1.これは困った。話が分からない映画というのにはある程度慣れてるつもりだったが、登場人物が確定できない。なにしろゲリラ撮影なので光量が不足気味で、人物が混乱する。これはさっきのあの人だよね、それとも新しい登場人物か、などとしばしば立ち止まらせられる。とちゅう妻が夫の不倫相手の男(ゲイなの)の仕事場に乗り込んでいくあたりまでは、大体把握できてたつもりなんだけど、探偵が濃く絡んでくると私の握力ではつかみ切れなくなった。あ、あれとこれとはやっぱり別の人なんだな、と顔面の識別よりも話の展開上の合理性で想像する。最後のほうでは『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』っぽく三人が漂流を始めたかと思うと、また分解していって、切られたり刺青ほったり。撮影禁止の処分を乗り越えて製作した、っていうんだから、いい加減なもんじゃないとは思うんだ。ゲイという特殊を通して、閉じ込められている中国からなんとか普遍に至ろうとしたのか。その勇気はたたえたいし、当局の「映画監督に撮影を禁じる」という処分の不合理には怒りを覚えるが、でもこの映画、分かりませんでした。どうゲリラ撮影を敢行していったのか、メイキングフィルムのほうが面白そう(そんなの撮ってる余裕ないわな)。ちょっと心が騒いだのは、同性が踊るシーン。ベルトルッチも女性同士がダンスするシーンが好きだったが、これでは屋外でのダンスと室内でのチャチャチャのシーンに、若干ときめいた。中国語で「変態」とはピェンタイというのか。