5.題名の「幸福路」とは戦後に拡大した台北大都市圏にある通りの名前だそうで、ストリートビューで見てみるとけっこう賑やかな街らしい。
自分としては全体的に「おもひでぽろぽろ」(1991)のイメージかと思ったが、台湾現代史が背景になっているため重みがあり、また「先住民族」(字幕)やアメリカ人とのハーフといった登場人物の多様性も出している。1975年頃は台湾にも米軍がいたということだ。
簡単に海外へ移住するなどは基礎的な行動力が日本人と違うのか、または国境のハードルを低く感じているのかと思ったが、結局最後は主人公も自分の生きるべき国を改めて選ぶ機会が生じたようだった。
物語に関しては、幸福とは何かという問題提起に始まり、当初は食う・寝るだけだったのが時代の変化や主人公の成長で変わっていく。本人としては王子様→悪と戦う→社会正義と発想が展開したらしいが早々に挫折し、苦しまぎれにアメリカに渡ってみたが満足のいく結果でもない。アジア人なら誰でもいいのだろうという発言はかなり攻撃的だったが、これは主人公の方こそ白人なら誰でもいい(王子様だから)と思っていたことの裏返しではないか。意外にも最後まで残ったこだわりが王子様だったようである。
迷っていたが最後には、かつてお姫様のように思っていた親友の現在の姿に感化され、不惑を前にして、自分として最も根源的と思えるものを選んだようだった。離婚したら両親が悲しむと夫には言われたが、実際はそうでもなかったらしく、本人も自分の決断に確信が持てたようなのは他人事ながら嬉しい。
ただしこれは終着点ではなく新たな出発点であって、まだまだ主人公には先がある。ラストは「悲情城市」ほど暗澹とした感じではなかったが(最後は2014年頃)、これから世界がどう動くのかわからない不透明さはやはりある。しかし主人公もその都度自分の目で見て考えて、自分なりの幸福を一生追求し続けろという年長者の教えを自分のものにしていたようだった。
登場人物の中では、洋風美女の親友が和み系の人で好きだ。角を立てずに丸く収めようとする穏やかな人物のようだったが、その娘はあくまで筋を通そうとする強気の人物だったらしい。また幼い息子が姉を描いた絵には笑わされた。
ほかガッチャマンの絵や「永遠的朋友」といった子ども同士の素朴な友情、また家族同士が見せる自然な感情には少し泣かされた。