13.《ネタバレ》 優しいファンタジーという言葉が似合う一品ですね。
作中で人の死が描かれているのに、ちっとも残酷じゃないし、不愉快じゃない。
結局、最後までマゴリアムおじさんの詳しい正体は謎のままであり、その事に対し引っ掛かりを感じてもおかしくなかったのですが、本作では特に気になりませんでしたね。
不思議な存在であるのなら、不思議のままで良いか、と思わせてくれました。
マゴリアムおじさんの飄々とした生き様や、モリーの女性的な魅力にも惹かれましたが、一番のお気に入りはヘンリーとエリック少年の関係性。
年齢という垣根を越えて友達になれた二人の姿は微笑ましかったし、何と言ってもエリックが背広姿になって「買収」に訪れたシーンが好きなんですよね。
(そう来たか!)という驚きもあったし(小さな子供といえども、本気で店を守りたい一心で行動しているんだな……)と思えました。
コレクションの帽子を売ろうとするエリックに対し
「帽子は売っちゃダメだ」
と即答するヘンリーの姿も良かったです。
幼い友達が、どれだけ帽子を大切に思っているかを理解しているからこその発言と感じられて、心が温まる思い。
最後もハッピーエンドで綺麗に纏めており、非常に好ましい映画なのですが
「マゴリアムおじさん死後の店を、どう立て直すか?」
という問題を、簡単に解決し過ぎたような印象も受けましたね。
一見すると不可能に思える事でも、心の持ち様一つで容易く成し遂げられるという前向きなメッセージが込められていたのかも知れませんが、ちょっと疑問符が残りました。
他にも、拾い切れていないと感じる要素が幾つかあったりして、不満もあるのですが、総じて魅力に感じる部分の方が多かったですね。
店を主題とした映画を観賞した後に「この店、行ってみたいな」と感じた以上は、あまり難しく考えず「この映画を観て良かった」と素直に認めたいところです。