7.1991年のヒット作「ハートブルー」のリメイクというが、正直おこがましい。非常に浅く、薄っぺらいアクション映画だった。
今作の無名俳優たちに、「ハートブルー」のキアヌ・リーヴスとパトリック・スウェイジと同等の“華”を求めることは酷だしせんないことだとは思うが、やはり何をおいても主人公キャラクターの二人の魅力があまりにも無さすぎた。
主人公はエクストリームスポーツYouTuber上がりの新人FBI捜査官という設定にオリジナルから改変されている。
「YouTuber」という設定で時代性を出したかったのかもしれないけれど、調子に乗った危険行為の挙句、巻き込んだ友人を死なせてしまうなんていう愚かなプロローグをいきなり見せられて、正直引く。
そんな愚行のせいでいくら傷心していても同情できないし、そんな状態で僅か数年でFBI捜査官に転身するなんてくだりにも、リアリティがまるでなく馬鹿馬鹿しく思える。
そんな主人公と共鳴し、立場上許されない友情と信頼を育んでいく犯罪集団のリーダーにもキャラクターとしての説得力が無かった。
とある崇高な思想でエクストリームスポーツの限界点に挑み続けるキャラクターだということは理解できるが、その描かれ方はただただ破滅的にしか見えず、人間としての魅力を感じることが出来ない。
このキャラクターに対して、主人公の捜査官も、我々観客も、犯罪者という立場を度外視した「憧れ」を抱かさなければ、そもそもこの映画は成立しないと思う。
「ハートブルー」がヒットしたのは、初主演で初々しいキアヌ・リーヴスのスター性と共に、パトリック・スウェイジが扮した“カリスマ犯罪者”に確かな魅力が備わっていたからだろう。
一方で、そういった人間ドラマを覆い隠すように全面的にプロモーションされていたエクストリームスポーツによるアクションシーンに見応えがあったかというと、それも正直弱い。
あらゆるエクストリームスポーツの限界点をクリアすることで不可能犯罪を可能にする犯罪集団という設定が、このリメイク企画の最大のウリだったはずだが、実際にそれらのシーンが描かれたのは主人公が直接操作に絡む前の“プロローグ”のみ。
特に主人公が実際に潜入捜査に関わってから以降は、カリスマ犯罪者が、ただ純粋に人間の限界に挑戦することのみを目的とするシーンの羅列のため、物語の推進力が著しく低下していたと思う。
それに、当初の触れ込みでは「CG無し」ということだったので、現実世界のエクストリームスポーツのプレイヤーたちがすべてのアクションシーンを見せてくれるのだろうと期待していたのだが、実際は明らかに現実離れなシーンが多く、CGも大いに多用されていたように見えた。
そして、ラスト。死にゆく友を見送る様は「ハートブルー」と同じだが、いかんせん人間ドラマ的にもアクション的にも求心力が皆無のため、その様はただただ希薄で滑稽に見える。
詰まるところ、愚行で始まり、愚行で終わる映画にしか見えなかった。