29.冒頭から中盤にかけてはとても神話的である。「青春の殺人者」というわりには現代<近代>的な自己疎外感からくる青年の孤独や苦悩が感じられず、父子、母子のオイディプス的三角関係を軸とした普遍的な物語でありながら、妙に噛み合わない心理劇にただ座りの悪さだけが残った。しかし、中盤以降、物語は見事にひっくり返る。「青春の殺人者」とは、青春が殺人者ではなく、青春を殺人する、つまり青春こそが殺戮され終焉したことを描いた物語だったのだ。主人公は青年たる資格を十分に備えた人格でありながら、あまりにも無邪気に両親を殺害してしまう。その動機の弱さはまず確信的である。そして、両親を殺した主人公のその後の苦悩と行動のアンバランスさ、その薄っぺらさは、そのまま自己の希薄さに繋がっている。主人公の行動の破綻性は、作品そのものの破綻を綱渡りしながら、その破綻性こそがこの物語のモチーフだと思わざるを得ないのである。ヒロイン原田美枝子は、まさにその補助装置たる存在だ。彼女がどういう役割なのか、実は僕にもうまく捉えられなかったのだが、その訳の分からなさこそが彼女の重要な役割なのかもしれない。<原田美枝子はとても魅力的でしたね。あのイチジクを食べるシーンなどはかなりドキドキしました。> この作品は、もう30年近く前のものだし、感覚的にはもう古典的作品であることは否めない。しかし、この作品が意識的に描いた「青春の殺人」という水脈は、今もずっと繋がっている。もっとドライに、もっと軽やかにではあるが。そして、今や「青春」は全くの死語と化している。 【onomichi】さん 9点(2004-06-27 01:43:21) (良:3票) |
28.“親殺し”という序盤のの陰惨さ以上に、水谷豊演じる主人公の青年らしさというか、むしろ子供らしさ、嘘の無さみたいな所が印象深くて、純粋さを強く感じるし、強く共感できるから感動できる。自分の汚されたく無い部分を持ち、それを否定するものに敏感に反発する。そんな自分でも理解できないくらい強い衝動が発端となり親を殺してしまう。両親の死のあっけなさと、思っていた以上に変わらない日常。次第に湧き上がる実感とはうらはらに、自分が親を殺してまで守りたかったものすらも理解できてないし、父親への愛情すらも湧いてくる。全ては自分の弱さであることはどこかで分かってる。親は欲しい物を与えるくせに熱中すると奪おうとする。でも知っていた。そんな事は分かっていて与えてもらう事を選んでいた自分の弱さ。死にたくても死ぬ事すらままならない憶病さ。小さな虚栄心が崩れさった瞬間こそが青春の終わりなのかもしれない。演出も計算されてて配役も絶妙。原田美枝子も体の成熟さに似合わず子供っぽい顔が役にはまっていた。この作品の素晴らしさは言い出すとキリが無さそう。傑作。 【ハッシーふりかけ】さん [ビデオ(邦画)] 10点(2006-07-21 03:12:46) (良:2票) |
27.見終わった後、「もっと早く出会いたかった」と心から思った作品です。 水谷豊と原田美枝子のコンビが非常にせつないです。 それと、ゴダイゴの音楽が最高に素晴らしいです。(私の中では邦画では1番です) すぐに、この映画に使用されている作品である「新創世紀」を買ってしまいました! 【TM】さん [DVD(邦画)] 10点(2006-04-16 20:47:48) (良:2票) |
26.《ネタバレ》 長谷川和彦監督の2本の作品、正直、私はよく判りません。なのに世評は高いようで。結局のところ、私は映画というもの、あるいは映画ファンという人たちと、絶望的なまでに相性が悪いのではないかと思えてきてしまう。 どちらの作品も共通して、全くどこにも行き着かない。実際そういうのを描きたいんだろうとは思うものの、それの何が面白いのかピンとこないのです。 この作品の前半の親殺し。セリフ、状況設定、その他すべてが作為じみているように思えて、どうもゲンナリしてしまう。 だけど『太陽を盗んだ男』よりは取っ付き易いのは、自己破壊欲みたいなもの(しかも空振り気味)が作品のあちこちに表れていて、そういう部分に、同感というか、一種の普遍性が感じられるからだと思います。前半はどうかと思っていても、後半にはだんだん引き込まれていきます。市原悦子もスゴいんどけど、やっぱり何と言っても原田美枝子。いや前半にあの市原悦子がいたからこその原田美枝子かも知れないけれど、そこは仕方が無い。ひたすらイモっぽいんどけど、何かがありそうな。 女優を目指すお嬢さんが、脱いだら大女優になれますよ、と騙されて脱がされてるような。という風に騙されているのは私の方なんだろうけど、それもまた良し。 【鱗歌】さん [インターネット(邦画)] 6点(2021-11-28 15:17:33) (良:1票) |
