12.長大なストーリーを簡潔に、過不足なく描いた職人技にも驚嘆するが、何よりも、超絶技巧の連続技に目を見張る。冒頭、夏のだるだるな暑さを漲らせたワンシーンワンカットから、現世と地獄が一続きになるストップモーションまで、映画の技法とはこれや、といわんばかり。しかももちろんそれは技法自慢なんぞではない。技と技の果てに映画の彼岸がある。観たこともない映画がここにある。大島渚が、こんな映画は作れない、と感嘆したそうな。 【まぶぜたろう】さん 10点(2004-03-08 13:16:55) (良:3票) |
11.《ネタバレ》 怪談映画のマエストロ中川信夫の最高傑作、クズ映画を量産して消えていった新東宝も本作を残せたことで映画史に名を残すことが出来ました。 とにかく役者・スタッフたちの気合いが映像の端々にまで行き渡っている感じです。冒頭の伊右衛門がお岩との婚儀を断れたため義父を斬り殺すところからワンカットで押し通してしまうぐらいで、歌舞伎の様式美に拘りながらも斬新なカメラの動きは時代劇の枠を超えています。要所で見せる赤色の使い方が鮮やかで、低予算ながらも色彩設計は凝ってます。怪談と言えば音響が重要なのは当然熟知しているうえでの効果音の使い方がまた巧緻で、お岩・宅悦殺しのシーンにかぶさる花火の音やカエルの鳴き声が印象深い。 天地茂の伊右衛門は、三島由紀夫が絶賛したのも納得の名演です。こういう極悪非道ながらも人間的な苦悩を見せる伊右衛門像は、それまでの四谷怪談にはなかった演出なんだそうです。お岩さんの若杉嘉津子は言うまでもなく彼女の女優人生で最高の演技、ラストの我が子を抱いて昇天してゆく姿は涙を誘います。 四谷怪談の映画化作品でおそらく本作の上映時間が最短だと思いますが、実に濃密な70分余りです。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2015-07-26 22:43:37) (良:2票) |
10.実に見事。物語の展開がヤミクモに速く、それでいて場面のひとつひとつがしっかりと描かれ、そこには“妖しさ”と“怪しさ”が満開の、強烈な個性がある。しばしば現れる、格子越しの映像が、なんとも後ろめたいようなイヤ~な雰囲気を醸し出す。イエモンがお岩さん殺害をたきつけられ、「毒薬・・・」と呟いた後の、鳥の鳴き声(うるさ過ぎるんだ、これが)、背景の夕焼け空(赤過ぎるんだ、これが)。見せたいもの、聴かせたいものについては、多少大げさだろうと何だろうと、容赦なく我々にぶつけてくる。まさに態度に揺らぎが無い、がははは。あるいは、どうみてもユーレイにしか見えないお岩さんに「お元気そうなお姿を見て安心しました」などと言う理不尽さ(笑)。これが実に不気味。一方には『女優霊』のごとき、誰にも気づいてもらえないユーレイの姿も(?)。不気味さ、理不尽さ、哀愁、すなわち“妖しさ”。そして、アトラクション的お化け屋敷ムービーとしてのショック描写も充実。いや、見事でした。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2008-12-02 22:58:57) (良:2票) |
9.いやあ、驚いた!「四谷怪談」ものって単なる不気味なホラーだとばかり思っていたけど、これだけ美しさを感じる「四谷怪談」が存在していたことにまずは驚かされました。天知茂のニヒルさが抜群の効果を上げているのと同時に若杉嘉津子の「お岩さん」の怪しげな雰囲気、どこか歌舞伎の世界を感じるこの映像美、単なる幽霊ものでないその雰囲気に溝口健二監督の「雨月物語」を初めて観た時のような感覚を覚えた。それにしても単なる幽霊ものの話でありながらも、やっぱりこの映画の持っている雰囲気は歌舞伎の世界に通じるものがある。上手く言えないけど、いかにも日本的な様式の美しさを感じるのです。 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2007-01-07 23:45:04) (良:2票) |
8.鶴屋南北の原作は”お岩さん”の幽霊で余りにも有名。当時”エロ・グロ”路線を突っ走っていた今は亡き「新東宝」がB級監督中川信夫に大して期待もせず監督させたのが本作。当然ゲテモノ映画かと思いきや、開き直って耽美的な色彩描写に走った中川を始めとするスタッフの情熱がプロデューサー(大蔵貢)の思惑を遥かに凌駕して傑作となった。殊に殺気漲る民谷伊右衛門を演じた天知茂のニヒルな演技は実に素晴らしい。正直ホラーとしては古臭く今となってはあんまり怖くもないが、日本の様式美を追究した画作りとストーリー・テリングには舌を巻いた。お見事! 【へちょちょ】さん 8点(2003-10-27 03:33:23) (良:2票) |
