1.《ネタバレ》 時間推移が、カメラをパンさせながらのオーヴァーラップや影を落とすエフェクト等で様々に表現されるのだが、それもあまり統一感はない。
技法というよりはドラマの語りの点で『市民ケーン』の原型だといえる。
成り上がった主人公スペンサー・トレイシーの浮気の告白、それを聞いた妻コリーン・ムーアの末路、息子の堕落。
そこから遡って、新婚時代の幸福なエピソードを見せていき悲劇性を際立たせたのはプレストン・スタージェスの巧さという事だろうか。
親友役のラルフ・モーガンが妻に語り聞かせる形式だが、顛末の全真相を語りきってしまうのも少々無理を感じさせる。
そうした諸々の改善の積み重ねが後のウェルズの達成に繋がったようにも思える。
新婚時代の夫婦の姿と、彼らの後景の窓外を走る汽車のショットなど、画面的に『市民ケーン』を思わせる断片も随所にある。