20.《ネタバレ》 恋愛とシュールなギャグ、そしてラストにかけての凄まじい逃走劇!
「バスター」の名に恥じない疾走感と破壊力、そして本物の愛について考えさせられるキートン映画の傑作の一つ。
金融ブローカーの仕事に失敗して破産寸前のキートン。
そこに舞い込んだ父の遺言。喉から手が出るほどの莫大な遺産、期限までに結婚しなければその宝の山も手に入らない。
財産欲しさに女性という女性をナンパしては惨敗を期していくキートン。
人を金で買えても心までは買えない。
愛ではなく金のために動くキートンに心から振り向く女性なぞいないのだ。
ただ一人キートンの中身に惹かれ愛していた女性の心も理解できずに。
笑わない、泣かないの感情の起伏に乏しいキートンだが、彼は体の動きで豊かな感情を伝えてくれる不器用なパフォーマーでもある。
顔も背もコンプレックスの塊だが、それを個性として武器にして戦うその精神力。
チャップリンがユーモアと愛情、ロイドが勇気、キートンはアクション!
俊敏な運動神経だからこそ成せるアクションの連続で魅せる俳優なのだ。
人間の本能に動きで語りかける、キートン映画の醍醐味ここにあり。
とうとう最終手段として新聞広告で結婚相手を募集する事にしたキートン。
その邪さがキートンに悲劇となって降り掛かる。
数百人にも集まった大量の女性、女性、女性!老若美人、貴婦人、醜女とよりどりみどりの大津波。キートンも流石に怖くなって脱走。それを追う烏合のレディース。
群衆の力強さと恐ろしさをまざまざと見せつけるスピードと破壊力!
キートンも全力疾走!
クレーン車に中ずり、荒い地形を高速で駆け下り岩まで追ってくるなど、キートンのポテンシャルの高さが成せる命懸けの走りだ。
その過酷さを肉体だけで表現するその役者魂、震えるね。
大量の岩に追われて逃げてるんだけど、最終的にはそれを逃げるんじゃなくて避けるという発想!逃げてばかりじゃ勝てない、正面から見切ってやるぞという心の強さが良い。もう金のためじゃないよ。自分を愛してくれる人の気持ちをやっと理解して、やっと自分の愛を告白するんだと必死。時間までにたどり着かなきゃ、彼女を失うも同然。服もボロボロで息を切らして愛する女性の元へとたどり着く。金なんてどうでもいい、ただ愛が欲しい。そして迎える大団円。