25.《ネタバレ》 ★死体とキャベツ。 死に倒れた父の頭の横に転がったキャベツがいつもキチンと同じ場所にあるかなとか カット割りごとに気になってしまいましたよ(ちょっと御免よ あら探し) だけども結果はキチンと毎回 頭の横にありましたね あのキャベツ。 しかし、あのキャベツという小道具によって事件のシュールさが かなり増してます ナイスキャベツ君 グッジョブだ。 ★市原悦子のしみずとシーツ しかし、それ以上に威力を発揮した小道具が、母親と息子が包丁を手に争うシーンに使われたあの真っ白なシーツです。初めは息子に掛けられたシーツが形勢逆転してしまい母親市原悦子を頭からすっぽりと覆ってしまう、そこから親子で争い揉み合った果てに母の顔が見えぬまんまに腹を刺す そして顔が見えぬまんまに発せられる母親市原悦子の哀れシュールな台詞の数々を生み出したあのシーン。それを生み出したあのシーツ。親子の争いを哀れに凄まじく演出するのに十分過ぎるほどであった小道具のあのシーツ。市原悦子のしみずの色と同じ色であった事も効果を得ていたように思えましたし、シーツと出刃包丁という最強の組み合わせによる凶器の誕生を目撃してしまったかのようでとても恐ろしい。シーツ、それは凄まじいサスペンスシーンを演出する事となった最強の小道具であった。 ★順とケイ子、そして市原悦子 水谷豊の怪演については言うまでもない。 原田美枝子については好き嫌いもありましょうが、お嬢は撮影当時17歳、それでいて原作タイトルの蛇淫の雰囲気を醸し出しつつの、ロリな雰囲気保ちつつ、素晴らしきスケ役であったと思われます。あまったるい声、そしてナイスオッパイ グッジョブだ。 そして最後に母親市原悦子さん、彼女についてはただすごい、もうそれだけしか言えませんね この時あってこそ後の御活躍がある その事を分からせてくれるに十分な役柄でした いやはや素晴らしかった。 ★音楽 ゴダイゴオンリーの統一感。 前半、弱冠浮いてしまっているんじゃないかと思えた曲の入りも、後半ではズバッと嵌まる。切なさを奏でるエンディングソングでは ここでもうホントに終わりなのかと思わせるよな残念な気持ちと雰囲気と曲調の心地よさに恐ろしきほどに胸騒いでしまう it's good to be home again。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2019-05-25 22:11:27) (良:1票) |
24.《ネタバレ》 母親や恋人が、主人公の贖罪の機会をどんどん奪っていく展開に、異様な空恐ろしさを感じる。 主人公の葛藤や苦悶、母親役の市原悦子の演技や恋人役の原田美枝子の演技よりも、主人公の事態・事情・生い立ち・人間関係などの泥沼を払拭しきれない「どうしようもない四面楚歌」が、私には恐ろしかった。 こういうギラギラした邦画、もう出てこないんですかねぇ。長谷川和彦の監督復帰を、心から願うばかりですわ。竹書房の某麻雀大会とかで、余計な活躍とかしている場合じゃないですよ。 【aksweet】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-09-12 08:33:29) (良:1票) |
23.昔からの女友達に「今まで観たので良かった映画、何?」と聞いた所、挙げてくれた内の一本です。とにかくいきなりの親殺しのシーンに圧倒されてしまった。特に「女」と「母」がぐちゃぐちゃに入り乱れながら水谷豊に迫る市原悦子の凄まじいくらいの妖艶さにはただもう、びっくり。それに比べると原田美枝子はちょっと可愛らし過ぎて、確かにヌードはすごいし胸もきれいなんだけど、素の演技の時「淫乱な少女」を演じ切れてないのがちょっと残念。まあ当時17,8歳だからしょうがないのかもしれないんですけどね。全体として、荒削りなところもあるけど、気迫というか気合というか、そういうものがびしびし伝わってきました。親との対立と邂逅(まあ殺しちゃってるんだけど)、性に対する欲望と嫌悪感、そういったどろどろしたものをドバァッと画面にぶちまけた感じ。親殺しっていうからもっと鬼畜な感じかと思ってたけど、そういうのではありませんでした。水谷豊演じる主人公が父親を刺してしまったのは、ある種はずみみたいなもので、ある部分では父親を憎んでたんだけど、別の部分では尊敬し、慈しんでいたんですね。だからあんなに苦しんで、混乱してたんでしょう。