1.《ネタバレ》 二人の出会いの夜、飲み会を終え具合の悪い佐藤健は電車へと向い、土屋太鳳は二次会に付き合うため後景の中へ消える。
が、観る側の期待通り駆け足の音が次第に大きくなり、土屋が再び背後に現れる。
一方で、記憶を取り戻そうと雨の中佐藤のアパートを訪ねる車椅子の土屋のシーンでは、
倒れてもがく彼女のショットに、佐藤の乗るバイクの音が響いてくる。
こうしたオフの音響の活用は、必ず戻ってきてくれる互いの存在感というものを強くアピールせずにはおかない。
佐藤が撮り貯める携帯動画の画面も、語りかける対象が画面上不在であるゆえにエモーションの喚起力を増すのだろう。
八年の経過を点描してゆく木々の芽吹きや開花、落ち葉。
高台や海辺の校庭、橋梁などロケーションも豊かでいい。
北村一輝や中村ゆりらの善良な助演もさりげなく泣かせる。
ありがちなBGM垂れ流しもなく、終始控えめに徹しているのも美点である。