって駆り出されていたことは、悲しむべき事実である。
お金のためとはいえ、そのような反社会的運動に参加してしまった以上、それ以降は更に社会からの風当たりも厳しく、なお一層厳しい環境に追い込まれたことは想像に難くない。
まさに負の循環であり、そこまで計算して被差別部落の人々を使った権力団体は、断罪に値する。