終わり近くで水谷豊が自殺を図る所では「むむ、死ぬのか。死んで終わるなんてただの逃げだぞう」と思ってたんですが、ああいうラストシーンで良かったと思います。まあ万人にお勧めできる映画ではないと思いますが、ドロドロを抱えた若い人とかヘビーなものを見たい人にはいいと思います。蛇足その一。この映画はDVDで観たんですが、特典映像の監督のインタビューを観ると昔の日本映画の無茶苦茶な様子がわかってなかなか面白いです。蛇足その二。長谷川監督は連合赤軍の企画があったのにポシャッてしまったそうですが、是非観たいなあ。まだまだ伝説になるお年ではないでしょう。蛇足その三。この映画、あの「チイチイ」こと地井武男(字、あってるかなあ?)が本来わりと重要な役で出てたはずなんですが、編集の結果、ほとんどカメオ出演のようになっています。チイチイ、かわいそ。 【ぐるぐる】さん 7点(2003-04-26 14:28:18) (良:1票) |
22.《ネタバレ》 汚いものを徹底的に汚く描いているというだけでも評価したい。市原悦子きたねーよ!死体もきたねー!水谷豊は顔だけだし、原田美枝子は体だけ。演技がうまいのは順ちゃんの両親くらいなもんだった。 それにしても、本作で描かれる狂気じみた愛は何なのだろう。順ちゃんの両親は理由もなくケイ子を敵視し、過保護にもホドがあるほど一方的な愛情=正義を振りかざして彼を束縛しようとする。ケイ子はケイ子で彼の邪魔になるようなことばかりして、彼は自分の思い通りの人生を歩むことができない。クライマックスの自殺未遂は異常なほどの愛情に包まれながら死にゆく彼の理想、本来歩むはずだった人生の自殺を表現しているのかな。トラックの荷台に乗ってどこかへ去っていく彼はもうあの街に戻ることはないだろうし、理想的な人生も歩めない。死んだも同然の心と頭で生きていくしかないとは、しかも罪から逃げながら…。恐ろしや。 【カニばさみ】さん [DVD(吹替)] 8点(2016-04-30 03:06:35) |
21.《ネタバレ》 面白くはないんだけれど、低い点数もつけられないってやっかいな映画です。ラストシーン、独りになった主人公。そこで、「It’s good to be home again(家に帰れて、うれしい)」が流れる。基地害沙汰が遠ざかってゆく。この胸くその悪い映画を、こういう風におわらせるワケねと、とため息をつきました。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 5点(2016-03-06 17:55:29) |
20.若かりしキャストだけだなぁ。原田美枝子がナイスバデー。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 4点(2014-09-16 09:24:17) |
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19.久々に見た。流れがわかっていても強い緊張に襲われた。水谷豊の軽い演技が小気味よくて救いもあるし、殺人等の行動が幼さからにじみ出る行為に感じられ話に引き込まれる。「死ね」「死ぬよぉ」のやり取りは秀逸。 【reitengo】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-07-31 16:38:28) |
18.実際に起こった事件をモデルにしているようで、 主役の水谷豊と母親役の市原悦子が好演している。特に市原は出演シーンは少ないながらも、 いかにも息子を溺愛していたという感じが伝わってきて、観てて怖いぐらいの熱演。 ストーリーのほうは、最初から主人公の人間像だけを描きたかったのか、 今一つピンとこない部分も。なぜ両親は恋人との交際にそれほど反対したのか。 原作のタイトルが「蛇淫」、実際の主人公の恋人が風俗嬢だったということを考慮すれば、 物語の一番のポイントになっているはずなのだが、彼女側の描写は不明瞭でわかりづらい。 その恋人役は原田美枝子が演じており、瑞々しいヌードまで披露してくれるも、 こちらはほとんど素人演技でちょっとお粗末。いいシーンはあるんだけど、ラストもう~ん。 水谷は元々性格俳優を目指していたようだが、いい役者だなと再認識させてくれた作品だった。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 4点(2011-09-21 02:40:55) |
