4.これは、落語の滑稽話(こっけいばなし)みたいな映画でしたね。
滑稽話とは、他人の馬鹿馬鹿しい行いや、失敗の顛末を笑い話にする演目のこと。
落語と違うのは「落ちが無い」ことで、映画で言えば、感動のハッピーエンドでも、恐怖のバッドエンドでもない。
ましてや、どんでん返しなど有る訳もない「なるようになる」物語です。
じゃあ、何が笑えるのか?
それは語られる出来事が、地上の英知を気取る我々人間の馬鹿っぽさ=霊長類の“馬鹿あるある”だからです。
劇中の出来事は「有りそうにないけれど、無いとは言い切れない話」であればあるほど妙に笑える訳です。
例えば、やらかして謹慎くらう芸能人とか、うっかり発言でSNS大炎上とか、盗撮趣味で逮捕される教師などなど・・・
馬鹿な本人には悲劇だけれど、客観的に見れば喜劇。
「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」で起きる失敗も「有りそうにないけれど、無いとは言い切れない話」。
ポイントは、滑稽話はあくまで、笑う為の「お話」と知って聴くから笑えるという点で、これを真剣に受け取ったら笑えない。
(コメディでは無いので、出来事はリアルに描写され笑わせる為の露骨な演出はされていない)
英語圏の人なら、原題“The Death of Dick Long”で、笑い話だと察しがつくはず。
スラングに疎(うと)い人でも、劇中で説明されて気がつき、わかってしまえば、アメリカ版ポスターなんて爆笑ものです。
日本人には、映画の事件がピンと来ないかも知れませんね。
でも、映画ファンなら「羊」の例を知ってるはず。映画のタイトルはあえて、沈黙(笑)
人間だから、馬鹿やって大失敗することもあるし、それを誤魔化したくなる弱さもある。
厳しく責める人もいるし、発覚の恐怖や、辛さから逃げたくもなる。
その結果、失うものも沢山ある・・・でも
わかってくれる友だちもいて、自分がわかってやることも出来る。
自分なりに、自分らしく生きていく道もきっとある・・・
正しく完璧に生きることを強要され、些細なミスで吊るし上げられ脱落してしまう。
そんな社会で生きてると
こういう映画を観て、何故か、ほっとするのだ。
評価は6点だけど、好きな映画でした。