18.《ネタバレ》 「小さな巨人」は、ダスティン・ホフマンが驚くべきメーキャップで演じた、101歳の老インディアン(?)のおしゃべりによって、この映画は始まります。 監督は、「俺たちに明日はない」で、"アメリカン・ニューシネマ"時代をリードする存在となったアーサー・ペン。 彼の思い出話によって展開されるこの西部劇は、カスター将軍、ワイルド・ビル・ヒコック、シッティング・ブル、クレイジー・ホースなどのお馴染みの人物たちが、賑やかに登場してくれます。 だが、カスター将軍の偏執狂的な描き方など、まさに西部劇というジャンルが、とてもシラケてしまった時代の産物という他ありません。 また、牧師の貞淑な妻が、欲求不満気味の浮気妻であったり、ビル・ヒコックも臆病な卑怯者であったりと、全く新しい視点で様々なエピソードを描いていくことで、"西部劇の神話"を次々と崩していくのです。 映画の夢、少年の夢の西部劇が、音を立てて崩壊していくような感傷的な気分になってしまいます。 奇妙な運命のいたずらによって、ダスティン・ホフマン演じる主人公は、白人社会と、インディアン社会を行ったり来たりしなくてはならなくなるのです。 白人でも、インディアンでもない、どちらでもない哀しみを生きる彼は、まるで場違いなところに放り込まれた"道化"といった感じです。 そのどちらでもない人間を通して、アメリカという国の矛盾が浮かび上がってくると思うのです。 【dreamer】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-08-28 08:41:49) |
17.《ネタバレ》 「お前はコウモリ人間かよ!」と突っ込みたくなる、先住民と白人の世界を行ったり来たりというか右往左往するダスティン・ホフマン。121歳になるまで生きたあげくに語る人生は、波乱万丈につきますけど色々な経験がどれも決して幸福に繋がったわけではないところが、いかにもニューシネマ的ですね。彼の半ばホラ噺としか思えないような生涯は、米国西部開拓史の闇を暗喩したナラティブ・ヒストリーとなっているのが特徴。先住民の虐殺も、『ソルジャー・ブルー』ほどではないにしても、かなり赤裸々に描いています。でもそれぞれのエピソードがかなりなコメディ調の演出で綴られているのが、なんか可笑しい。チーフ・ダン・ジョージが演じるシャイアン族長はもう素で演じているとしか思えないし、やはり最後の“死の予行演習”には荘厳さと可笑しみが混在していて、彼じゃなきゃ出来ない演技です。生き別れになった姉や妻と都合よく再会できるのは笑うしかないですけど、シャイアン族の妻であるサンシャインと子の死はさすがに悲痛でした。ワイルド・ビル・ヒコックやカスター将軍が狂言回しの様に使われていますが、個人的には詐欺師で危ないことばっかりやってて最後には海賊キッドみたいな姿になってしまうマーティン・バルサムが傑作でした。他のレヴュアーの方が指摘している通り、やはり本作は『フォレストガンプ』に多大な影響を与えているんじゃないかと確信します。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-11-18 22:35:37) |
16.《ネタバレ》 彼岸と此岸を状況に流されるように行き来して、唯一意志のこもった選択により勝利を勝ち取る。アメリカン・ニューシネマ期にはかなり珍しいタイプの映画だと思う。つまり、死なない。確かに語り手のジジイは120歳超えてるし、今にも死にそうだし実際死ぬんだろうけど、これは避けられない死だからアメリカン・ニューシネマのアンチ・ヒーロー的な死とは質が違う。歴史修正主義に対する抵抗がメインテーマであって、体制に結局負ける気がしてる僕らの等身大の抵抗と敗北を描くことを目的としていないのだ。だから死の質が違ってくる。■フェイ・ダナウェイがエロすぎる。 【カニばさみ】さん [DVD(字幕)] 9点(2016-12-11 02:32:25) |
