3.《ネタバレ》 中学の頃に南総里見八犬伝の原文を読もうと試みた(当然挫折した)程度には八犬伝好きな人間です。本作がいわゆる「正典」ではなく山田風太郎の小説がベースだとは知らずに鑑賞しました。
なので「あれ?いくら端折ってるとはいえこんな展開だったっけ?馬琴本人が出てるのに原作捻じ曲げてない??」となることが何度かありました。
八犬士達は美形揃いで並べば華やかではあったけど、似たようなビジュアルであまり特徴が感じられず、これなら昔の八犬伝の方が個性豊かで楽しかったなあ。最低でも犬江親兵衛は子どもにしてくれればわかりやすかったのに。
犬士達が持つ珠の字の意味を解説しないのも釈然としなかった。この珠こそが八犬士の個性を表しているのに。
本作においては「実」の部分が重要で「虚」の部分はお飾りにしか過ぎないということか。
一方、「実」のパートはなかなか見応えがありました。
馬琴と北斎の毎度のやり取りは楽しいし、鶴屋南北との問答は現代の創作ものにも通ずる真理を突いていると思いました。
印象的だったのは妻の最期。ずっと夫に悪態をついていたけれど、夫と嫁がつきっきりでいることはやはり許せなかったのかと想像するとゾワッとした。
全体的には、楽しみにしていた八犬伝の物語パートに少なからずがっかりしたので評価は低めです。
「虚」と「実」が連動してうまいこと絡み合っていたらもう少し引き込まれたのでしょうが、そういう感じにも見えずちょっと残念でした。