4.《ネタバレ》 いわゆる「小さな目撃者」ものの初期的作品だろうか。
口八丁手八丁で鼻っ柱の強い跳ねっ返りの少女ギリ―は、幸せな家庭に育たなかった。そんな彼女がある時、アパートの一室での殺人現場を目撃してしまう。その犯人は彼女が偶然知り合った移民の船乗りだった。
この二人の「親愛」というべき関係をたて糸に事件の捜査が展開していくが、その核心となるギリ―の証言は犯人を庇って虚偽で繕われ、それに捜査は右往左往していく。そこには思春期に足を踏み入れつつある少女の「大人」に対する不信、拒絶、興味といった様々な心理が交錯しているかのようだ。
何といってもギリ―役を表情、声使い、そして全身を駆使して演じた当時12歳のヘイリー・ミルズがあってこその作品である。
そんな彼女の感情の機微を光と影とで彩りつつ掴み取るカメラワークが秀逸。彼女を取り調べる威厳たっぷりの警視を演じるのが実父のジョン・ミルズなので、ウソを平然とつきまくる彼女を厳かに叱責する姿はリアルに「父と娘」の図である。
また、犯人も被害者もポーランド移民であり、それゆえにともに生きづらさを感じていた。そして犯行時の二人の会話がポーランド語であった点も捜査のひとつの要点となる。このあたりは移民社会イギリスの影の部分を表している。
国際海洋法の抜け穴をうまく利用して、ギリ―と犯人をまさしく「海に放つ」ラストはまったくの想定外。良い意味で裏切られ、「こりゃ一本取られたな」とニンマリ。
観た後に吹き付ける涼風が半端ない逸品だ。