28.《ネタバレ》 「海よりもまだ深く 空よりもまだ青く」。本作のタイトルのもとはテレサテンの「別れの予感」です。人をそこまでに愛することは不可能なのかもしれないが、みんなそんなふうに愛し合っているのかもしれない。他人のワタシには冷凍ヤケしてんじゃないかと心配しちゃう食材を使ったカレーうどんをおかわりしながら食べる家族は、海よりも深く愛し合っているのではないか。父親がしてくれたように、台風の中公園の遊具にもぐって息子といっしょにおやつを食べるのは空よりも青く愛しているからではないか。淑子はいつかこの世を去り、真悟を通じてかろうじてつながっている良多と響子がよりを戻すことはまずない。真悟もいずれは自分の世界に旅立っていく。そこはかとなく別れの予感が漂う中に、それでもぎこちなく愛し合う家族を描いた良作だと思います。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-06-05 07:54:11) (良:4票) |
27.《ネタバレ》 家族の変化、とりわけ父親像の変化。昔なら成り立っていた家族の形が現代では成り立たなくなっている。(それは不満はありながらも、死別するまで夫に添い遂げた樹木希林と阿部寛との別れを選んだ真木よう子の対比に象徴される) そして昔よりも、家庭を持たない個人を許容する事になった社会。 それらを、肯定も否定もすることなく、ただ今ある現実として描き続ける。 是枝監督の映画において「歩く」という行為は大きな意味を持つ。一人で歩くか、誰かと一緒に歩くか、またその時の相手との距離感、歩き方など。 それはそのまま人物の心情、状況、他者との関係性を表す。 今作においても、冒頭一人で歩いていた道を終盤息子と歩く阿部寛。それぞれのシーンのカットは同じアングルから捉えられる。遊具を見るショットも反復して映される。しかし、阿部寛の思いや視点は最初のそれとは全く変わっている。それは、子供の視点から親の視点への変化ともとれる。 食事のシーンにおいては、家族全員が椅子に座り、食卓を囲むシーンはない。ここにも家族の形の変化が見て取れる。そしてうどんを食べるシーンでは、阿部寛は真木よう子の方を向いているが、その反対はない。それは元夫婦の心の距離感、心の向きを表しているように見える。 そして自分なりの夢の形(宝くじ)を、息子に託す父親。 台風という不可逆的で否応なく巻き込まれ、いつの間にか過ぎ去っていくものを人生と置き換えるなら、嵐が過ぎ去った後は晴れるという考え方は、あまりにも都合がよすぎるのだろうか。 【ちゃじじ】さん [映画館(邦画)] 7点(2016-05-27 01:12:36) (良:3票) |
26.《ネタバレ》 阿部寛が良い。そして樹木希林さんが途轍もなく良い。だから終始心地が良い。 ずっと見ていたい親子関係でしたが、117分で終わってしまいましたか 残念、もの寂しい。 元嫁:キョウ子との関係などにしても まだ見ていたい気持ちもありましたが、映画とはいつまでもダラダラと続けてしまってはいけない これはこれでちょうど良いとこでのフェイドアウトになっていたかと思えます。 くたびれた先輩相手に突き放すことなく それが当たり前のように寄り添う心優しい後輩役の池松壮亮クンも良い味出してた。 総じて、懐に余裕が無い家族のお話であり、一万円の大きさやありがたさが分かる真っ当な庶民的観察映画のその代表。 お互いにぼそっと囁く日常会話が多い中、台詞がほぼ完璧に聞き取れ何の不自由も無かった事がまた素晴らしい。 是枝監督作品で阿部寛が樹木希林の息子という設定は2008年の《歩いても 歩いても》に続く第二章。 あれもよかったのですが、これも良い。だが、もう第三章は実現不可能となってしまいましたね 阿部寛と樹木希林さん、複数回に渡って良い親子コンビだった。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2018-10-24 21:33:12) (良:2票) |
25.《ネタバレ》 いいね。と言うボタンがあるなら押したくなるような映画。 皆、日常会話が上手すぎるという不自然になりそうだが実に自然。 阿部寛はプライドを捨てられず見栄っ張りでどうしようもないヤツだが どこか憎めない良さがある。池松壮亮も良い距離感で描かれて居る。 最後のシーンで子供が「宝くじかと思った」と言うシーンが何か好きだ。 【デミトリ】さん [DVD(邦画)] 6点(2017-04-27 00:28:41) (良:2票) |
