46.《ネタバレ》 バーバラの一人称(モノローグ)でストーリーが進んでいくので、観る側はバーバラの本音部分の異常性にビビってしまうが、実はバーバラの行動自体はそんなに異常ではなく、逸脱していない。
逸脱した行動をとったのはむしろシーバの方で、ケイト・ブランシェットの透明な魅力で不潔に見えないが、やったことは「15歳の子どもと性的に関係するエロ教師」、という犯罪だ。作品を観ている人間は誰もシーバを責めないと思うが、現実だったらやっぱり非難轟轟だろう。
スキャンダルを犯したのはシーバであり、バーバラはすべてをノートに記しているだけ。
飼い猫が死んでパニックになったバーバラは、シーバに「家族より友である自分を選べ」と要求するが、もしペットの死という危機的状況になっていなければ非常識な要求をすることもなく、普通に穏やかにつきあいは続いていたのではないか?
・・・と思う程度にしか、バーバラの外向けの行動はおかしくなかった。シーバの前の女教師にも執着して接近禁止命令を出されていたようだが、その時はどんなストーキングをしたのか、シーバよりそっちのケースの方が気になったくらいだ。
なので、バーバラをそこまで怖いとは思えなかったのだが・・・もしかして少数派?(汗)
不思議なのは、バーバラの精神構造だ。
知的で現実をよく見ている教師であり、若い頃は理想を持った教師であったろう、だが年齢とキャリアを重ねるにしたがって現実に失望し、仕事ではなく親密な人間関係を熱烈に求めるようになった、らしい。
しかしその「求める親密な人間関係」も、あくまで自分の立場が上で相手が下でなければならない。そのため、毎回、年下で魅力のある女教師に目をつけている、らしい。
非常に支配的で、他人を求めながらも他人を信用していない。だから、親しくなるために弱みを握る。
自分は正直な気持ちを言わないのに、相手からは全面的な信頼を得ようとする。
以上の事から察するに、バーバラの望みは、たぶん、子どもを産んで育てることだったのではないか?
配偶者は対等だ。でも、子どもにとって親は、ある程度の年齢に育つまでは、絶対的な強者であり、絶対的に信頼している相手だと思う。
バーバラが真に求めているのは、母子関係なのではないだろうか。
まあ答えがわかったからといって、彼女の精神的な飢えが治まるわけではないのだが。
それに、もう年齢的に、出産も養子を育てるのも難しいようだから、解決策はないのだろう。
まあこれからは、シーバとシーバの前の依存相手から学んだことをしっかりノートに書いてですね、親しくなった相手に依存しすぎないように、心地いい距離感の友人関係を築くように、努力できればいいんじゃないでしょうか。
と、バーバラの幸せを祈りつつ、でもバーバラタイプはなぜか失敗から学ばないから難しいかも…と諦めつつ、エンディングを観ました。上品にまとめてあり、長すぎず短すぎず、よかったです。