62.《ネタバレ》 時系列が頻繁に前後し、ラウの妄想シーンも入るので、非常にわかりにくい。
Ⅰも説明が少なかったが、Ⅲはさらに少なくて、解釈に手こずるところが結構ある。
ラウが精神に異常をきたして、ヤンとシンクロするのも共感しにくい。
善人になりたかったラウが自己矛盾を処理しきれなくなって、ヤンに同化していくという筋立てはわかるけど。
異常をきたすのが少し唐突に感じるのは、ラウの心理的葛藤の深さが伝わりきらないせいだろうか。
Ⅰは潜入捜査官の心理戦と警察とマフィアの攻防がスリリングに描かれていた。
Ⅱではわかりやすい一般的なギャング映画の方向に振り子が振れた。
そして、Ⅲでは振り子が逆に振れて、病的な深層心理にまで焦点を当てたシュールなサスペンスに。
ヤンと精神科医のエピソードは切なくてよかったが、他が凝りすぎたせいで作品のまとまりとしては今ひとつ。
時系列やミスディレクション等で策を弄しすぎて、ストーリーに入り込めないのだ。
サスペンスは謎が解明されるスッキリ感が醍醐味のひとつなのに、あまりにも説明不足で解明されないシーンが多くてモヤモヤが残る。
もっとシンプルに整理していれば、ラウがヤンになり切ってしまうクライマックス場面で、背筋の凍るようなインパクトがあったかもしれないのに。
実にもったいない。
三部作の中では、Ⅰが最もバランスがとれていて良かった。
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲとまるで違った作風で違和感があったので、三部作であるならばテイストは統一してほしかった。