2.《ネタバレ》 現代版脱力系忍者コメディを必殺仕事人風に~吹き矢を添えて~。小洒落たレストランのメニューみたいですが、コンセプトはこんな感じかと。ただし悪代官や殿様は現代では官公庁に該当するようで、悪事が生々しくていけません。風刺を超えて、体制批判・政治思想すら感じさせます。シュール&ナンセンスコメディの出来は悪くないので、もっと素直に楽しみたかったというのが本音です。雑味がエグいのです。プロパガンダにしても偏り過ぎでしょう。
復讐譚としては因果応報のバランスが悪いと感じました。ヤリチン男への制裁は兎も角も、当局への復讐は明らかにやり過ぎです。司法の裁きや社会的制裁が望めないから裏稼業の出番なわけで、このまま放っておいても彼らは失脚しました。それでもなお彼らを鞭打つ、いや吹き矢を突き刺すのであれば、今流行の(?)『倍返し』でしょう。復讐は等価報復が基本。超過報復が肯定されるのは、理不尽且つ甚大な被害の場合に限定されます。皆殺しって八つ墓村か。まあ実際のところ全員死んではいないでしょうが、脱力系コメディとリベンジものの相性がそもそも良くないのだと思います。
次にタイトルについて。忍者を表す擬音は『ニンニン』と相場が決まっています。ただこれだと著作権の問題が発生するかもしれませんし、不思議なことに伊東四郎氏の顔もチラつきます。となると次点としてサササやヒタヒタ等が忍者っぽい擬音候補として挙げられそうですが、本作ではシュシュシュが採用されていました。これは忍者というより吹き矢の擬音。そう、本作では忍者刀や手裏剣、クナイや撒菱等名だたる人気忍者武器を差し置いて「吹き矢」がフォーカスされていました。これまた通好みな選択。しかしよくよく考えてみれば、自作し易い、携帯し易い、金属探知機に引っ掛からない等、武器としての「吹き矢」の優秀さが際立ちます。殺傷力こそ毒次第でしょうが、自然界に猛毒は溢れていますし。本作を観たらきっとエア吹き矢芸の家元こと、コサキンの2人も泣いて喜ぶんじゃないでしょうか。