15.主人公ジャックが語る体験談は虚実ないまぜで、いかにも老人の昔語りという趣。数奇な運命に翻弄され白人社会と先住民社会を行き来する彼の姿をみると、結局アイデンティティーって何なんだろうと思わせる展開。そんなの無意味だよと訴えているのかのよう。そこが本作の奥深い魅力になっている。 ジャックが一貫しているのは生に対する執着であり、故に波乱万丈を潜り抜け121歳まで生き延びることができたと言えよう。彼とペテン師の行動からは“とにかく生きろ”というメッセージが伝わる。加えて、必死に生きるほど滲み出るおかしみ。“追い詰められれば最後は笑うしかない”に一脈通じるような。 騎兵隊の先住民虐殺を批判的に描いているが、製作当時の世相からソンミ村虐殺を連想し、ベトナム戦争批判とも受け取れる。また、ジャック夫妻の乗った馬車が先住民の襲撃を受ける逸話で、ジャックと先住民が馬から馬に飛び移るシーンは「駅馬車」を彷彿させる。襲ったはずの先住民が、飛び移りを一緒に楽しむかのごとく嬉々とした表情を見せるところに皮肉を感じる。これらはフォード映画に代表される白人史観の西部劇に対するアンチテーゼだろう。 D・ホフマンはジャックの若い頃を飄々と演じて魅せるとともに、昔を回想する老人の姿を見事にこなし、2つをうまく演じ分けた。シャイアン族の長老役C・D・ジョージは素朴で味わい深い演技を見せ好演。 【風小僧】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-05-08 17:06:52) |
14.「小さな巨人」と言えば、そりゃオロナミンCだろうとか、いやいやミクロマンだろうとか、はたまたグラン浜田だろうとか、色々あるワケですが、忘れちゃいけない、ダスティン・ホフマン。 その彼が、歴史の生き証人として、自分の波乱の人生を語るのですがその内容たるや、なんとも都合よくさまざまな事件や人物に遭遇し、いささか荒唐無稽なのですが、まさにそこに虚構の持つ面白さがあります。そもそも西部劇なんていうのが、すでにこの世に存在しなくなった過去の世界を描く、虚構そのものなんだし、そういう虚構の世界に、真実が宿っていたりもする訳です。 で、この作品の主人公。先住民の仲間になったり、ガンマンになったり、兵士になったり、さまざまな立場に身をおきながら、アメリカの歴史のあちこちにチャッカリ登場する。さらには、出会いがあり、別れがあれば、これまた容易に再会がある。そんな偶然あるかよ、というような再会を当たり前のように繰り返すのは、まさに「虚構」ならではのご都合主義、しかしこの主人公の男にかかってしまうと要するに、アメリカの歴史も広大な土地も、自分の庭みたいなもんなんでしょうな。 で、この超越的な、しかし小さな男は、さまざまな立場に身を置くが故にはっきりした居場所をもたず、いやアメリカそのものが自分の居場所である、というのが彼の立場なんでしょう、だからこそ、大地に根差した生活を送る先住民の立場に比較的近く、また彼の目を通して描かれるこの作品は、白人社会へ批判的な視点を持つことになりますが、それでも何とも言えないおおらかさが作品を貫いていて、大きな魅力となっています。 もし現在の視点で本作を観るならば、(作中でわずかなセリフでしか語られなかった)黒人の歴史ももうちょっと織り込んでほしい、ということになっちゃうのかも知れませんが・・・。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-04-03 11:25:56) |
13.インディアン(アメリカ先住民)が絡む物語ということで、興味があり 鑑賞..ダスティン・ホフマン が若い! 小さな身体で、ちょこまかと動き回る(笑)..映画は、100歳を過ぎた老人の自伝?(ホラ話?)を回想する、という形で始まる..壮絶かつ波瀾万丈の物語..観終わると、ふ~ん そうなんだ..って感じ、重苦しくて重厚..というよりは、軽めのノリで(若干コメディータッチで)、ストーリー展開も かなり早い..ただ、当時では常識だった、アメリカ騎兵隊(白人) = 正義、インディアン = 悪、という図式を、真っ向から ひっくり返し、史実どおりに、白人 = 侵略者、インディアン = 犠牲者、として描いているところに 価値がある..そして、1970年に公開されていることに 意味がある..アメリカの黒い、闇の部分(タブー)に踏み込んだ、という意味で 良作... 【コナンが一番】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-02-06 09:32:47) |
