1.えーっと、まずはウンチク的なことから。それまでの佐伯清監督に代わってマキノ雅弘が監督を務めた「昭和残侠伝」四作目。この作品からレギュラーの高倉健と池部良の役名が「花田秀次郎」と「風間重吉」(つまり「花と風」ってことだな)に定着するのです。あと、それまでヤクザ・渡世人だった高倉健の役が初めてカタギ(鳶の頭)になった作品でもあります。
んでねぇ、僕はこのシリーズ、一作目から順番コに観てるのだけど、いやーびっくりした。なぜって「同じ素材(役者・話の大筋)を使っていても料理人(=監督)によってこんだけ作品が違うものなのか!」という事をまざまざと見せられたから。
まず大きく違うのが、高倉健以外の脇役が、実に生き生きと描かれている事。例えば、山城新伍が、惚れた芸者のために大事な「纏(まとい。昔の火消しが持ってた、なんつうの?長い棒に紙のビラビラを付けてる奴。昔は鳶の人たちが火消しの仕事もしてたということをこの作品で初めて知った)」を質に入れてしまうエピソードなんかは、とても良い。仲間は最初それを責めるんだけど、理由を知って何とかお金を集めようと奔走する。ここも良い(マキノ作品って人がガヤガヤ集まっているシーンがとっても魅力的なのだ)。
も一つ大きな違いは高倉健のキャラクター。前三作の高倉健は、ひたすらニヒルでカッコ良くていかにも「仁侠映画の健さん」ってな佇まい(なので、純粋な高倉健ファンでない僕なんかは、あんまし感情移入できないのだ)なのだけれど、この作品では(もちろんカッコ良いのはカッコ良いのだけれど)、とても愛嬌があって、誤解を恐れずに言うと「可愛い」のだ。特に除隊して地元に帰ってきた高倉健が藤純子と再会するシーン。純情な藤純子をからかう健さんは、かなり素敵です(あ、もちろん藤純子も素敵だけど)。
ってな事でゴチャゴチャ書いたけれど、つまり一言で言うと「粋」ってことなんだな、この映画は。お約束の殴り込みのシーンもやたら熱くって、まさに血沸き肉踊るって感じ。
イカすぜ。