16.《ネタバレ》 冒頭にて「純銀のペーパーナイフ」が登場する時点で「じゃあ狼男が出てくるって事か」と観客に理解させてくれる、非常に親切な映画。
でも、こういった分かり易い籠城系ホラーは好みのジャンルのはずなのに、どうも最後までノリ切れないまま終わってしまった気がしますね。
恋愛要素を排した硬派なストーリーに、ユーモアの効いた会話、CGではなくあえて着ぐるみに拘った特撮部分など、文章にしてみれば褒めたくなるような要素ばかりなのに、何故楽しめなかったのか、自分でも不思議。
あえて理由を考えてみるなら、同監督の「ディセント」に比べ、全体的にカメラワークや画作りが粗削りで、洗練されていないように思えた辺りがネックになっているのでしょうか。
それと「分かり易い」を通り越して「分かり易過ぎる」脚本な辺りも気になります。
なんというか、フリが丁寧過ぎて
「どうせ狼男をペーパーナイフで倒すんでしょう?」
「このヒロインって絶対に敵側だよね?」
「これだけ伏線張ってるって事は、サッカーの試合結果も分かるんでしょう?」
と思ってしまうし、事実その通りになるのだから、全く意外性が無い。
特にペーパーナイフの件は深刻で、こんな軽い小ネタみたいな代物は、映画の中盤で窮地を脱するくらいの使い方しかしないだろうと思っていたら、とっておきの隠しネタみたいにラストで使われるものだから(そんな大層なネタじゃないでしょうに……)と、ガッカリしてしまったんです。
ヒロインが勿体ぶって正体を現したと思ったら、ヘッドショット一発で即退場しちゃう辺りも、何だか拍子抜け。
サッカーの試合結果ネタにしたって「狼男事件よりもサッカーの試合の方が記事が大きい」っていう皮肉さを出したかったとは思うんだけど、そこを写真無しで文字だけでスコアを表示しているから、写真付きの狼男事件の記事の方がスペースは小さくても重要に扱われているようにも見えちゃって、どうにもチグハグなんですよね。
その辺りに、作り手との「好みの違い」「感性の壁」があったように思えます。
狼に絡んだ童話の「赤ずきん」や「三匹の子豚」を連想させる台詞がある辺りはニヤリとさせられたし、主人公が何とか生き残るハッピーエンドに近い作りなのも好み。
低予算ながらも「面白い映画を撮ろう!」という意気込みは伝わってくる、好ましいタイプの映画であるだけに、楽しめなかった事が残念な一品でした。