8.アール・デコって都会的なんだけど、ここでは田舎の中にデコの家がある。黒い縁が美しい部屋。外に広がる「田舎」に、近代女性であるシャネルが必死で抵抗しているような室内装飾だ。外の田舎は、イーゴルの妻の方がふさわしい。とんがっているシャネルと、病弱ながら周囲に広がって包み込んでいるような妻、との緊張。シャネルはイーゴルに刺激されて、洋服屋から香りの芸術家になろうと試みる。妻は夫の譜の清書を淡々とこなし、この生活から感じる腐敗の匂いに耐えていく。これ面白くなれそうなんだけど、どっかで見たような三角関係話どまりになってしまった。ピアノの響きによる嫉妬のうずき、クリムトの絵画のようなベッドシーン、などはちょっと面白い。でも一番思ったのは、ついにストラヴィンスキーも映画になったか、という感慨。楽聖映画ってジャンルがあり、シューベルトなどの名作がある(シューベルトは全裸にならなかった)。私の知ってる範囲では、ケン・ラッセルの『マーラー』が一番最近の作曲家だったが、とうとう第一次世界大戦を越えて、20年代のストラヴィンスキーが、シャネルとの二枚看板ながら映画の主役になった。これは当初最前衛だったストラヴィンスキーの音楽が、一般的なポピュラリティを獲得したって事なんだろう。次に映画化されるのは誰か。ウェーベルンなんて、ナチの支配に耐えながら米兵に誤射されて命を落とすドラマチックな生涯なんだけど、音楽の極北のようなデリケートな十二音の世界が、いつかシューベルト並みのポピュラリティを獲得する日が来るかどうか。「スターリン&ショスタコーヴィチ」なんて方がありそうだな。 【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-12-22 10:09:35) (良:2票) |
7.マッツ映画4連投。この映画は、「春の祭典」の初演シーンをかなり史実に忠実に再現しようと頑張った、その冒頭のシーンだけで存在価値のある作品でしょう。劇場の美術といい、もちろん舞台美術といい、開始直後に離席してしまうサン・サンーンスと思しき観客とか、伝えられる話はとりあえず盛り込まれているようです。ちょっと感動しました。正直なところ、3大バレエの中では、個人的には「ペトルーシュカ」が1番好きであり、「春の祭典」は3番目。だって、なんかつまんないんだもんね、聴いてても。曲想が目まぐるしく変わり飽きさせないけど・・・。でもまあ、ストラヴィンスキーの音楽は基本的には好きだし、オケで吹いた思い出深い曲もあるので、なんつーか、まあ、ちょっと贔屓目に見てしまいます。とはいえ、シャネル役の女優さんは美しいけれども、時々久本雅美に(原因は口元かなあ)見えてしまったり、ディアギレフがイマイチ迫力不足だったりはいただけない。『ニジンスキー』でアラン・ベイツのを見てしまっているから余計にね。ニジンスキーもこの後、坂を転げ落ちるように不幸になっていくわけで、そんなこんなで、この映画の背後にあるいろいろな人や物の動きに思いを馳せると、それはそれで感慨深いものがあります。そして、マッツ・ミケルセンですが。ピアノの演奏シーンがいくつかありまして、長いワンショットの中で彼は実際演奏しています(音は違うでしょうが)。その演奏シーンが素晴らしいのは、何より、彼のピアノの弾き方にあります。多分、演奏経験があるのでしょうね、少しは。手首がきちんと上がって固定されています。これは、ちょっとやそっとの練習で出来るものではありません。こういう映画では手首が下がってぶれた動作を見せられると思いっ切り興ざめなのであります。そこがきちんとクリアされている。これは結構些細なことの様で、大きいですね、私的には。彼はかなり器用な俳優さんだとお見受けしました。うーん、マッツ、恐るべし。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 6点(2013-08-11 22:37:57) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 他のシャネル作品が微妙なデキだったが、いい意味での裏切りを味わうことができる。3本の中では文句なしに自分の好みであり、かなり気に入った。シャネル及びストラヴィンスキーを描くのにふさわしいセンスの良い作品に仕上がっている。ファッションセンスは抜群であり、構図はまるで絵画を切り取ったようだ。カメラワークもかなり凝っており、その動きを追って、撮影方法を想像するだけでも満足できる。他の2作とは異なり、伝記的な要素はかなり省かれている。