6.コレは非常に良い“タワーリング・インフェルノ+ドウェイン・ジョンソン”映画だ。想定外の大満足感に高揚した。
どうせ、例よって超高層ビルで大火災が起きて、我らがロック様が超人的に救出劇を繰り広げるのだろうと高を括っていた。そして、その通りの映画だった。
まったく想定通りのストーリーテリングだったにも関わらず、想定外の満足感を得られたことが凄いことだと思う。
言うなれば、この手の“ジャンル映画”を好んで観ようとする輩は、映画的に新鮮な驚きなど端から求めていない。
ただ、過去の映画遍歴を踏まえて、押さえておいてほしい“娯楽ポイント”が幾つかあって、そのポイントを幾つ稼がせてくれるか、興味はそこに尽きる。
もちろん、その娯楽ポイントは、人それぞれなのだが、個人的には、この手の娯楽映画に必要な要素を漏れなく網羅した「お手本」のような作品だったと思う。
監督のローソン・マーシャル・サーバーはきっと自他ともに認める“ボンクラ映画ファン”なのだろう。
随所に過去の数多の傑作映画から引用された要素が散りばめられていて、こちらも一ボンクラ映画ファンとしてニヤニヤしっぱなしだった。
香港を舞台にした「燃えよドラゴン」オマージュは言わずもがな、「ダイ・ハード」から「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」に至るまで古今東西のあらゆるアクションエンターテイメント映画を彷彿とさせる数々のシーンは、決して安直な“パクリ”というわけではなく、愛情と尊敬をもって演出し表現されていたと思う。
だからこそ、ひたすらに楽しく、興奮することができた。
そして、やはりドウェイン・ジョンソンの圧倒的な存在感も無視できない。
何かのインタビューでも彼自身が語っていたが、ドウェイン・ジョンソンがドウェイン・ジョンソンであり続けることを貫き通したからこそ、このプロレスラー出身の俳優は、ハリウッドというバトルロワイヤルの中で勝ち残り、アクションスターの地位を確立したのだと思う。
様々な映画で全く違う人間を演じているのに、彼の左半身にはルーツであるサモアを象徴するタトゥーが刻み込まれている。普通に考えれば、それは鑑賞者にとって違和感であり、映画俳優にとってデメリットでしかない。
だが、世界中の多くの映画ファンはその象徴であるタトゥーも含めて、ドウェイン・ジョンソンという俳優を受け入れ、愛している。もはや、ドウェイン・ジョンソン主演映画であのタトゥーを見られなければ、逆に物足りなさすら感じてしまうと思う。
それこそが、彼が「自分」というアイデンティティを貫き通した証であろう。
そういったアクション俳優の存在感も含めて、このパニックアクション映画は「ザ・王道」だと思える。素晴らしい。
あ、そうだ、“粘着テープ”を買いに行かなくちゃ。