24.観終わったあと、少しだけ元気が出た。 僕は23歳の大学生。4年間大学に通ったけど、友達はあまりできず、サークルにも入らず、勉強も適当にやり過ごしてきた。周りの人たちの真似をしながら続けたしょぼい就職活動の末、なんとかとある会社から内定を頂いたものの、なんか自分の人生が気に食わなくて、卒論を書かずに留年し、現在休学中。絶賛親の脛齧り中のダメ人間だ。 そんな自分に、この映画は「ダメでも生きていて良いんだよ」と優しく微笑みかけてくれたような気がした。とりあえずは生きてれば良いんだよ、と。今の自分のために作られたんじゃないかと思うくらいバッチリとハマった。 映画の中で、ダメダメな阿部寛を樹木希林が温かい心で包み込むというような親子関係が描かれているが、ちょうどこの映画そのものが樹木希林で、観ている僕が阿部寛になっている感じだった。不思議な感じだった。でも、そんな感じを味わったのは僕だけじゃないと思う。僕以外にもダメ人間はいっぱいいるはずだ。いっぱいいてほしい。そして、その全員がこれからちょっとずつ幸せになってほしい。なんとなく僕も頑張ろうと思った。 【Y-300】さん [映画館(邦画)] 8点(2016-06-16 00:14:50) (良:2票) |
23.《ネタバレ》 近年の是枝監督作品はかつての小津監督の映画を彷彿させます。共通していることは、「家族」がテーマであることはもちろんですが、特にその時代を象徴する家族の姿を適格に、少しの哀愁を以て描いていること。本作で言うなら、もはや珍しくもないバツイチ 、低収入の中年男、ダンナより稼ぐ女性などは、今よりもむしろ何十年か経ってから、あの当時はこんな家庭が多かったなあ、としみじみ感じさせるような、そんな予感がするのです。 阿部寛の小悪党のようでもあるが、まったく憎めない魅力的なキャラを含めて、登場人物全員、人生の成功者ではないが人間味のある描き方をされていて、それはとても好感が持てました。 人生にも「台風」があるとすれば、それはたぶん離婚だったり死別であったりします。(要するにあまりよい出来事ではないということ) 台風の最中、深い海の底に潜むタコの姿は、彼が今人生のどん底であることを示唆しています。でも台風一過に覗いた晴れ間は明るくて、暗闇を抜けた先に見えた一筋の光明 (アカルイミライ) にも見えました。 彼は父親になれなかったのではなくて、愛はあったがお金が足りなくて父親稼業に失敗しただけ。だから彼のために一言だけ言わせてもらおう。「失敗も、一度は許そう、父親稼業」 ・・どうか彼の第二、、いや第三の人生に幸あれ。 【タケノコ】さん [映画館(邦画)] 7点(2016-06-03 23:54:05) (良:2票) |
22.いつものクオリティを期待して早速見に行ったけど、 奇跡、そして父になる、海街〜の完成度と比べると一段階落ちる出来栄え。 いつもはっとする映像の美しさに出会うのに、今回はそれが見られなかったのが残念だった。 とは言っても、じっくり映画の世界を堪能させてはくれるところはさすが是枝さん。 【aimihcimuim】さん [映画館(邦画)] 7点(2016-05-22 23:42:29) (良:1票) |
21.《ネタバレ》 女房に逃げられ、養育費も滞りがちなダメ男の何処にでもありそうな話なんですけど、この映画は好きです。 人の子供には「なりたい大人になれる奴なんていない。」と冷めたこと言うのに、自分の子供には「やってみなきゃわからないじゃないか!」と激励するわかりやすい屑を阿部寛が好演してます。 【東京ロッキー】さん [インターネット(邦画)] 8点(2024-06-06 09:19:08) |
20.《ネタバレ》 是枝裕和監督による家族ドラマ。今作ではブンガクもどきのオイラ、人生の鬱憤をギャンブルにぶつける。そんな元夫に愛想をつかせるヨーコちゃん、冷めたオンナを好演。台風が来て、やむなくオイラの実家に一泊することになった元一家。ここからが、それぞれの本音が滲み出る是枝タイム。ちょっととぼけながら深~いコトバをこぼすキリンお母ちゃん。それでも戻らねえ元夫婦仲。風雨が強まる中、近所の公園のタコの中で全てが終わったと悟り、思わずちょちょ切れちまうオイラ。「歩いても歩いても」に比べてちょっと説教クサさはあるが、中身に深さがある。良作。 【獅子-平常心】さん [DVD(邦画)] 7点(2024-01-21 05:33:20) |