伝記的なものを期待していると肩透かしを食らうが、そういった視点から描かないことで、シャネル及びストラヴィンスキーという存在をほとんど知らなくても楽しめる作品となっている(ストラヴィンスキーについては彼の名前と代表作の名前しか知らなかった)。シャネル及びストラヴィンスキーという過去の偉人というよりも、一組の男女という捉え方を外していない。彼らは紛れもない芸術家であるが、そういった捉え方をすることで、現代に生きる我々も近くに感じやすく、共感しやすくなっている。自分の気持ちに真っ直ぐで正直でありながら、正直にもなれないところもあるシャネル、人間としての弱さもあり、強さもあるシャネルをより身近に感じられるのではないか。伝記的な要素は少ないながらも、エルネスト・ボーによる「CHANEL N°5」の完成、「春の祭典」の初演時の喧騒など要所はきちんと押さえられているところも好印象。シャネル及びストラヴィンスキーの罵り合い一つとってもセンスが良い。映画らしく激しく罵り合うのではなくて、分別のある大人の男女らしく静かにかつ心にグサリと刺さるように罵り合っているところをとっても、この作品の素晴らしさを感じることができる。芸術家としてダメになりそうなストラヴィンスキーをあえて突き放すことで創作意欲に向かわせるというシャネルならではのやり取りも彼女らしく面白いところだ。ストーリーらしいストーリーがなく、説明もカットされており、ハリウッド映画のように人物の内面には単純には切り込めないので、鑑賞するには難しいところもあるが、見る人によってはかなり評価を高くできる作品に仕上がっていると思う。“黒い服から白い服を着る”“音楽が情熱的なものへと変わる”それだけでも彼らの心情が雄弁に説明されている。終盤間際に一瞬方向性を失ったかのようなところもあるが、その辺りには触れないでおこう。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-05-22 23:40:52) (良:1票) |
5.アンナ・ムグラリスはシャネルのミューズを務めた事もあってお美しいのですが、耳障りな声質での棒読み台詞回しにウンザリ。お目当てマッツ・ミケルセンはお尻(+5点)に目が釘付けとなりました(恥)が、夫として父親として愛人として煮え切らなく、退屈な不倫劇でした。 |
4.最初の音楽、嫌いじゃないですが本編はうーんどうでしょうね、何もかも中途半端のような気がしてなりません。奥さん眉毛こわかった~、あとラストは蛇足だと思いました。 【HRM36】さん [DVD(字幕)] 5点(2011-10-28 15:03:45) |
3.《ネタバレ》 綺麗な映画だった。ファッションや音楽の響き、個性的な邸宅と庭の緑などすべての美がバランスよく映されていた。冒頭「春の祭典」のシーンは、再現された舞台と怒号の様子、そして悩めるニジンスキーに感激。前衛芸術家どうしの恋愛話だけれど、二人の気持ちが境界を越えてしまった時など曖昧で、常に緩い感覚がつきまとっていた。これなら、二人の関係に終始し妻の姿にあそこまで迫らなくてもいいかもしれない。最後やはり「春の祭典」に向かって情熱を傾けるストラヴィンスキーを見て、むしろ主役はこの曲かもな、なんて思った。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-07-31 11:14:52) |
2.《ネタバレ》 R指定であることも知らず、早朝1回きりの上映を鑑賞。シャーリー・マックレーンやオドレイのシャネル物語は鑑賞済みだったので流れで観ておかなくては!と勇んで正解か?割と鑑賞に堪えうる作品でした。ただし、R指定なのでやや引くシーンも。内容的には正直深みはなく、だからどうなの?と疑問視したくはなるが、シャネルの香水のミューズが主演していたので非常に美しいシャネル様相美が楽しめました。ストランヴィンスキーがかなりストイックに演じており彼女が惚れた男の像がうまく表現できていたかと思う。 【成田とうこ】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-06-10 14:08:06) |
1.クラシックファンです。「春の祭典」目当てで見に行きました。とにかく冒頭の「春の祭典」の演奏シーンは素晴らしかった! 圧巻です。このシーンのためだけにDVDを買ってもいいと思ったくらいです。しかしその後の人間ドラマは薄っぺらく思えました。全編を彩る衣装や映像美、ストラヴィンスキーの音楽は素晴らしかったのですが…。あとシャネル役の女優さんが意外に若いのに驚きました。 【すらりん】さん [映画館(字幕)] 6点(2010-05-25 09:57:48) |