1.《ネタバレ》 序盤から、不倫関係をもってしまったという二人の人物描写のシーンなどを見て、かなり熱の入った恋愛話だなぁと思っていたところ、突如として当時普及し始めたであろうナイロンザイルの信用度の話が入ってきてしまい、これが本題に水を差しストーリーそのものにブレを生じさせる形になってしまっているのが実に勿体ないと思いました。
人物を丁寧に描き彼らの心の動きを機敏に捉えているわけでありますから、単純に事故が起こったという事象のみを描いて話を進めれば良い作品に仕上がったと思えるだけに、ここは残念に感じました。
映画後半で魚津が単独で山に向かうシーンで、山を越えた先には小坂の妹、戻っても八代が待ってくれているというシーンがありましたが、どっちに転んでも美女の歓待を受けるという実に贅沢なシチュエーションで、男としては何とも羨ましい限り(笑)だなぁなどと思っていたところに悲劇が起きてしまう。不倫仲の仲裁に入ったりしながらも、何の因果だろうかと自然現象の無常さを描いていたところに、この映画を読み解く難しさがあったように思えます。
また、終盤で雑踏の中を一人歩く八代と魚津の遺影に花を手向ける小坂の妹の両者の姿がそれぞれ描かれていましたが、この場面から両ヒロインの微妙な心情をどう解釈するかといったところでもこれまた一筋縄ではいかないものがあり、再考が必要な映画だと感じました。