2.《ネタバレ》 「渥美清の魅力は寅さんだけにあらず」常々から言いまくってる私としては、今年1月から始まってる神田・神保町シアター「俳優・渥美清:「寅さん」だけじゃない映画人生」この企画が全くもって我が意を得たりでジャストフィットなラインナップなんですよ。喜劇役者であった彼だからもちろん人情劇・喜劇は良い。ただ私としましてはそういった枷に組み込まれる前、人間の「業」みたいな、暗い面を演じていた渥美清に物凄い魅力を感じ「寅さん休んで、極悪非道の大悪人とか性犯罪者とか詐欺師みたいな役柄、やってくんないかな」と思ってました(ファンの皆様、本当にすみません)。その位渥美清、という役者には人間が持つ心情の振幅を演じ分けられる技量というのかポテンシャルがあったんだ、とも一回力説いたします。(と同時に最後まで寅さんに徹し、彼の演技の「闇」を見せる機会はついぞなかった事も賞賛に値します) 初めての主演作品となったこの作品に関していえば、テレビ界(この当時テレビは生放送が主流だった)に慣れてるからか、演技が急ぎすぎというのか「間」の取り方が後年の名人芸までは至っておらずそこがマイナス点。但し「人情味溢れる」スリ役という彼の役柄は喜劇的なペースにはあるものの、目の奥に見える漆黒というのか闇というのか、という雰囲気が早くも見受けられそこはポイント。それ以上にもっと大事なのはその後邦画界を支える「国民的兄妹(今回神保町シアターのパンフより)」倍賞千恵子との初?顔合わせ。個人的には三木のり平・田中春夫・森川信・清川虹子のフォローもうれしいが、やっぱり寅とさくらだよね、この場合。