19.《ネタバレ》 是枝監督作品の中でも好きな作品だ。 何より、小説家志望のくたびれた男(阿部寛)に共感できるし、 彼の家族(樹木希林もまた!)の話す台詞が、とても心地よく刺さる。 いつもの是枝時間の中に、今回は台風という時間が入ってる。 「歩いても歩いても」と似てる映画ではあるが、両作とも好きだ。 リリーフランキーもいて、是枝組、真骨頂である。 【トント】さん [DVD(邦画)] 8点(2021-01-30 22:19:14) |
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18.「人生こんなハズじゃなかった」「人生どこで間違えたんだろう」というのは中高年になれば多くの人間が考える事ではあろうがその心情への掘り下げが弱い。監督自身はきっと理想的な人生を送っているので、脚本に盛り込めなかったのだろうか。結果、是枝にしてはホノボノというか毒がない作品になってしまったような。阿部寛の演技もややコミカルでシリアスさに欠け、人生に苦悩しているようにも見えないので少々ミスキャストな感じはする。ラストで台風に「依存」するのも安直かな。郊外の団地暮らしの盛衰(高齢化した現状や賃貸と分譲の格差等々)はよく描けていたとは思う。どうやら舞台となった清瀬の団地は是枝が住んでいた団地らしいので実体験に基づく土地勘等々があったのだろうが。 |
17.歩き方まで研究しているのでしょうね、もとモデルと思えないたらたらの歩き方がいい。 「歩いても、歩いても」と同じ役名「良多」で出演する阿部寛さん、樹木希林さんとの掛け合いが絶妙ですばらしいです。 親戚か近所さんになったかのような感覚でこの家族を追いたくなる。 家族のかたちは色々あれど、幸せになってほしい。 【HRM36】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-01-13 08:21:33) |
16.部分部分で印象的なところもあるけど、全体的なトーンがちょっとゆるい。 他の監督の作品なら、「あーそんな感じなのね」で終わると思うけど、是枝監督にはもっと深いテーマの作品を期待してしまう。 【くろゆり】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-01-12 08:59:19) |
15.市井の人のありふれた日常生活の一部を切り取りましたという感じ。ドラマチックな展開は何もなく、そのへんの家庭にカメラを据えたらこういう映像が撮れるだろうと思わせるほどリアル。それがかえってあざとい感じもしますが。 老いた親とか離婚とか子どもの養育とか、あるいは不安定かつ低収入な職業による生活苦とか、誰もが直面するかもしれない、しかも事態は悪くなる一方の問題を俎上に乗せているわけですが、危なっかしさを漂わせつつ暗くならないところがいい。「こういうもんだよね」と達観しながら見るのが正解かもしれません。 まったく余談ながら、何も気にせずに電車やバスに乗り、喫茶店で人と「密接」し、人が「密集」する競艇場で騒ぎ、台風によって「密閉」された狭い団地で語らう等々のシーンは、たいへんうらやましく見えます。こんな「ありふれた日常生活」が早く戻ってくればいいなと。 【眉山】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2020-04-02 04:09:44) |
14.主人公はダメな男でたいした成長もなく、大きな出来事も起こらない。けどセリフの一つひとつがかなり良かった。台風の夜の元夫婦、老いた母と息子、義母と嫁の会話が素晴らしかった。 【noji】さん [インターネット(邦画)] 7点(2020-02-23 19:35:58) |
13.《ネタバレ》 くず男を演じるのがうまい阿部寛ですが、くずすぎて腹が立ちますね。 主人公に全然感情移入できん!!! 見終わって、なんだったんだろ、この映画と思ってしまった。 最後まで主人公変わってないじゃないか。 【あきちゃ】さん [DVD(邦画)] 3点(2019-10-16 15:40:28) |
