16.《ネタバレ》 今年度の「午前十時の映画祭」で一番楽しみに
してたの、もしかして本作品かもしれない。
人生初のハリーハウゼン、劇場体験というポイントで+2点。
個人的に好感が持てるのは、映画の肝がハリーハウゼンの特撮
である、と認識した上で演出/編集/音楽等がそれを盛り上げる為
のフォローを惜しまなく実行している事。モンスターの行動に対して
いちいち演者がリアクションをするカットを律儀に入れていたり、
おどろおどろしさ溢れるベタな音楽もスクリーンで聴くと心地よい。
常日頃から「ハリーハウゼン=文楽(歌舞伎)」説を主張し
私は友達から馬鹿にされているのだが、あえて力説しておきたい。
彼の造形したモンスター類はモデルアニメなので、滑らかな
動きを要求される。この作品自体、ストップアニメの撮影等で
2年の年月をかけて(特にラストの骸骨剣士×7体とのバトルは
4ヶ月かけたそうな)るのはそういった自然な動きを求めてのもの。
ただ彼のモデルアニメの演出には決まって「溜め」の動きがある。
プラスチックのモデルに命を吹き込む作業として彼は、実際の
動植物の動きを参考にし、クリーチャーが動く直前のコンマ秒を
「溜め→瞬発→起動」の流れで撮影してる、そこに「藝」を感じる。
そしてそのワンテンポ留まった瞬間が私にとって文楽や歌舞伎の
「見得を切る」仕草に被るのだ。後世に残るだけの映像作家っぷり。
今回劇場で拝見してヒュドラの顔(7つ首)がそれぞれ表情が異なる
細やかさ、あと骸骨剣士の持っている盾や刀、槍の造形の違い
あとタロス像の間抜けっぷり(笑)がより堪能できたのも好印象。
さあ、そこな映画ファンの皆様、
劇場に足を運び心の奥底から叫ぼうではないか、
「よっ、ハリー、千両役者!!」と。
てか、おじさんには最近のCG表現の乱雑ぶり、疲れるんだよな...。