1.《ネタバレ》 ねえ、この入れ墨の意味を知ってる?鯉はね、滝を登り切ると龍になるの――。1954年、まだ敗戦の影響が色濃く残る大都市、大阪。罪を犯し、この地の刑務所へと服役していた元アメリカ軍人ニックは、そこでヤクザ組織の幹部を務める大物、清と出会う。身寄りもなく、アメリカ軍からも見捨てられたニックは、出所後、この清の組織に目を掛けてもらうように。米兵からの銃の横流し、売春組織の用心棒、地下カジノの運営など、裏の仕事で次第に頭角を現すニック。大きな仕事を幾つも成功させた彼は、やがて親分と盃を交わし義兄弟の契りを交わすまでになるのだった――。へまを犯し何本か指を失いながらもすっかり闇の世界の住人となったニックは、そこで清の妹美由と恋仲となる。背中には同じ鯉の入れ墨。一生一緒に居ようと誓いあうニックと美由。当初は交際に反対していた清もいつしか二人のことを認めてくれるように。だが、古いしきたりを重んじる親分の組織運営に反発した若頭の裏切りによって、二人は哀しい運命に翻弄されてしまう……。敗戦後の混乱した大阪を舞台に、アメリカ人でありながらもヤクザ組織の幹部にまで上り詰めた男の栄光と挫折を描いたクライム・ドラマ。主演を務めるのは、ハリウッドのオスカー俳優ジャレッド・レト。ヤクザ組織の幹部を迫力たっぷりに演じるのは、浅野忠信や椎名桔平と言う豪華な面々。内容的には日本のVシネマでもお馴染みのいわゆる仁侠ものなのですが、その手の作品にありがちな日本的泥臭さとハリウッドのスタイリッシュさがいい感じで中和されて、なかなか見応えのある佳品に仕上がっていましたね、これ。完全アメリカ資本の映画でありながら、ヘンテコ日本描写もほとんどなく、当時の大阪の猥雑な空気もけっこう忠実に再現されていたと思います。何より、日本語の台詞に全く違和感がなく、ちゃんとヤクザっぽい怒鳴り方なのがいい。浅野忠信も椎名桔平もけっこう渋くて格好良かったですし。主人公とヒロインとの悲恋もベタながら、最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。ただ、脚本の細かいところに「?」が多いのが惜しい。特に主人公を脅す元戦友のエピソードはバッサリ切っても良かったんじゃ?とはいえ、アメリカ側から描かれたヤクザドラマとしてはなかなかよく出来ていたと思います。ちなみに、安田大サーカスのヒロくんがけっこう重要な役回りで出ていたことも最後に記しておきます(まかり間違ってクロちゃんにならなくてホント良かった!笑)。