23.《ネタバレ》 話が陰惨すぎて万人には全くおすすめできないけど、
やっぱり自分、チャン・イーモウ監督の初期作品好きなんだよな~。
リマスター化で現在(2025.12〜)リバイバル公開中。
まず画面に流れる光の表現:反射や逆光、斜光を活用したショットと
それを引き立たせる色の使い方。初鑑賞はウン十年前のビデオだったので
ほとんど感じなかった、抑圧からの解放を意味する「光」と、古い価値観や
道徳、悪い因習等を映し出す「闇」がスクリーンだとより映える。
合わせて原作では農村だった舞台を染物屋にしたオリジナル要素がまたいい。
後年「HERO(’02)」「LOVERS(’04)」で見受けられる色をモチーフにした
感情表現はこの頃から冴えている。中国映画界の検閲事情と、監督自身
まだ若手であったが為、どうしても隠喩や比喩に頼らざるを得ない苦肉の
策だったと思うのだけどそこが逆に観客の想像力を喚起させる効果がある。
もう一点、更に強烈な印象だったのは女優コン・リーの素晴らしさ。
彼の作品における「情念」を演じる事が出来たのは彼女だけだった
んだなぁ。チャン・ツィイーが及ばない(後釜で大変だっただろうに)
のは至極もっともな話。
ただ私が監督チャン・イーモウを評価できるのは女優コン・リーと
タッグを組んでいた「秋菊の物語('92)」まで。彼女との
関係性がマンネリになっていった事と合わせて、検閲等を
気にしない、名作家になった分なんか説明過多の感が
個人的には目につくんですよね。「これで観客は喜ぶよね」な感じ。
「初恋のきた道」「あの子を探して」('99)素敵な話なんだけど、ね。
今回のリバイバルは「赤いコーリャン('87)]、本作品と
「紅夢('92)」なので「初恋のきた道」しか知らないファンには
ぜひ鑑賞した上、陰鬱な気持ちで映画館を出てもらいたい。
ついでに極私的チャン・イーモウベストワン「秋菊の物語(’92)」、
リマスターお待ちしてます。 長文失礼しました。