1.《ネタバレ》 卒業コンサート前の楽屋で、娘:三吉彩花の着付けと化粧を手伝う母:大竹しのぶ。
肩に置かれた母の手に自分の手を重ねる娘。
鏡に映る二人のショットが感動的なのは、映画冒頭シーンの相似反復であるためだ。
三吉が憧憬の眼差しで影から見つめていた先輩親娘の姿に重なるのである。
歌を披露する三吉の正面からのショットの息を呑む美しさ。
彼女と溶け合うようにオーヴァーラップする、小林薫、大竹しのぶ夫婦の
切り返しショット連結の美しさ。
彼女の気丈で凛とした歌声と佇まいが感動的なのは、
その前段での高校入学面接試験で彼女が吐露する本心と、彼女が見せる涙があるからだ。
彼女らが旅立つ映画のラスト、島の独特の風土と地形的特色が映画に活きる。
三吉ら卒業生達の乗った小さなフェリーは外海の荒波に大きくローリングしながらも
真っ直ぐに島を離れていく。不安定でも進んでいく船の航跡に熱くなる。
島でのロケーションだけに、現地エキストラも充実している。
特に子供達の巧まざる演技が素晴らしい。
観光名所案内的なショットを極力避けた情景撮影が好ましい。
土地の事情なのかどうか、携帯電話が登場せず、固定電話や手紙やボートが
コミュニケーションの手段となっているのも映画性を高めている。