1.《ネタバレ》 題材がいかにも増村さんがやりそうな作品ですね。オープニングで引き込ませる。アメリカ人学生と川口浩が賭けボーリングをやるんですけど、その模様を、二人の投げるショットを素早く繋ぐ。当時からすれば斬新な(スピード感溢れる)オープニングですね。オーニングで魅せる監督といえば、増村さんとあと川島雄三くらいでしょうか。
川口浩の姉(桂木洋子)は、証券会社のディーラーである船越英二と付き合っていて、妊娠するが、中絶&別れ、要は捨てられる。唯一の誇りともいえる姉の姿に激怒した不良学生・川口浩は、復讐するため船越の妹である野添ひとみに同じ事をする。途中で結末は予測出来たんですが、それでも、テンポ良く進む展開が飽きさせない。川口浩の不良学生振りを観ているだけでも面白味がある。
でも、不満に思ったのは女優陣。(以下ネタバレ)桂木洋子は中絶したが、野添ひとみはおろさなかった。桂木洋子は野添と川口の姿に感化され、一度は捨てた船越英二を決して放さないと決意するというものだが、私にはこの野添・桂木の演技が甘いと感じた(念のため、二人は私の好きな女優です)。野添ひとみの妊娠が発覚して、船越英二に会った瞬間に川口浩の復讐が成立するんですが、野添ひとみは「自立して川口浩の子供を育てる」という決心をします。その「女の強さ」が野添ひとみにはみえない。同じ事が桂木桂子にも感じた。二人とも「お嬢さん」といった上品の一方的なイメージしか見えなかった。増村監督が描いていたイメージはもっと凄いところにあったのだと思う。
強く印象に残ったシーンがあって、野添ひとみら女学生7人がワゴン車でピクニックに行くんですが、川口浩が運転を引き受ける。川口浩は山道を荒々しくドリフト気味に駆け上る。かたや、女学生連中は車内でピクニックを合唱したり、ファッション談義をしていて運転には全く気に留めない。ワイルド、スピード、そしてモダン。初期増村作品を象徴しているかのような全快のシーンです。