1.いま「日本が世界に誇る」という冠言葉は氾濫していて手垢で黒光りしているほどだが、本当に日本にしかない、かつ誇れるものがあるとすればそれはまず築地市場かもしれない。この映画の主人公格を務めるのは600軒の仲卸業者。彼らは7社の卸業者から魚を買い付け、小売り業者や料理店に売る。彼ら目利きのプロは世界の海を知り、料理を知り、その「仲」を取り持つ魚を選ぶ。
登場する150人の中で市場で働く人々はみな普通のおっさんやにいちゃん(一人ねえちゃんと一部おばさん)だ。ただとんでもなく格好良い。仕事に誇りを持ち仲間を愛し日々自分の目に賭ける、黄金のように光り輝く普通の人々。「市場」とは場所のことではなく彼らが居る状態を呼ぶのだろう。
この映画は「ドキュメンタリー映画が苦手な人にもおすすめ」とよく書かれていて、たしかに映像は美しく、音楽は効果的。元々むしろドキュメンタリー好きな僕にとっては少々作りすぎな感じもしたが、なにせ内容は本物なので文句はない。