4.《ネタバレ》 サミュエル・フラーが監督するはずが、バリー・シアーという主にテレビ方面の監督に交代、ということで、もうこれだけでロクな作品にはならないだろうと予想せざるを得ないのですが、確かにちょっとした珍品になっております。そして、こういう時にしばしば、人為的に作ろうと思ってもなかなか作ることのできない妙味が生まれます。
もともと、人を撃たないと言われてきた保安官が、悪党どもに無残に妻子を殺害され、復讐のために彼らをメキシコまで追いかけていく、というオハナシ。マカロニ風味の西部劇ではありますが、保安官をリチャード・ハリスが舞台俳優のごとく熱く熱く演じているので、ふとした時にまるでシェイクスピア悲劇のような雰囲気が漂います。一方、悪党の首領がロッド・テイラー、イマイチ悪そうに見えないんですけどね。それよりも悪党一味のひとりであるネヴィル・ブランド、義手が線路のレールで出来ている、という、強いのやら弱いのやら、どういう発想から生まれるのか想像もつかないキャラで、存在感を示します。
傷だらけになりながらも復讐心を燃やし続けて幽鬼のごとく悪党一味を追う主人公に対し、法を信じ彼の暴走を止めようとするメキシコ側の保安官がアル・レッティエリ、でもこちらは保安官ってよりも、マフィアか何かにしか見えないんですけどね。
という、見た目と役柄がマッチしないのがまず、本作の珍味たる所以のひとつで、この後もやや緩急がチグハグなまま、唐突に主人公が失明したりしつつ(本当に唐突)、物語は悲劇を予感させるクライマックスへと向かって行く。珍品だと思っていたらラストが意外に真っ当で、「意外性が無いのが一番意外でした」ってのもヘンな話ですが、余韻を残すラストです。