12.《ネタバレ》 白人と先住民の間で揺れ動く主人公。まさに波乱万丈の人生。信じられないような展開もあるが、121歳の老人の回想形式なのでホラ話っぽくもあり、抵抗感を覚えずに受け入れてしまう。先住民を女子供容赦なく皆殺しにする騎兵隊は、よくある西部劇の一方的な視点とは違う。 主人公と親子のような関係になったシャイアンの酋長がいい味を出している。死地を山の頂に求めたシーンが印象的。儀式の踊りと祈りの後、霊験あらたかに天に召されるのかと思いきや、何も起こらない。それでも酋長は慌てず騒がず、放った言葉がふるってる。「魔法は効くときと効かないときがある」 すべてに感謝して受け入れる泰然自若とした生き方が、白人社会へのアンチテーゼとして効いている。 ダスティン・ホフマンは適役で、相変わらずの存在感。 【飛鳥】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-09-15 19:51:04) |
11.《ネタバレ》 とにかく、細切れのエピソードをひたすら最後まで都合よく積み重ねているだけなのですが、終わってみたら何となくまとまっている気がするのが不思議。主人公が最後までうだうだしていて、何かがあっても別に立ち向かうわけではないという設定で通しているのが(序盤で主人公は銃撃が得意であることが描かれながら、その能力を使う場面は最後まで登場しない)、作品に一貫性を与えている。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-09-14 23:26:52) |
10.有名な史実を含め西部劇を従来の勝者目線でなく描いているところが当時は斬新だったのだろうが、コメディ仕立てと虐殺シーンのアンバランス感はちょっと鬱陶しい。淘汰が避けられない時代背景や宗教やモラルよりも深い人間の本性のようなものは伝わってくるが、技術的にも数の上でも圧倒的な強者が異なる民族を無差別に殲滅していく様子は茶化していても目を覆いたくなる。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-09-07 16:51:39) |
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9.大法螺吹きだがストーリーテリングに長けた爺が若き日の武勇伝を語るというドン・キホーテさながらのストーリーで、想像以上に色んな要素の詰まった映画だった。若いホフマンがなんともキュートで、その類まれな演技力が若い頃から発揮されていたことに驚く。老ジャックが語るその奇想天外な生涯はまさに武勇伝に次ぐ武勇伝なのだが、冷静に見れば彼の行動は常に行き当たりばったりでモラルも信条も感じられず、小さな巨人どころかただ悪運強いだけのちっさい男だったりするところが、この映画の味わいどころのような気がする。 【lady wolf】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-04-28 15:34:58) |
8.《ネタバレ》 なんという壮絶で波乱万丈な人生・・・。西部劇のつもりで観ましたが、完全にじいちゃんの伝記ものでした。インディアンと白人の確執であったりカスター将軍の第七騎兵隊も描かれてはいますが、あくまで回想の中の一要素であり、メインではないですね。ビル・ヒコックとバッファロー・ビルのくだりはおまけ要素?また、全体を通してテンポとシーンの移り変わりがかなり早く、飽きはしませんでした。 内容的には、あっさりホイホイと変わり身を披露し周りを置き去りにする主人公、謎の逆さに喋る男、草むらでの唐突な出産シーン、酔ってる?とさえ思えるカスター将軍の行動など、何じゃこりゃ!?って感じの滅茶苦茶なシーンが多かった印象。というか、色んな要素入れ込みすぎな気が。 ただしかし、これがじいちゃんの思い出話である以上、「人生なんてそんなもん」とか「全てが壮大なホラ話です」と言われてしまうと、なるほどその通りとなってしまうんですよね。それがこの映画の上手いところでもあり、ズルいところでもあると思います。 【53羽の孔雀】さん [DVD(字幕)] 4点(2014-02-22 20:42:45) |
