1.《ネタバレ》 一度はプレイしている人は少なくないのではないかという『テトリス』。
シンプルながらゲームボーイでかなり熱中していた世代の一人だ。
それを如何に映画化するともなると、ゲーム単体にストーリーを付けるのではなく、
冷戦末期の旧ソ連で誕生したゲームのライセンス争奪戦というユニークな造り。
本作を見て思い出したのは、
『アルゴ』を彷彿とさせるポリティカル・サスペンスの側面と、
『AIR/エア』で描かれたビジネス映画としての側面だ。
(どちらもベン・アフレック監督作品で、前者で幾分影響を受けていたのではないか)。
実話と言っても、展開を盛り上げるためにかなり誇張している箇所があり、
主人公の家庭が崩壊直前までに追い詰められたり、開発者が起こしたボヤ騒ぎ、
終盤のカーチェイスからのソ連脱出劇はほぼ創作だろう。
最終的に大成功を収めるのは分かるのだが、
駆け引きに、裏切りに、友情に、期待に、失望に、信頼に、と上手く絡まり合い、
ある種のフィクションとして見るならラストまで目が離せなかった。
時折、挟み込まれるゲーム的演出が心憎く、任天堂が深く関わったこともあり、日本への目配せも忘れない。
監視と密告とハニートラップと賄賂が当たり前のソ連体制側においても、
国家の利益のために主人公に手を貸す誠実な者、国家すら信用せず私腹を肥やしたい腐敗した者、
それぞれの思惑があって、いつか国が崩壊するのも分かっている。
共産主義国の恐さと閉塞感がひしひし伝わるも、一つのゲームが歴史を変えた壮大な物語に仕上がっていた。