6.《ネタバレ》 当作品については、少年時代に読んだSF雑誌で、存在だけは知っていました。そして今から約4年前の深夜、たまたまTVをつけたら放送していたのがリメイク版(1995年)。リメイクされたことも知らず、かつ、途中から観たので中途半端さも否めず、「オリジナル版を観てから、あらためてリメイク版を観てみよう」と思ったのですが…当時、このオリジナル版はレンタル店で取り寄せ不能で、市販もされていませんでした(廃盤と確認)。
幸い、最近になって取り寄せ再開を知り、レンタルして鑑賞した次第です。さて、結果は…
イギリスの小さな村が舞台ですが、学者夫婦が住んでいて、その妻の兄は軍人という設定。ちょっと都合が良すぎる気もしましたが、この設定のおかけで【村の緊急事態に、即座に軍が調査を開始する/夫であるゴードン博士は、ロンドンでの有識者会議に参加し、科学的な論議をする】というように、ローカルな中にもグローバルな視野で物語が展開するのは上手いな、と思いました。
原題は『Village of the Damned = 呪われた村】ですが、邦題を『光る眼』にしたのは正解ですね。何といっても【光る眼でジーッと相手を見つめ、ジワジワと操る場面】が印象的です。しかも大袈裟でなく淡々と…この場面に限らず、作品全体が淡々としており【グチャグチャ・ドロドロと形容されるようなグロテスクな映像/血が飛び散る映像】は皆無です。こうした場面が苦手な私には観やすかったですし、【知的な面に訴える怖さ・不気味さ】とでもいうような効果を生みだしていると思います。
もちろん、この特徴により、人によっては「これのどこがホラーなの?」といった感想を抱いたとしても不思議ではないかもしれません。しかし【生理面に訴える怖さ・気持ち悪さ】が全てではなく、様々な表現があっていいのでは…と思っています。また【日常に、理解不能な現象が生じるという設定のSF作品】の場合、少なからず“不安・怯え・不気味”といった要素が含まれてくるのではないでしょうか。そのため、むしろ、ホラーという言葉を脇に置いて鑑賞したほうが、当作品の魅力が伝わりやすくなるかも…と思ったりしております。
なお、公開当時、【村に忍び寄る脅威】は【冷戦下での○○主義】を示唆していたようですが、これに限定しなくても、各人で様々な事象に重ねて観ることが可能では…と思われます。
私の場合、彼らは宇宙から飛来した“それ自体では生命体として機能できない何か”であって、地球人の細胞(卵子)に入り込む必要があった…要はウィルスに近いニュアンスを感じたのです。ウィルスと異なるのは【細胞内で増殖する】のではなく【一個体として成熟し、生殖する必要がある】という点ですが…それでもラストシーンを観ると【肉体を失って、再び、“何か”だけが宇宙へ…】という印象を受けました。
以上は、現在の世相に重ねた私の(こじつけがましい)観方に過ぎませんが…いずれにせよ、劇中で子ども達が何者だったのか、明らかにされなかったわけですから、時代を越えて様々な解釈・想像を膨らませる幅の広さがあるのでは…と私は考えます。
因みに、デイビッドをはじめとする子ども達は、終始、無表情かと思ったら…映画の開始49分後の【授業の場面】で、ゴードン博士に対し「質問したいんでしょ?」と、皆で悪戯っぽく微笑みます。その言葉を受け、博士が核心?をついた質問すると、一同、困ったような表情でうつむきます。こうした表情は、その後の展開に活かされてはいませんが「あの子たちは、博士には親しみを持っていたようだし…何かしら住み分けるなどして笑顔で締め括れなかったのかな…」と一抹の寂しさを感じたりもしました。
最後に、これは余談ですが…子ども達が幼児の段階で、その能力(知能が高いだけでなく、一人が覚えたことを、他の子ども達も共有できる)を検証する場面があります。そのときに使われる東洋のカラクリ箱は、【神奈川県・箱根の特産物である寄木細工の秘密箱】に似ている印象を受けました。そのため「ひょっとして海外向けに輸出された箱が、巡り巡ってイギリス映画の小道具に?」と想像し、妙に親近感がわきました。本筋とは関係ない感想ですけどね…。
さて、採点ですが…トータルな出来は佳作レベルかもしれませんが【日常に忍び寄る脅威を、淡々と描写したSF映画の古典】として相応しい作品だと思います。当サイトの採点基準である【見た後、率直に面白かったぁ…って言える作品】として8点を献上します。
*リメイク版【光る眼:1995年】は、別途、レビューを投稿しています。