12.《ネタバレ》 他の是枝作品に比べればやや質が落ちる程度だけど、淡々としながらも何となく最後まで見てしまう。昭和のような家庭像は崩壊し、個人主義が強くなっていくシビアな現代社会の中で、糸が切れかけの凧のような関係の家族の形を見つめ直す。夢ばかり見てセコいことばかりしているダメンズに、どこか達観している母、愛想を尽かした元妻、双方で惑う息子が台風で一夜を過ごす窮屈で微妙な空気感。それぞれが互いの本音に向き合い、現状を受け入れていく。幸せになるには何かを諦めるしかない。状況が改善されるわけもなく、いつか彼は一人ぼっちになっていくだろう。だが自分で選んだ人生であり、どうにもならないことだってある。そういう哀愁を漂わせながらも、少しだけ前向きになれるようなラストだった。 |
11.《ネタバレ》 この作品の問題は、実は母親役に樹木希林を充ててしまったことではないかと思う。物語の構造からいえば、この母親は、背後にふっと潜んでそれでいて気がつけば各人物へのいろんな影響を感じさせるような、そんな役回りなはずなんだけど、画面登場時の求心力があまりにも強力であるため、むしろ彼女が主役であるかのようなパワーバランスになっている。それについては、小林聡美の別方向への求心力という偶然要素によって何とか破綻は免れているが、聡美さんは聡美さんであまりにも芸達者なので、あれ以上出番が増えていたらえらいことになっていただろう。●で、一番見たいのはやっぱり、阿部寛と真木よう子のやりとりなんですよ。別れた後の夫婦という設定ならではの、実に微妙な距離感、そして愛憎。ところがそれにたどり着くまでが異様に長い。妹夫婦が帰って「一家四人」になってからは、外に襲来する嵐のごとく、心理の綾が飛び交う怒濤のハイレベルドラマを展開してくれるのですが、なぜそれまでがああまで長かったのか、意味が分かりません。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2019-01-10 01:53:43) |
10.とりあえずは「やっぱり男ってダメだねえ」というオハナシで、爺ちゃんもダメで親父も見ての通りダメダメなので、たぶん息子もダメになっちゃうんだろう、と、そこまで悲観的になるかどうかはともかくとして。 しかし本作がそういうアリガチな型にはまった作品に収まらないのは、一つには、「団地」を舞台としている点にあるんでしょう。なんとも中途半端な、しかし懐かしさを伴う、この雰囲気。 とは言え、別に私自身は団地に住んでた訳じゃなくって、もっとゴミゴミしたところに住んでたんですが・・・かつて高度経済成長ってのがあって、その後社会にいろいろと歪みも出てきて。最近、子供と話している時に、「昔はその辺の川もドロドロに汚れてたけど、随分キレイになったね」なんて事を言ってる自分に驚くことがある。あれ、我々が子どもの頃、大人から聞かされる話ってのは「この川も昔は綺麗で泳げたんだけどね」ってな話だったのに、これじゃ真逆やんか。「昔は綺麗だった」と懐かしむかのように、「昔はキタナかった」なんてことを若干の郷愁を込めて語っている自分。 団地というところも、かつてはそれなりに近代的で、それなりに自然ではない環境で、でもそこに生まれ育った人々にとっては懐かしい場所なんだなあ。そこにある草木も多かれ少なかれ人工的に配置されたものだけど、そこに懐かしさが込められた時にある種の美が宿り、映画もその美を控えめに掬い取ろうとする。 で、人工的な街、古びつつある街だけど、台風の最中に公園の遊具に潜り込む、ちょっとしたファンタジーがあったり。 最初から最後まで主人公に成長もみられないし、成長云々という年齢でもないんだろうけれど、肯定感がそっと舞い降りたようなラストが、いいですね。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-01-06 16:42:21) |
9.子供がいて、それでも夫婦が別れて、そういった状況のありえる風景。 幸せでも不幸でもなく、いやちょっと不幸だけど夢を持っている、ということか。 宝くじは300円で「夢」を買っている、という表現があった。これがこの世界の真実かも。つまりはその夢無しでは生きにくい。でも未来はその延長線上には無いかもしれない。 【simple】さん [インターネット(邦画)] 6点(2018-10-27 20:05:18) |