1.《ネタバレ》 原作は、故・太地喜和子も演じたことがあるジョン・フォード(映画監督とは別人っすよ!)の古典的戯曲。中世イタリアを舞台に、禁断の愛に殉じた兄妹の凄惨な悲劇を描いていくもの。…とにかく、何という映像美だろう。徹底して奥行きを強調し、蝋燭やかがり火がゆらめく屋内シーンと、湿った空気感まで伝わってくるかのような屋外シーンのいずれもが、端正な構図に収まっている(おそらく、キュ-ブリック監督の『バリー・リンドン』をもしのぐ完全主義ぶり!)。さらに、濡れた肌からたちのぼる湯気のなまめかしさや、血の赤さの鮮烈な視覚的衝撃はどうだ。「光と色彩の魔術師」と称される撮影監督ヴィットリオ・ストラーロとしても、ここまで絵画的な美を極めた作品もないのではあるまいか。そのぶん、ドラマ的な面白味に欠けると指摘する向きもあるだろうけれど、若きシャーロット・ランプリングの圧倒的な存在感が、近親相姦の果ての悲劇も、当時の貴族社会の退廃的な“空気”も、もはやすべてを語り尽くしているじゃないか! クライマックスのスプラッター(!)な血で血を洗う大殺戮シーンすら一遍の甘美な「悪夢」に見せてしまう、知られざる名作と断言してしまおう。