3.先ず、本作の主演はブラッド・ピットではない。主演は二人の女優である。ついでに、別に名作でも大作でもない。現在の生活に倦怠した二人の女が刺激を求めて火遊びを夢見る狂騒劇で、その二人の女の夫であり恋人である男二人が振り回されるという、ワイド・ショー的なストーリーである。それを踏まえて見れば、糞味噌に言われる程の駄作ではない。確かにプロットに新し味はないし、先読みの出来る作品ではあるが、先読み出来る可笑しさが本作の持ち味でもある。登場する役者も、それぞれに好い味を出しているし、本作の出だしのコザックの、初恋の男との妄想に耽る表情から所帯染みた母親への顔へと一変する演技は見事である。ただ、ブラッド・ファンとしては、ピット=エリオットの個展のシーンには、製作サイドの作為が感じられてならない。もっとも、当時のピット(今も、かもしれないが)は「綺麗な自分」に対して屈折した感情を持っていたのは事実だが、デニス・ホッパーを連呼するのはやり過ぎだろう。ピットに関して言えば、この後に来る出世作である「リバー・ランズ・スルー・イット」のポール役より、「12モンキーズ」のジェフリー役の素地の方が覗けるのが興味深い。終始一貫、女のワイド・ショー的な狂騒劇で通しただけに、スクリーン向けというより、TV向けだと思うが、ビデオ映画を観て、久方振りにゲラゲラ笑った。というより、本作のような作品を観て笑えるような年齢のなった、というべきか。無論、男の側の意見は、また違うものだろうし、プロットは薄いものだが、少なくとも演じている役者のバランスは良く、言われる程の失敗作だとは、思わない。