1.《ネタバレ》 ヒロインとの出会いから婚約までを描いた冒頭部分も、良質なラブコメ映画として、充分に楽しめる出来栄えですね。
けれど、この作品の真骨頂は、主人公が少年サッカーチームの監督に指名されてからの展開にこそあると思います。
「これって、もしかして……」という予感に応えてくれるかのように、チームの選手となった子供達が、超人的な身体能力で、大活躍!
そんなの全然リアルじゃないというツッコミを、完全にファンタジーな動きで吹き飛ばしてくれる様は、実に痛快です。
一刻も早く敗退してくれるように、という主人公の内なる願いに反して、チームが快進撃を続けていくのが、もう可笑しくって仕方ないんですよね。
あの手この手で監督自らチームを妨害して、子供達に薬を飲ませたり、デタラメな采配をしたり、気弱で活躍など出来そうもない子をキーパーに抜擢してみせたりするも、それが結果的に勝利に繋がってしまう不条理、もう最高です。
そして、この映画の秀逸なところは、そんな皮肉なコメディ映画というだけで終わらずに、もう一歩踏み込んだ内容を見せてくれた事にあると思います。
中盤以降、主人公の監督と、選手となる子供達の間に、家族のような絆が芽生えていく。
それを軽いタッチで、けれども大事な部分は押さえた上で描いてくれるのだから、観客の自分としても、気が付けばチームの敗北よりも勝利を願うようになるんです。
そんな願いを叶えてくれるかのように、とうとう主人公が自らの結婚よりも「この子達を勝たせたい」という想いを優先させてくれるシーンには、もう拍手喝采。
本気でチームの優勝を願って、応援させられる事になりました。
登場人物も魅力的で、主人公とヒロインだけでなく、恋敵役となる女教師と、新婦の幼馴染の男性なども良い味を出しているのですが、やはり何と言っても子供達のキャラクターが素晴らしい。
特にお気に入りなのは、キーパー役の二人。
小柄で気の強いテイルボーンは、途中でスタメンの座を剥奪されるも、さながらマネージャーのような立ち位置に収まって、ゴールの度に監督に抱き付いたりハイタッチしたりして喜びを表してくれるのが可愛いし、気弱な秘密兵器ダリクが魅せるスーパーセーブの数々は、観ているこちらの心をも鷲掴みにしてくれます。
ストリートチルドレンである選手達の塒も、妙に童心を刺激するというか、ちょっと住んでみたいなと思わせるような魅力ある造形だったりして、とにかくもう何もかもが好みな映画なんですよね。
決勝戦の前夜、主人公が子供達みんなと寄り添うように寝そべって、一緒に空を見上げるワンカットなんて、溜息が零れちゃうくらいに素敵。
面白いとか、笑ったとか、泣いたとか、そういった感情よりも何よりも「この映画、好きだな」という想いを強く抱かせてくれる。
そんな、特別な映画です。