7.恐怖シーンではハッとさせられることも多かったが、なんかヤボったい。古い映画といわれればそれまでなんだけど。天地茂先生の鬼気迫る演技は素晴らしかった。 【センブリーヌ】さん [インターネット(邦画)] 6点(2021-06-06 19:26:33) (良:1票) |
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6.あらすじを知っていても如何にも日本怪談的な因果応報な怖い話ですね。全体的に暗いシーンが多いですが、歌舞伎を踏まえた美術、効果音、演出が秀逸で日本の怪談の雰囲気がよく出ています。引いた絵も結構多いので、小さい画面で視聴すると髪型が同じだったりすると誰なのかわかりにくかったです。ダラダラ長くせず、短い尺にテンポよくまとめていたのも傑作の誉高い所以かと。 【クリプトポネ】さん [ブルーレイ(邦画)] 6点(2019-08-04 14:46:26) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 へ~~~~、これがあのお岩さんなんや~。終盤の畳みかけるような攻撃?はすごいというかしつこいというか(苦笑)。テンポの良さと短さがナイスな一本でゴザイマシタ 【Kaname】さん [DVD(邦画)] 6点(2016-04-24 09:57:34) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 ホラーであり、芸術ですね。直助を斬った後の映像が特に凄かった。ストーリーはあまり好みではない。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2012-07-30 22:34:22) (良:1票) |
3.だいぶ前の作品ということもあって古臭さを感じる部分がちょいちょいあったが、セットやカメラワークがかなり雰囲気を盛り上げており、脚本が秀逸でテンポが良く、とても上質な映画だった。 【eureka】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-10-10 17:54:20) (良:1票) |
2.四谷怪談を題材にした映画と言えば深作欣二監督の「忠臣蔵外伝 四谷怪談」しか見たことがなく、ストーリーもあまりよく知らない状態だったので新鮮な気持ちで見ることが出来た。映画としては低予算なB級ホラー映画ではあるが、それでも歌舞伎のような音楽と演出がとても効果的に使われており、溝口健二監督の作品とためをはるぐらいの映像美にもあふれ、単なる怪談映画では収まりきらないような芸術的傑作になっていて正直驚いた。中川信夫監督の作品を見るのはこれが初めてだったのだが、これ一本でじゅうぶん巨匠のひとりだと感じた。出演している俳優陣も天知茂のニヒルな伊右衛門はハマリ役だし、名前は知らないがお岩役の女優もなかなか不気味で、とくに毒薬を飲んで顔が醜く変わった直後の演技はかなりインパクトがあり印象に残る。「忠臣蔵外伝 四谷怪談」で荻野目慶子が演じたお梅は高笑いだけが印象に残るだけの存在だったが、本作では若き池内淳子で清楚なお嬢様という感じで良かった。何はともあれ、いかにも日本的な怪談映画でありながらそれ以上に日本的な美しさ、様式美を感じさせてくれる、そんな映画だった。 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-08-14 03:19:27) (良:1票) |
1.同監督の「女吸血鬼」なる怪作と一緒に鑑賞。スタッフ、キャストともかなり被っている「女吸血鬼」の方は本当に下らない、スリルもサスペンスも感じられない無味乾燥な駄作だったのに対し、こちらはこれ本当に同じ監督の映画なん?って思う位、いかにも日本的怨念怪談噺になってました。へちょちょ様が↓で述べられている通り、この映画は突然変異的に生まれた秀作としか思えないですね。しかも一時間半に満たない時間枠の中にあの原作を収めてしまったというのは正に職人技。天知茂のニヒルな伊右衛門、お岩を演じた若杉嘉津子という女優さんの所作一つ一つ、特に伊右衛門に妙薬と偽られて毒薬を飲まされるシーン、夫を信じきってるが故の哀れさがうまく表現されていたと思います。風鈴の使い方も巧い!池内淳子がこの時代、いかに軽んじられた扱いを受けていたか、この二作を観ただけでも良く解ります。う~ん、でも本当はこういう映画は、真夏の暗い映画館で観たほうが雰囲気が出ていいんだろうなあ・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 7点(2006-05-07 10:50:47) (良:1票) |