7.ホフマンって「卒業」「ジョンとメリー」「真夜中のカーボーイ」「レニーブルース」に登場する「街をウロチョロする繊細な人」ってイメージがあるんですけど、このDVDパッケージを見て驚愕。なんというインディアンwww 馬に跨って? 大自然? あのホフマンが!? でも違いました。やっぱりウロチョロしてました(笑)。最後の1カットが胸に響きます 【ようすけ】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-12-14 07:54:14) |
6.ホフマンにでしか演じられないホフマンの為の、ホフマンの中での最高大作。チーフダンジョージの大根ぶりがなんともいえない面白さをかもし出している。 【ケンジ】さん 7点(2005-03-25 20:17:32) |
5.気持ちが荒んだ時や、余裕が無くなった時に、見たくなる作品。 深みのあるファンタジーというか、ほら話というか、寓話?そんな感じの作品ですね。 [しっと]さんも、書いてるけど、最後の酋長のシーンは本当に感動するシーン。真に偉大なものを心の中で確信していないと、あの自然な態度と茶目っ気は出てこないと思う。悲劇なんだけど、見終わった後の感じは不思議に明るい。あんまり、たびたび、切羽詰るのはやめて、がんばってればいいや・・って、思う。勇気が出る。 【せんぼう】さん 9点(2004-06-18 07:06:34) |
4.白人でありながらインディアンに育てられ、しかしインディアンの勇者にはなりきれず、おかげで生き延びたという男の波乱万丈の人生回顧録。二つの社会を行き来するので白人側でインディアンたちを迫害したり虐殺したりするのと、インディアン社会での生活で独自の思想・風習、生活などが交互に描かれる。ダスティンは臆病ぶり、酔いどれぶりなどとてもうまいが、それ以上に印象的だったのは彼を育てた親代わりのシャイアン族の酋長。盲目になったことも、白人の襲撃にも「死ぬにはいい日だ」と悠然としているなど全てを超越したような自然体の大物ぶりがとても印象的。こうもり男のような彼が戻るたびに「息子よ」と迎え入れる度量の大きさに感服してしまう。インディアンの考え方はアイヌにも共通するのが興味深く、共感する。 【キリコ】さん 7点(2004-05-03 20:51:52) |
3.『アウトロー』のチーフ・ダン・ジョージが、ほとんど同じキャラで酋長をやってて、笑ってしまった。ワイルド・ビル・ヒコックやカスター将軍、それにほんのちょっとバッファロー・ビル・コディが出てきたりして、西部開拓史版フォレスト・ガンプのようだ。そういえば、どっちも、主人公が自らの生い立ちを第三者に語って聞かせるという構成になっているし。カッコのつかない生きざまをそのまま描き出してみせるアメリカン・ニュー・シネマの土壌の中から生まれた本作なので、当然、サスペンスもスペクタクルも薄いわけだが、淡々と進行していく物語のラストにあるべくして名シーンがあった。“息子”ダスティン・ホフマンを従え、山の頂上へ死地を求めて登ってきた酋長、チーフ・ダン・ジョージ。霊力を借りて神々しく散ろうとするがあえなく失敗。仰向けに寝そべる酋長の顔に、無情にも大粒の雨。顔をヒクヒクさせる酋長に、ホフマンが一言「どうです?」酋長「まだこの世か?」「テントに戻って何か食べよう、息子よ…」そして、二人は登ってきたのと同じ足取りで山道を下りていくのだった。 【しっと】さん 8点(2002-08-18 06:42:36) (良:1票) |
2.インディアンとして育った白人の男が、インディアンとして白人と闘うという「ラスト・オブ・モヒカン」とは対照的な、弱虫であるがゆえに命を長らえてきた白人男、リトル・ビッグ・マン。でも、「俺はインディアンじゃない、白人なんだ!」とスタコラ逃げたホフマンと、そんなホフマンに再会する度に、「息子よ、腹は減っていないか」と迎え入れたシャイアン族の首長は、確かに「親子」だった。西部開拓史の「英雄」でもなければ、インディアンの「伝説」でもない彼が、老人ホームで孤独に朽ちて行く最期が悲しい。 【ぶんばぐん】さん 7点(2001-02-15 08:11:22) |
1.インディアンとして育ち、白人として教育をうけ、ときにはガンファイターとなり、又、アル中になったりして、白人社会とインディアン社会を激しく往復しながら、121歳まで生き永らえた男を通してアメリカの歴史の一段面を描く。その弱虫な自分を認識して以来、徹底的にしかも卑劣に逃げ回ることに命をかけた、痛快なづっこけぶりの主人公をD・ホフマンが嬉々として演じきる。 【ドラえもん】さん 7点(2001-01-14 18:11:52) |