2.ソクーロフが独自の視点で描くドキュメンタリー、エレジーシリーズの7作目。ある老人が死を迎えるところから始まります。真っ暗の画面の中に微妙に死にゆく人が映される。たぶんスクリーンでないと映らないのではないかと思われるくらいうっすらと。介護をしている人たちの話し声や生活音が響きます。そしてそこから次々と映される写真の数々。カメラはゆっくりと写真のある部分に寄っていったり、ある部分から引いていったりして動かない写真を映画にしてみせる。その間もずっと冒頭の「音」が挿入されることから、死んだ人間がしばらく見ることのできる映像として理解してよいだろう。戦争の記録映像のようなものもある。ようなものと書いたのは、その記録映像と思われるものとあきらかに新たに撮った映像の繋ぎがあまりにもつながっているから。モノクロが徐々に色を帯びてゆく美しさはこの世のものとは思えない。森の木々が揺れ動き光が差し込んだとき、おもわず泣いてしまった。 この映画、一日でソクーロフの映画を5本観たなかの5本目(『孤独の声』『日陽はしづかに発酵し・・・』『マザー、サン』『ファザー、サン』そしてコレの順で)だったのでこの静かな映画の中でそのまま眠ってしまってもいいと思いながら観ていたのだが、眠いながらも魅入ってしまった。色彩のセンスといい音の使い方といい、そしてなによりも詩的で哀愁溢れる見せ方に、ソクーロフの天才ぶりを堪能した。