1.《ネタバレ》 私は山本浩司が好きである。私の敬愛する山下監督作品で童貞とモテ男という対極にあるキャラをどちらも演じた彼。平たく言って、リアルだった。はっきりいって不細工だが、不思議な色気のあるそんな彼。東大の院まで出ているのに、三十路で童貞という役はなるほど、彼にぴったりだ。超がつく非・モテの生態をかくも見事に演じ切るかという、感動を与えるほどにダサく、痛々しい演技を繰り広げた彼に何の非もない。問題は相手役の女性だ。神楽坂恵の外見は同性の私から見ても肉感的で素晴らしいが、原作が悪いのか脚本が悪いのか演技が下手なのか何なのか、この女性のキャラクターがびっくりするほど薄い。一つ一つの行動の裏側にある心情が、全く読めない。要は何か、ちょっといいなくらいに思っていたはずの主人公の年季の入った童貞ぶりを目の当たりにしてどん引きしたってことでいいのか?しかし、その感情の起伏はどこにあったのだろう。海外に追っかけて行きたいほどの想い人がいて、その彼以外の男といちゃついてみる感じが、インテリ女性らしいアクティブさなのか。で、ふと我に返る、と。んー、分からん。確かにこの作品は私小説が基になっているらしいので、当時の相手の女性の心理は原作者ですら掴んでいないのかもしれないが、そこはどうにかこじつけてでも作品として成立させてくれよと言いたい。たぶん主人公に気があって、処女を告白した同僚?の女性のほうがよっぽど心に残ったぞ、私は。まあ、放浪記というからにはあのラストは正解だろうが。山本浩司を使うなら、山下監督までとは言わんが、作品としてクオリティを上げていただきたい。やっつけ仕事を振るには勿体ない役者ですよ、彼は。