17.《ネタバレ》 「じゅんちゃ~ん」「あちぃよ~。あちぃ~よ~。」水谷豊、原田美枝子の若かりし時。親殺しって誰もがしてしまう危険性をはらんでいる。主人公の気持ち、よく描写していると思う。40歳の市原悦子もすごい! 【T橋.COM】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-08-30 20:54:41) |
16.テンポが悪いな~。原田美枝子の演技も「・・・」。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-06-02 20:14:58) |
15.見終わった後に、何か隣の家庭の見てはいけない醜い部分を覗き見してしまったような気持ちの悪さを覚えた。 干渉しすぎる親と自立できない子との関係を、映画はデフォルメしてみせる。 後半は一転、主人公の思い出の映像が随所にフラッシュバックで現れ、その中で幼い主人公と両親が仲睦まじく砂浜を歩くシーンにはしんみりさせられるし、殺した犯人である主人公も涙を流す。ただ、どうも後から作られた主人公の脳内妄想のような気がして、事実かどうかは嘘くさい。 うまくいかない人生を両親のせいにしながらも実は両親に甘えている、主人公そのものを表わしている。 【amicky】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-12-14 22:44:55) |
14.《ネタバレ》 テーマがテーマだけに、後味が悪い作品。 基本的には息子をしばろうとする父親と、その呪縛から逃れようとする息子の対立。 いちごの回想シーンで、父親とケイコに肉体関係があったような描き方をしているが、 あれはどういうことだろうか? 無理心中を図ろうとする母親の心理がよくわかりませんでした。 相当抑圧されていたことは理解できましたが。 「もうこれで働かなくていい」が、最後の言葉、さびしいですね。 子離れできない母親だったのでしょうね。 主人公にも母親を殺す理由がないんですが。 家庭環境にさほど問題があったわけじゃなく、むしろケイコの家の方が悲惨なのですが。 その後は主人公の心の弱さが前面にでて、支離滅裂な行動のオンパレード。 自殺を図るも失敗。トラックの荷台にのって逃走。 水谷と原田の演技はよかった。 原田のみずみずしいヌードに+1点。 ヌードと血でリアリズムを出していました。 「せつない青春もの」ではなくて、「せつない犯罪もの」でした。 【よしのぶ】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2008-04-16 18:54:29) |
13.《ネタバレ》 観ていて緊張しっぱなしだった記憶。甘く軽快なゴダイゴの音楽と妙にマッチするピリピリした映像。日本テレビの「傷だらけの天使」でブレイクしたばかりの水谷豊と定評あるバイプレイヤー市原悦子の迫真の演技、原田美枝子のダイナマイトボディ、湾岸道路を疾走するシーンの美しさ。市原悦子が殺されるシーンでは痛みさえ感じた。 【Q兵衛】さん [映画館(邦画)] 8点(2008-03-13 17:34:00) |
12.《ネタバレ》 前半の両親殺しのくだりは、凄い緊迫感。 これだけの緊迫感を放つ作品は、そうはない。 しかし、中盤から終盤にかけてダレダレ。 そこが残念。 もう少し尺が短かかった方が良かったかも。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2007-10-17 20:51:56) |
11.少し前にBSでやったのを録画しておいてやっと観た。最近の映画に多いユルユル感が無く凄いパワーで緊張して観ていられた、話は簡単だが詳細は緻密、かなりの満足感を味わった。こういう映画らしい作品は好きだなぁ~。この手の話は後にも幾つか作られているけど、どうも淡々と表現するのが主流になっちゃって、今この作品を見ると映画としてはこっちが正解じゃないかと思えてくる。ただ最近「竜二」を観た時にも思ったけどアニメのように口と合わないアフレコは作品が古いからという理由だけだろうか、ものすごく違和感を感じる、昔見たときには感じなかったけど。 【カーヴ】さん [地上波(吹替)] 7点(2006-02-07 10:11:05) |
10.水谷豊も原田美枝子もまだまだの時代だし、その当時は斬新であったのかもしれないシナリオとともに妙に鼻についてしまった。評価が高かったのは知っていたが題材、原作の中上があまり好きではなくて敬遠したのを覚えている。あの当時見ていたらどう思ったのかなどと考えるとそちら方が興味がある。残念。 |